市場で注目を浴びているトレンドを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。今回取り上げるテーマは、訪日外国人旅行者を意味する「インバウンド」。
近年、外国人による不動産購入が話題に上ることがあるが、都市部やリゾート地の新築物件だけでなく、地方の空き家を購入するケースも出てきているようだ。空き家問題が深刻化している日本において、外国人による利活用は解決策のひとつになるかもしれない。
国内外のクライアントに向けた空き家購入コンサルティングサービス「Akiya&Inaka」を運営するパルテノンジャパン代表取締役社長のアレン・パーカーさんに、外国人に日本の空き家が注目されている理由や空き家活用の可能性について聞いた。
外国人のニーズとマッチしやすい「地方の空き家」
アレンさんが「Akiya&Inaka」を立ち上げたのは、2020年8月のこと。コロナ禍真っ只中だった当時、東京在住の外国人たちが「人を気にせずに過ごせる場所に行きたい」と話しているのを聞いたそう。
「20年ほど前、高校生の頃に岩手県遠野市に留学したことがあるのですが、その頃から人口流出や増加する空き家が問題になっていました。しかし、18年前に日本に移住してからずっと、地方自治体が地方創生に動き出してもうまくいかず、時間だけが過ぎていることを感じていたんです。そのタイミングで『都市部から郊外に出ていきたい』という要望を聞いたので、地方自治体とつなげることでWin-Winの取り組みになるのではないかと思い、最初は友人の新居を探すところから始めました」(アレンさん・以下同)
「Akiya&Inaka」では、物件候補の選定から不動産会社との仲介、物件購入やリノベーションのサポートまで、幅広く請け負っている。外国人と日本の不動産会社の言語の壁を解消する役割もあるが、外国人ならではのニーズも影響しているそう。
「日本人で空き家を探している方の多くは『温泉が好きだから那須がいい』『スキーをしたいから長野がいい』というように、希望のエリアが明確です。一方で外国人、特に海外在住で日本に別荘やセカンドハウスを持ちたいという方は、エリアではなく『山中がいい』『川の近くがいい』『海辺がいい』といった希望を持たれているので、地域をまたいで探す必要が出てきます。そこで、不動産のネットワークを持っている私たちがお手伝いしているのです」
「Akiya&Inaka」が販売に携わった空き家。
立地以外のニーズも日本人とは異なるため、外国人は地方の空き家とマッチしやすいという。
「日本人は新居を探す際、交通の便のよさを重視する傾向にあります。地方であっても、駅の近くを希望される方が多い印象です。しかし、外国人は利便性よりも敷地が大きな家を希望されます。そもそも海外、特にアメリカで家を買う場合、1000~1万平米の土地を買うのが一般的です。それと比べると日本の物件は狭いといえますが、地方の駅から離れた物件であれば広い庭が付いているものもあるので、ニーズにハマりやすいのです。実際に空き家を購入された方々は、その庭で家庭菜園をしたり、倉庫を建てたり、ペットを飼ったりされています」
日本の家屋の丈夫な造りも、外国人にとって大きな魅力になっているそう。
「日本伝統の建築方法『在来工法』で建てられた家は災害が起こることが想定されていて非常に丈夫なので、きちんと手入れをすれば何百年も住み続けられるものです。しかし、日本の制度では家の価値を減価償却で考えるので、30~40年もすると家屋の価値はゼロになります。そのため、古い家は壊して更地にし、新しい家を建てるという発想になってしまいますが、外国人からすると土地の価格だけで丈夫な家が付いてくるのはとても魅力的です。私も埼玉県小川町で600平米2000万円の物件を購入しましたが、家屋は140平米の2階建てでリビングが広くキッチンもキレイ、天井も高くフローリングもピカピカで何の問題もありません」
空き家には残置物として、かつての家主が使っていた家具や調度品がそのまま残っていることが多い。一般的には物件の売却が決まってから処分されるが、外国人の買い主は「この冷蔵庫はそのまま使うよ」「掛け軸や食器は貴重だから欲しい」と引き取る人も多いという。
「サステナブルな形で家を承継される方が多いですし、売り主さんからしてもうれしいことですよね。
「Akiya&Inaka」が販売に携わった空き家の内観。
外国人に売却する際の課題と実際のところ
外国人の空き家購入が、空き家問題解決の手段になる可能性を秘めている反面、別の問題を招くのではないかという声も上がっている。
