完全失業率とは?推移・計算方法や失業率上昇が与える影響を解説...の画像はこちら >>


完全失業率とは、労働力人口のうち完全失業者が占める割合を指します。上昇する主な要因は、労働力人口の減少や求職者側と求人側の需要と供給にズレが生じることなどです。



本記事では、失業率・完全失業率に関する用語の定義や、計算方法などについて解説します。

失業率・完全失業率とは

失業率とは、労働力人口に占める失業者の割合を指します。関連して、完全失業率は労働力人口のうち完全失業者が占める割合のことです。日本では、総務省が毎月完全失業者数や完全失業率などを発表しています。

失業率や完全失業率は、景気動向を判断する際に役立つ指標です。ただし、一般的に実際の景気動向と比べると遅れて値が変動します。

失業率に関する用語の定義

失業率から物事を考えるには、以下の用語も理解しておかなければなりません。

・労働力人口
・非労働力人口
・就業者
・完全失業者
・従業者
・休業者

各用語の定義について、解説します。

労働力人口・非労働力人口

労働力人口とは、働く意思のある人の合計です。経営者・会社員・公務員・個人事業主などだけでなく、パートタイムで働いている主婦(主夫)やアルバイト中の学生も含まれます。

一方、非労働力人口とは、働く意思のない人の合計です。専業主婦やアルバイトをしていない学生、リタイアした高齢者などが含まれます。

なお、労働力人口と非労働力人口の対象は、15歳以上の人です。

就業者・完全失業者

就業者とは、対象期間中仕事をした人や休業者のことです。個人事業主の家族で仕事を手伝っている人(家族従事者)は、賃金を受け取っていなくても就業者に含まれます。

一方、完全失業者とは、対象期間中に就業しておらず、就職活動をしている失業者のことです。

ILO(国際労働機関)の基準に従い、以下の条件を満たす人が完全失業者に該当します。

・仕事がなく、対象期間中に仕事をまったくしなかった
・仕事があれば、すぐに働き始められる
・対象期間中に、求職活動か事業開始の準備をしていた

就業者と完全失業者を合わせた数字は、労働力人口と一致します。

従業者・休業者

従業者とは、対象期間中(月末1週間)に収入を伴う仕事を1時間以上した人のことです。それに対して、休業者は仕事を持ちながらも対象期間中に仕事をしなかった人を指します。具体例は、給与を受け取りながら休業している会社員や、経営する事業を抱えたまま仕事を休み始めて30日に満たない個人事業主などです。

従業者と休業者を合わせた数字は、就業者数と一致します。

完全失業率の計算方法

完全失業率は、就業者数と完全失業者数がわかれば計算できます。計算式は、以下の通りです。

・完全失業率(%) = 完全失業者数 / 労働力人口(就業者数+完全失業者数)× 100

例えば、1,500人を対象に調査し、就業者数が1,440人で完全失業者数が60人の場合、完全失業率は4%と計算できます(60人 / 1,500人 × 100)。

完全失業率に関するデータ

ここから、日本や世界各国の失業率(完全失業率)に関するデータを確認していきましょう。

日本における完全失業率の推移

日本における完全失業率は、総務省統計局が発表している「労働力調査」で確認できます。2025年2月分結果の同調査によると、2022年の完全失業率は2.6%、2023年も2.6%、2024年は2.5%でした。

なお、2025年2月時点の就業者数は6768万人、完全失業者数は165万人で、完全失業率は2.4%です。



世界各国の失業率

総務省統計局の「世界の統計2025」では、2023年における世界各国の失業率を比較しています。そのうち、G7各国の失業率は以下の通りです。

・日本:2.6%
・アメリカ合衆国(*):3.6%
・カナダ:5.4%
・イギリス:4.0%
・イタリア:7.6%
・ドイツ:3.1%
・フランス:7.3%

*対象は15歳以上だが、アメリカ合衆国のみ16歳以上

失業率が上昇する主な要因

失業率が上昇する主な要因は、以下の通りです。

・景気が低迷する
・労働力人口が減少する
・求職者側と求人側の需要と供給にズレが生じる

各要因について、解説します。

景気が低迷する

景気の低迷が、失業率の上昇につながる主な要因のひとつです。

景気が低迷すると、企業が人件費の削減を目的に人員採用を抑制し、失業率が上昇することがあります。例えば、日本における2008年の完全失業率は3.8~4.1%の間で推移していましたが、リーマンショックをきっかけに、2009年7月には5.4%まで悪化しました。

