配当株専門の個人投資家が伝授「株式投資成功のヒケツは『銘柄』...の画像はこちら >>


「株式投資のポイントは、途中で売却せずに市場に居続けることです」

前編でそう教えてくれたのは、『年に471万円が入ってくる「鉄壁配当」後悔ゼロの“早期リタイア計画”』(KADOKAWA)の著者である日本の配当株専門の個人投資家・長期株式投資さん。

株式を長く保有し、市場に居続けるべき理由は、「株価がもっとも上がる日をつかむことができる」「リターンの振れ幅を平均値に収れんすることができる」といったメリットがあるから。

ただし、株式によっては下落する可能性も秘めているため、どんな株式でもいいというわけではない。

そこで長期株式投資さんに、投資初心者でも実践できる投資テクニックを聞いた。

初心者にありがちな失敗「感覚での投資」「株価が下がったら売る」

長期株式投資さんも、投資を始めた頃はいくつもの失敗を重ねたという。

「短期売買でリターンを狙ったものの損したこともありますし、指標などを理解しないまま新興株(成長が見込まれる新しい会社の株式)に結構な金額を投じたこともありました。当時は1株ずつ購入できるシステムがなかったので、新興株をひと口数百万円で購入したこともありましたね(苦笑)。失敗した理由は、投資雑誌などに掲載してあった理論株価や実態とかけ離れた評価などを鵜呑みにし、ろくに調べずに投資したことにあります。自分のなかで投資判断の基準が曖昧で、感覚的な投資が多かったように思います」(長期株式投資さん・以下同)

得た情報を鵜呑みにしてしまうのは、投資初心者によくある失敗といえるだろう。そのほかにも、陥りがちな失敗を聞いた。

「株価が暴落した際にパニック状態になり、株価が下がっているときに売却するという非合理的な行動を取ってしまう人は多いでしょう。株式を購入した時点より株価が下がった状態で売却すると、損が確定します。しかし、そのまま保有し続けて株価の回復を待てば、損失を回避することができます。焦って『これ以上損する前に売ろう』と考えるのは、もったいないです」

「株価が下がったときに売る」という非合理的な行動を避けるためには、株式の値動きの仕組みを理解することが重要とのこと。

「多くの銘柄の株価は、上昇と下落を繰り返しながら上がっていくものだといえます。

また、短期売買を行わずに長く保有することで、全体としては年平均6%程度のリターンを得ることができるというデータも出ています。このような仕組みや理論を知っていれば、いざというときに焦ることなく、的確な対処ができるでしょう」

業界別の20銘柄を少しずつ購入する「積み立て投資」が◎

投資初心者となると投資に割ける元手が小さいため、大きなリターンは得られないように感じてしまうが、長期株式投資さんは「資産1億円を目指すことはできる」と話す。

「短期的に資産1億円を目指そうとすると、瞬間的な値上がりを狙う投資を繰り返して勝ち続ける必要がありますが、規格外の強運の持ち主でなければ実現することは難しいでしょう。しかし、20年以上にわたる長期投資を続けることができれば、資産1億円も不可能ではありません。たとえ最初の元手が小さくても、株式と経験を積み上げながら仕組みを理解していくことで、資産が徐々に増えていく可能性が高まるといえます」

まずは何から始めるといいだろうか。そんな質問を投げてみると、「小さくても始めることが大事」と教えてくれた。

「投資を始めて、『株式投資とは?』を体感することが大切だと思います。投資は情報収集をしているだけではわかりにくい部分が多いものですが、実際に株式を購入して株価の変動を実感すると、市場の仕組みや社会の変化と株価の相関などを理解しやすくなります。さらに、経験を積んで長期投資の有効性を実感することで、精神的にも安定して投資と向き合うことができるでしょう」

まず始めることが第一とはいえ、できるだけリスクは抑えたいもの。初心者でもできるテクニックを聞いた。

「銘柄を分散することで、リスクを抑えることができます。可能であれば、20銘柄ほどに分散できると理想的です。最近は1株単位で購入できるサービスを提供している証券会社もあるので、わずかな資金でも実践できるでしょう。

東証の業界(業種)区分を参考に、各業界のトップの企業に分散させるという方法も手法のひとつとしておすすめです。単に銘柄を分けるのではなく、業界を分けることでリスクを抑え、リターンを平均化しやすくなります」

銘柄の分散だけでなく、時間的な分散も意識することで、効率的な投資が実現するという。

「一度に大きく購入しようと思うと、株価が低下したタイミングを狙うあまり、なかなか踏み出せなくなってしまいます。一方、時間をずらして少しずつ購入すると、タイミングを気にせずに購入しやすくなりますし、リターンも安定します。毎月でも毎週でもいいので、定期的かつ機械的に購入し続ける積み立て投資がおすすめです」

さらに、もうひとつ重要なポイントがあるという。「ルールを守ること」だ。

「まずは投資の仕組みやルールを理解することが大切です。そのうえで、自身で決めたルールを守り続けることは難しいことですが、とても重要です。『毎月、積み立て投資を続ける』『株価が下落しても売却しない』『PER(株価収益率)が低い銘柄を購入する』といったルールを決めたら、感情に流されずに継続していくことでリターンにつながります」

「高配当株」でインカムゲインを得る選択肢も

長期投資を実践し、ある程度資産が増えてきた際には、新たな投資先を選択するのもいいとのこと。

「『増えた資産を守り、より安定的な運用がしたい』『定年を迎えたからリスクを抑えたい』ということであれば、株式の割合を減らし、J-REIT(不動産投資信託)や債券(個人向け国債など)への投資を始めるのもいいでしょう。株式と比べると長期的なリターンを期待しにくいですが、より安定的に資産を増やすことができるので、リスクを抑えたい場合におすすめです」

長期株式投資さんのように、「高配当株に投資する」という選択肢もある。

「個人的に配当利回りの高い銘柄が好きなので、高配当株を中心に投資を行っているのですが、私なりのルールがあります。

『利益の大半を配当に回している銘柄』ではなく『内部留保を抱えつつ、割安で配当利回りが高い銘柄』に投資するというものです」

「割安で配当利回りが高い銘柄」は、どのように見極めたらいいのだろうか。

「これは私の方法ですが、その企業の業績が安定していることが前提となるので、まずは『EPS(1株当たり純利益)』が安定しているところをピックアップします。そのうえで、『PER』が低いところ、できれば1桁台の企業の銘柄が好ましいと考えています。この条件を満たした銘柄に分散投資することで、大きな損失を避けながらインカムゲイン(資産を保有していることで得られる利益)もキャピタルゲイン(資産の売却によって得られる利益)も得ることができると認識しています」

長期株式投資さんの具体的な投資手法を参考にして、まずは投資する銘柄を選ぶところから始めてみよう。未来に向けて第一歩を踏み出すときだ。

(取材・文/有竹亮介)

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