「日本在住の外国人が新居として空き家を購入するケースはいいのですが、別荘やセカンドハウスとして空き家を購入するケースでは空き家のままと変わらないのではないかという声があります。なぜかというと、空き家にしろ別荘にしろ、住民票のない家はすべて空き家とカウントされ、所得税や住民税もその自治体には入らないからです。また、毎日誰かがいるわけではないので、人が住んでいる安心感や治安の維持につながらないともいわれています」
たとえ空き家が購入されたとしても、生活の拠点とならないのであれば何も変わらないというわけだ。しかし、アレンさんは「実際はまったく異なる状況になる」と話す。
「確かにデータ上の空き家の数は変わりませんが、定期的に手入れされる別荘とまったく手入れされない空き家では、家屋や庭の状態が大きく異なります。家は手入れされないと湿気がこもってカビたり雨漏れしたりして、朽ちてしまいます。庭の雑草も好き勝手に生えてしまうので、景観も悪くなります。別荘のように住人が定期的に訪れ、手入れをしている家や庭は状態が維持されるので、住民の方々も気持ちよく住めるでしょうし、街のプライドも保たれると考えています」
空き家と別荘・セカンドハウスでは状態が大きく異なるため、どのような形であっても利活用を進めたほうがよさそうだが、外国人への売却に抵抗感を覚える売り主が多いそう。
「私が担当したケースでも、売り主の方が『外国人に売ったら隣近所の方々に迷惑をかけ、変なウワサも立ってしまうのではないか』と気にされて、売却が取りやめになったことがありました。外国人に売る、外国人を街に入れることを周囲が反対するのではないかと危惧してしまう方が多いようです」
「Akiya&Inaka」が販売に携わった空き家。
外国人が空き家を購入する際のコンサルティングをいくつも担当してきたアレンさんの感覚では、「住民の方々は受け入れてくれている」とのこと。
「意外と面白がってくれる方が多いように思います。もちろん言語の面でコミュニケーションが取りづらいということはあるかもしれませんが、その土地に長く住む方々は『この街を選んでくれたんだ』とほっこりする側面もあるようです。外国人の多くは地域のコミュニティやお祭りなどに参加する方も多いので、住んでいる方々にとっても刺激になるのではないでしょうか」
空き家のまま放置しておくと状態が悪くなるだけでなく、住民も増えない。しかし、空き家を購入して利活用する人が現れれば、その人が地域のイベントなどに参加し、街を盛り上げてくれるかもしれない。その相手が外国人であっても、空き家を売るメリットは大きいのだ。
日本人にこそ考えてほしい「空き家に住むこと」「空き家を売ること」
「Akiya&Inaka」のクライアントは外国人が多いとのことだが、アレンさんは「日本人にも空き家を利活用してほしい」と話す。
「地方の空き家に住むと考えるとハードルが高いと思いますが、外国人と同じようにセカンドハウスのような形での購入もありではないかと思います。普段は都市部で生活して、長期休暇のときだけ使ったり、週末だけ帰って子どもたちを広い庭で遊ばせたり友達を呼んでバーベキューしたりするのもいいでしょう。サードプレイスのような場所ともいえるかもしれません。老後の移住先という選択肢にもなります」
人によって空き家は、購入するものではなく売却や譲渡を考えるものかもしれない。日本の空き家市場は、まだまだ可能性を秘めているという。
「総務省のデータによると、2024年時点で全国の空き家は900万棟ほどありますが、不動産のデータベースを見てみると売りに出されている空き家は30万棟ほど。ほとんどの空き家は市場に出回っていませんが、売りに出してみると意外と買ってくれる人がいるものです。空き家を売らない理由には『管理に困っていない』『家族の家だから売りにくい』『物置として必要』などがありますが、『なんとなく売ったら後悔しそうだから』という理由でアクションを起こさずに放置するのが、もっとも悪いアクションだと考えています。そうすると空き家の状態が悪くなり、いざ売ろうと思っても売り手がつかなくなってしまうので、住むなり売るなり貸すなり、何かしらのアクションを起こしてほしいですね。その家を承継させずに崩してしまうのが、一番かわいそうだと思います」
外国人に注目されている空き家だが、問題を解決するには日本人のアクションも重要になる。さまざまな活用事例を見て、自分や家族の生活に取り入れる方法を探ってみるのもいいだろう。
(取材・文/有竹亮介)

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