なお、失業率は遅行指数で実際の景気動向に比べて遅れて変動するため、景気動向と一緒に確認する際には注意が必要です。

労働力人口が減少する

労働力人口の減少も、失業率の上昇につながる要因です。失業率を計算する際は分母に労働力人口を当てはめるため、完全失業者数に変動がない状況で労働力人口が減ると、失業率は高くなります。

完全失業者数が200万で、労働力人口が6,500万人のケースと労働力人口が6,000万人のケースを比較してみましょう。

労働力人口が6,500万人の場合、完全失業率は約3.1%です。それに対し、労働力が6,000万人に減少すると、完全失業率は約3.3%まで増加します。

求職者側と求人側の需要と供給にズレが生じる

求職者側と求人側の間で生じる需要と供給のズレも、失業率の上昇につながることがあります。

求職する人・求人する企業それぞれが存在していたとしても、双方が相手に高い条件を求めていると、なかなか雇用契約にまで至らないことがあるでしょう。求職者は職に就いていない状態で自分に合う条件を求めて求職活動をしていると、その間は完全失業者とみなされるため失業率の増加につながります。



なお、求職者と求人側の需要と供給の関係を示した指標のひとつが、有効求人倍率です。有効求人倍率について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

有効求人倍率とは厚生労働省が発表する指標!計算をわかりやすく解説

失業率の上昇が与える影響

失業率の上昇が与える主な影響は、以下の通りです。

・購買力低下につながる
・国・地方自治体の税収が減少する

それぞれ解説します。

購買力低下につながる

失業率が上昇することで、国内の購買力低下につながることがあります。購買力とは、モノやサービスを購入できる力のことです。

失業者は賃金を得られない分、使えるお金が減り購買力が低下する可能性があります。失業率の上昇により失業者が増えると、国内全体の購買力が低下してさらなる景気の低迷にもつながりかねません。

関連して、生活が苦しくなる人が増えることも失業率の上昇による影響です。

国・地方自治体の税収が減少する

国や地方自治体の税収が減少することも、失業率の上昇が与える影響です。

失業者は給与所得が発生しない分、その間に国や地方自治体が徴収する所得税・住民税が減ります。また、失業者の購買力が低下することで、徴収する消費税も減るでしょう。税収の減少が続くと、国や地方自治体の財政が悪化します。

さらに、賃金額を元に算出した社会保険料の収入が減ることも失業率上昇が与える影響です。

国や自治体による失業率改善政策の例

国や自治体では、失業率を改善するために様々な政策を立てています。失業率改善に関する政策の具体例は、以下の通りです。



・事業者に助成金を交付する
・雇用機会を創出する
・求職者が訓練する機会を整える

それぞれ解説します。

事業者に助成金を交付する

事業者に雇用維持を促すための助成金を交付し、失業率改善を図ることがあります。

具体例のひとつが、経済上の理由で事業活動を縮小せざるを得ない事業主に対して、雇用維持を図るための休業や教育訓練などにかかる費用を助成する「雇用調整助成金」です。雇用保険の適用事業主であることや、売上高の減少が一定基準を超えていることなどの要件を満たす場合に、利用できます。

雇用機会を創出する

雇用機会を創出することも、失業率を改善するための政策のひとつです。

国や地方自治体自身が雇用を増やしたり、地元の企業に仕事を新たに委託したりすることで、雇用の創出につなげることがあります。以前は不景気が訪れた際に、公共事業を増やすことで雇用の安定化を促すケースもありました。

また、地方自治体が地元に企業を誘致することも、失業率の改善につながるでしょう。

求職者が訓練する機会を整える

求職者が職業訓練する機会を整えることも、失業率の改善に寄与する政策の例です。求人側から必要とされているスキルや知識を求職者側が身につけていれば、雇用につながりやすくなります。

例えば、厚生労働省は求職者の動向や今後人材が必要とされる分野などを把握したうえで、毎年度全国職業訓練実施計画を策定しています。

失業率とは労働力人口のうち失業者の占める割合

失業率とは、労働力人口に占める失業者の割合のことです。景気が低迷したり、求職者側と求人側の間で需要と供給にズレが生じたりすると、失業率が上昇する可能性があります。

失業率が上昇すると、購買力の低下や税収の減少などにもつながりかねません。今後は、景気や社会情勢を見極める材料として、失業率にも注目してみましょう。



参考:総務省統計局「なるほど統計学園 13統計用語辞典」
参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2025年(令和7年)2月分結果」
参考:総務省統計局「世界の統計2025 第12章 労働・賃金」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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