IMF(国際通貨基金)とは?主要業務や日本との関係も解説の画像はこちら >>


IMF(国際通貨基金)とは、国際貿易の促進や為替の安定などを図り、加盟国の持続的な成長や繁栄を実現するための取り組みを実施する国際機関です。主な業務は融資や技術支援、各国経済の監視などが挙げられます。



近年、世界各地で経済の不確実性が高まる中、IMFの役割が再び注目されています。新興国への支援や気候変動に対応した新たな資金枠組みの創設、ウクライナ危機への対応など、グローバル経済の安定化において中心的な存在です。また、日本はIMFで第2位の出資国であり、政策決定にも大きな影響力を持っています。

本記事では、IMFの基本的な仕組みから主要業務、日本との関係、そして近年の取り組みまでをわかりやすく解説します。

IMF(国際通貨基金)とは

IMF(International Monetary Fund、国際通貨基金)とは、国際貿易の促進や為替の安定などを図り、加盟国の持続的な成長や繁栄を実現するための取り組みをする機関です。本部は米国・ワシントンDCに置かれ、191カ国が加盟しております(2024年11月時点)。

IMFの最高意思決定機関は「総務会」です。一般的に、各加盟国の中央銀行総裁や財務大臣の総務1人・総務代理1人で成り立っています。

また、IMFの日常業務を担うのが、25名で構成される理事会です。予算や貸付プログラムのように組織運営に関する意思決定の大部分について、総務会から権限が委譲されています。

なお、IMFにおける投票権は1国1票ではなく、基本的に加盟国の出資割当額に応じて割り当てられています。

IMFの主要業務

IMFの主要業務は、以下の通りです。

・融資
・能力開発・技術支援
・サーベイランス(監視)

それぞれ解説します。

融資

加盟国に対して融資や金融支援をすることが、IMFの主要業務のひとつです。IMFでは、危機に直面する国が必要な政策を実施するために資金面で余裕を持てるよう、融資などの支援をしています。



IMFが融資するまでの一般的な流れは、以下の通りです。

1. 加盟国が危機に直面した際にIMFに支援を要請する
2. 対象国の政府とIMF職員が状況やニーズについて協議する
3. 対象国の政府とIMFの間で経済政策に関するプログラムに合意する
4. 政策プログラムが「レター・オブ・インテント」として理事会に提出される
5. 理事会で融資が承認される
6. (融資実行)

なお、各国のニーズに対応できるように、IMFでは様々な融資手法が設定されています。

能力開発・技術支援

IMFは、各国が健全な経済政策を導入できるように、幅広い分野において能力開発や技術支援を実施しています。能力開発の具体例は、以下の通りです。

・公共財政(予算編成や財政管理などの改善を支援する)
・金融政策・金融セクター政策(金融システムと銀行監督を強化する)
・統計(データを集計・管理・公表できるように支援する)
・包摂性(関係者を対象に包摂性を高める研修を実施する)

なお、能力開発はIMFの年間支出額の1/3近くを占めています。要請すれば、どの加盟国でも能力開発の取り組みを利用可能です。

サーベイランス(監視)

サーベイランスも、IMFの主要業務のひとつに挙げられます。サーベイランスとは、各加盟国の経済や金融動向を監視し、政策について助言することです。

サーベイランスの中で潜在的リスクを明らかにすることで、経済成長や金融の安定化を進めるために何が必要なのかを加盟国にアドバイスしています。現代では、ある国の課題や政策が他国にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、多くの加盟国を抱えるIMFがサーベイランスで状況を把握することには重要な意味があるでしょう。

なお、リスクに対する政策や改革について協議するために、IMFは通常1年に1回各加盟国を訪問しています。

IMFと日本の関係

日本は、1952年8月に53番目の加盟国としてIMFに加盟しました。日本はIMFの第2位の株主として理事会に単独の議席があります。

2023年12月には、IMF総会で議決権のシェアは現状維持しつつクォータの総額を50%増加させる「第16次クォータ一般見直し」がIMF総務会決議で合意されました。日本では、IMF加盟措置法の改正案を2024年4月に成立・施行させ、合意に基づく増資手続きを済ませています。



なお、2025年6月17日現在、日本の出資割当額(クォータ)の比率は6.47%で、クォータに基づく議決権比率は6.14%です。

IMFの歴史

1944年7月、米国ニュー・ハンプシャー州で開催されたブレトン・ウッズ会議(連合国国際通貨金融会議)にて、IMFの創設が決まりました。ブレトン・ウッズ会議では、金1オンスと35米ドルを交換できることや、米ドルを資本主義国の基軸通貨として他国が米ドルに対して自国通貨を固定することを定めた「金・ドル本位制度」も決められています。

