信用スコアとは?中国・米国における活用事例や日本の状況も紹介...の画像はこちら >>


信用スコアは、近年中国や米国などで活用されている指標です。導入の主なメリットとして、申込人が審査結果に納得しやすくなること、スコア次第で優遇を受けられる場合があることなどが挙げられます。



本記事で、信用スコアの活用事例や日本における状況を押さえておきましょう。

信用スコアとは

信用スコアとは、個人の信用力を数値化した指標を指します。数値は、性別・年齢・職業・購買行動・SNSの使用履歴といった対象者の属性情報をAIや機械学習を通じて分析し、算出することが一般的です。

信用スコアは、クレジットカードや各種ローンなどの契約に関して客観的な取引情報を記録した「信用情報」とは異なります。なぜなら、信用スコアはSNSの使用履歴のようにプライバシーに踏み込んだ内容も考慮する場合があるためです。

海外の信用スコア活用事例

特に中国や米国で、信用スコアの活用が進んでいます。それぞれの活用事例を押さえておきましょう。

中国(芝麻信用)

中国では、現地企業の芝麻信用が、信用スコアを活用したサービスを提供しています。芝麻信用は、電子決済サービスAlipay(アリペイ、支付宝)を提供するアリババグループの傘下企業です。

ここから、芝麻信用の評価対象や活用例を紹介します。

芝麻信用の評価対象
芝麻信用は、クラウドコンピューティングやAI、機械学習などを用いて個人や企業の信用状況を評価しています。芝麻信用が提供するサービスにおいて、評価対象になるのは主に以下5つの領域です。

・身分特質(年齢・学歴・職業・社会的地位など)
・履行能力(過去の支払い状況や資産など)
・信用歴史(クレジットの取引履歴など)
・人脈関係(交友関係など)
・行為偏好(消費の特徴など)

また、各項目の点数を踏まえて総合点数を算出し、以下の5段階(350~950点)に区分されます。

・700~950点(極めて良い)
・650~700点(優れる)
・600~650点(好ましい)
・550~600点(まずまず)
・350~550点(やや劣る)

一般的な消費者の信用スコアは、600点台とのことです。



芝麻信用の活用例
芝麻信用の信用スコアが高い場合は、ローンの金利優遇や各種保証金の免除を受けられる場合があります。主な優遇措置の例は、以下の通りです。

・一部地域や一部企業で、シェアサイクルの保証金や利用料が無料になる
・特定の企業でレンタカーを利用する場合の保証金が免除される
・一部地域において初回保証金不要で自宅まで届く本の貸し出しサービスを受けられる
・一部地域で、レンタル置き傘を無料で借りられる
・一部のホテルで、保証金不要でホテルを予約できる(*)

*中国のホテルを予約する場合、あらかじめ保証金や宿泊料を求められることがある

米国(FICOスコア)

米国では、分析ソフトウェア企業のFICOがFICOスコアを提供しています。FICOスコアによる分類は、以下の通りです。

・~580点:Poor(米国消費者の平均より下で、リスクのある借り手と判断されうる)
・580~669点:Fair(米国消費者の平均より下だが、貸し手はローンを承認する可能性がある)
・670~739点:Good(米国消費者のほぼ平均で、貸し手に良いスコアと判断される可能性がある)
・740~799点:Very Good(米国消費者の平均より上で、貸し手から信頼できる借り手と判断されやすい)
・800点~:Exceptional(米国消費者の平均より上で、貸し手が特に信用力のある借り手と判断されうる)

FICOスコアが高ければ貸し倒れのリスクが低下するため、貸し手はより低い金利、手数料で借り手に貸す可能性があります。

参考:総務省「平成30年版地方財政白書 第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長 補論 中国の事例」
参考:FICO「About Us」

信用スコアのメリット

信用スコアを活用することのメリットは、主に以下の通りです。

・審査の結果に納得しやすくなる
・ユーザーの信頼度を確認できる
・スコアによって優遇を受けられる場合がある

ここから、各メリットを紹介します。

審査の結果に納得しやすくなる

信用スコアがあることで、ローンの借り手やクレジットカードの利用者などが審査の結果に納得しやすくなる点がメリットです。

一般的に、ローンやクレジットカードを申し込んで承認を得られなかった場合に、その理由を伝えられることはありません。そのため、自分が断られることに納得いかないこともあるでしょう。

