キャリアアップのために活用したい「教育訓練給付制度」を解説!...の画像はこちら >>


業務に必要な知識やスキル、資格を取得するために研修や学習活動を行った際、その費用の一部として教育訓練給付金が支給される「教育訓練給付制度」。活用したことがある人もいるかもしれないが、実は2024年10月に制度内容が拡充された。



「教育訓練給付制度」の概要や申請方法、拡充された内容について、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんに教えてもらった。

給付対象となっているのは約1万7000講座

「『教育訓練給付制度』は、大型自動車第一種免許や税理士、保育士、宅地建物取引士などの資格を取得するための学習だけでなく、Illustratorクリエイター能力認定試験や中国語検定試験、メンタルヘルス・マネジメント検定試験、パーソナルカラリスト検定などの合格を目指す講座や大学院の修士・博士課程も給付の対象になっています。2025年3月時点で、対象講座はおよそ1万7000講座です」(川部さん・以下同)

1万7000講座もあると、自身の業務や関心に当てはまるものが何かしら見つかるだろう。ただし、誰でも教育訓練給付金を受給できるわけではないという。

「『教育訓練給付制度』は雇用保険制度のひとつなので、初めて給付を受ける場合は『1年以上雇用保険に加入していること(給付の種類によって期間が異なる)』が条件となります。つまり、少なくとも1年以上、給付によってはそれ以上の期間、企業に所属して働いている人が対象となるわけです。この条件を満たしたうえで離職した人も、離職から1年以内であれば受給対象となるので、転職を考えている人も利用できます」

会社員として働きながら知識やスキルを習得する、または転職のために資格を取得するといった人のために用意されている制度なのだ。ちなみに、一度「教育訓練給付制度」を利用した場合は、3年以上の期間を空けることで再度利用することができる。

「教育訓練給付金は、対象となる講座や研修の修了、または受講中の特定の期間を経過してからの給付となるので、まずは自身で費用を支払う必要があります。なぜキャッシュバックのような形での支給になるかというと、学習せずに給付金だけ得ることを防ぐためです。受給のための手続きは、講座によって異なります」

「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」を受講する場合は、事前にハローワークやキャリア形成・リスキリング支援センターで訓練前キャリアコンサルティングを受け、住まいを管轄するハローワークで受給資格確認を行った後で講座を受講。修了してからハローワークで申請となる。

「一般教育訓練」を受講する場合は、訓練前キャリアコンサルティングや受給資格確認は不要。

講座が修了した後にハローワークで申請することで、給付となる。

「対象となっている講座は3つのレベルに分けられていて、それぞれ『専門実践教育訓練』『特定一般教育訓練』『一般教育訓練』と呼ばれています。どのような違いがあるのか、解説していきましょう」

中長期的キャリア形成を支える「専門実践教育訓練」

「専門実践教育訓練」は、「労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練」と定義されている。

「『中長期的キャリア形成』という点から、長く企業に貢献できる人材になるための知識や資格の取得を目指した講座ということがわかります。例えば、介護福祉士や看護師、美容師、第四次産業革命スキル習得講座、法科大学院・MBAなどの学位課程などが挙げられます」

「専門実践教育訓練」を受講すると、費用の50%(年間上限40万円)が受講中6カ月ごとに支給される。

さらに、資格や学位などを取得したうえで、修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、追加で費用の20%(年間上限16万円)が支給される。合計で費用の70%が支給されるというわけだ。

「2024年10月以降に受講開始した場合は、さらなる給付があります。資格などの取得・就職に加えて、修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合、費用の10%(年間上限8万円)が追加で支給されるのです」

すべての条件を満たした場合、費用の80%が支給されるように制度内容が拡充されたのだ。難しい資格にチャレンジするチャンスだといえるだろう。

速やかな再就職につなげる「特定一般教育訓練」

「特定一般教育訓練」は、「労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練」とされている。

「『速やかな再就職』と書かれていることから、就職・転職活動を行う際に強みになるような知識や資格が揃っているといえます。具体的には、普通自動車第二種免許やファイナンシャル・プランニング技能検定、介護支援専門員実務研修、電気主任技術者試験などが対象になっています」

「特定一般教育訓練」を受講すると、費用の40%(上限20万円)が修了後に支給される。

「『特定一般教育訓練』も、2024年10月に拡充となりました。

2024年10月以降に講座を受講して資格などを取得し、修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合、追加で費用の10%(上限5万円)が支給されるようになったのです。『速やかな再就職』を実践することで、負担が減るという仕組みです」

雇用の安定を目指すための「一般教育訓練」

最後のひとつ「一般教育訓練」は、「雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練」。

「『雇用の安定』が一番に来ていることから、働きながら学習できるようなレベル感のものといえます。Webクリエイター能力認定試験や産業カウンセラー試験、医療事務技能審査試験、TOEICなどが対象です。大学院の修士・博士課程もここに含まれます」

「一般教育訓練」を受講すると、費用の20%(上限10万円)が修了後に支給される。

「『教育訓練給付制度』は、あくまで雇用・就職につなげるための学習が対象となっています。制度を管轄している厚生労働省も『働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ること』を目的としていると明記しています。そのため、就職や賃金アップにつながった際に追加で支給されるような拡充が行われたのでしょう。いまの職場でさらに活躍したい人はもちろん、再就職や転職を考えている人にもぜひ活用してもらいたい制度です」

少なくとも費用の20~50%が戻ってくる「教育訓練給付制度」。リスキリングやキャリアアップを考えている人は、役立ちそうな資格や講座が対象になっているか、確認してみよう。

(取材・文/有竹亮介)

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