ブレトン・ウッズ会議から3年後(1947年)にIMFは業務を開始し、危機に直面した国を支援してきました。例えば、1997年に発生したアジア通貨危機で韓国経済が大きな打撃を受けた際には、財政再建や構造改革などの条件をつけた上で、融資支援しています。

IMFと連携する主な機関・団体

IMFと連携・関連する主な機関や団体は、以下の通りです。

・世界銀行
・G7・G20
・IMF国際通貨金融委員会

それぞれの概要について、解説します。

世界銀行

世界銀行とは、開発に関する分野において資金や技術などの支援を提供する国際機関です。IMFと同様に、ブレトン・ウッズ会議をきっかけに創設されました。

IMFがマクロ経済と金融の安定に重点を置くのに対し、世界銀行は長期的な経済発展や貧困削減に集中しています。また、世界銀行などの開発銀行は、特定のプロジェクトに対して融資する点も違いです。

世界銀行とIMFは役割で違いがある一方で、加盟国の生活水準を向上させる目標を共有しています。そのため、互いに補完し合う存在といえるでしょう。例えば、1989年の合意内容に基づき、双方で幹部間協議や職員間の協力などが進められています。



G7・G20

G7(Group of Seven)とは、フランス・米国・英国・ドイツ・日本・イタリア・カナダが加盟する枠組みや会議を指します。また、G7に新興国や資源国などを加えた枠組みがG20です。

IMFは、各課題に取り組むために、G7やG20と連携して会議を開催したり、支援プログラムを実施したりすることがあります。G7やG20の詳しい内容については、以下の記事をご確認ください。

G7とは?加盟国やG20との違いについてもわかりやすく解説

IMF国際通貨金融委員会

IMF国際通貨金融委員会(IMFC)は、IMF総務会の諮問機関としての役割を強化する目的で、1999年9月に設立されました。国際通貨や金融システムに関する諸問題について、IMFの総務会に報告・勧告するなどの役割があります。

開催頻度は、年2回(春・秋)です。メンバーは、IMF理事選出母体から1名ずつ選出されています(計24名)。

近年のIMFの主な取り組み

近年、IMFは以下のような取り組みを実施しています。

・コロナ禍における加盟国への緊急融資
・持続可能性トラストの創設
・ウクライナに対する支援プログラムの実施

各取り組みについて解説します。

コロナ禍における加盟国への緊急融資

2020年初頭に発生した新型コロナウイルスのパンデミックにあたって、IMFは加盟国への緊急融資・流動性供給強化の取り組み・債務救済などを実施しました。

例えば、2020年3月に、IMFの専務理事が世界銀行総裁との共同記者会見において、緊急融資制度のもとで約500億ドルの融資を準備すること、そのうち100億ドルは貧しい加盟国向けに無利子で用意することなどを発表しています。



強靭性・持続可能性トラストの創設

2022年に「強靭性・持続可能性トラスト(RST)」を創設したことも、近年のIMFによる取り組みのひとつとして挙げられます。

RSTとは、気候変動・将来のパンデミックなどの構造問題がもたらす国際収支上のリスクへ対応するため、創設されたプログラムです。世界銀行やWHOと連携し、運用されています。

RSTの特徴は、低中所得層を融資対象とすること、20年の返済期間と10.5年の猶予期間を設けた融資を提供することなどです。

ウクライナに対する支援プログラムの実施

2022年2月にロシアが侵攻してから、IMFはG7と連携しつつウクライナに対して様々な支援プログラムを実施しています。

例えば、2022年3月にIMF理事会はウクライナが戦争による経済的打撃を和らげられるように、14億米ドルを支援することを承認しました。その後も、融資などでウクライナに対する支援を続けています。

IMFとは為替の安定などを目指す国際機関

IMF(国際通貨基金)とは、国際貿易の促進や為替の安定などを図り、加盟国の持続的な成長や繁栄を実現するための取り組みを実施する機関です。日本は1952年に加盟し、第2位の株主として理事会に単独の議席があります。

IMFの主な業務は、融資・能力開発・サーベイランスです。世界経済情勢を意識しつつ、これからIMFの動向に注目してみてはいかがでしょうか。

参考:IMF「IMFとは」
参考:IMF「IMF Executive Directors and Voting Power」(英語)
参考:財務省「IMFの概要」
参考:日本銀行「IMF(国際通貨基金)とは何ですか?」

ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。

フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。

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