その点、自分の信用スコアがわかっていれば、「もう少し信用スコアを上げてから再度申し込もう」と前向きにとらえられる可能性があります。

ユーザーの信頼度を確認できる

個人が売買する際に、取引の相手方となるユーザーの信頼度を確認できる点もメリットです。

自社(自行)との取引履歴を確認したり、信用情報機関に照会をかけたりできる金融機関と比べ、フリマサイトの出品者・落札者やECサイトの利用者は、相手の信頼を確認する方法が多くありません。そこで、信用スコアがフリマサイトやECサイトにも導入されれば、信頼できる相手なのか判断しやすくなるため、安心して取引できるようになります。

また、知らない相手であることを理由に今まで取引を避けられてきた人も、高い信用スコアを示せば新規取引につながることがあるでしょう。



スコアによって優遇を受けられる場合がある

信用スコアの数値次第で、優遇を受けられる場合がある点もメリットです。中国や米国の事例で紹介した通り、信用スコアの導入が各金融機関や企業に広がれば、今までより低金利で融資を受けられたり、各種サービスが利用しやすくなったりする可能性があります。

また、仕組み次第では、信用スコアを下げないために約束を守ったり不正を行わないようにしたりする人が増え、社会秩序が保たれるようになる場合もあるでしょう。

信用スコアのデメリットとは?

信用スコアの主なデメリットは、以下の通りです。

・特定のサービスを利用できる人とできない人が生まれうる
・信用スコアの結果に国民の生活が縛られる可能性がある

それぞれ解説します。

特定のサービスを利用できる人とできない人が生まれうる

特定のサービスを利用できる人とできない人の格差拡大を助長しかねない点が、信用スコアを導入することのデメリットです。

信用スコアが普及し、事業者が信用スコアに過度に依存するようになると、信用スコアが高い人には積極的に特典をつけてでも取引を望む一方で、信用スコアが低い人との取引は避けるようになる可能性があります。その結果、サービスを利用できず不便な思いをする人が出てくるでしょう。

信用スコアの結果に国民の生活が縛られる可能性がある

信用スコアの結果に、国民の生活が縛られる可能性がある点もデメリットです。

信用スコアは、学歴や資産などを参考にして算出されることがあります。その場合、国民は信用スコアを上げることを常に意識しながら生活しなければいけなくなるでしょう。

また、信用スコアの算出過程が明確でなければ、スコアにまつわる噂などを気にして、自由に生活できなくなる可能性もあります。

日本における信用スコアの状況

ここから、日本企業が提供する信用スコア関連のサービスや、CICが新たに提供を始めた「クレジット・ガイダンス」について解説します。



日本企業が提供するサービス

総務省は「令和2年版 情報通信白書」で日本におけるスコアリングサービスとして、以下を紹介しています。

・AIスコア
・SXスコア
・LINE Score
・Yahoo!スコア
・ドコモスコアリング

しかし、Yahoo!スコア(2020年8月31日で提供終了)やJ.Scoreが提供していたAIスコア(2023年1月31日で提供終了)のようにすでに撤退しているサービスもあり、中国や米国に比べると信用スコアが普及しているとは言い難いです。

CICが提供する「クレジット・ガイダンス」

指定信用情報機関のひとつである株式会社シー・アイ・シー(以下、CIC)は、2024年11月28日より「クレジット・ガイダンス」の提供を開始しました。クレジット・ガイダンスとは、CICが保有する信用情報を分析して算出した指数とその算出の根拠を加盟企業や消費者に提供するサービスのことです。

今まで自分がローンやクレジットカードを利用できない理由がわからなかった人も、今後はクレジット・ガイダンスを請求することにより参考にできる可能性があります。

参考:総務省「令和2年版情報通信白書 第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築」
参考:CIC「情報開示とは」

信用スコアとは個人の信用を数字に表したもの

信用スコアとは、AIや機械学習を用いて性別・年齢・職業・購買行動・SNSの使用履歴などを分析し、数値化した指標を指すことが一般的です。中国や米国では、すでに一部の事業者が信用スコアを用いた取引を進めています。

信用スコアのメリットは、利用者が審査結果に納得しやすくなることや、特典を受けられる場合があることです。一方で、信用スコアが低い人が特定のサービスを利用できなくなることがある点がデメリットとして挙げられます。

日本でも普及するとさまざまな取引に影響を及ぼす可能性があるため、信用スコアの今後の動向に注目しましょう。

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。

2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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