市場で注目を浴びているトレンドを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。今回取り上げるテーマは、「1億総推し活」。
推し活とは、「推し=お気に入りの人物やキャラクター、モノ」を応援したり、グッズを購入したりする活動全般のことを指す言葉だが、もはや説明するまでもないほど浸透し、多くの人に「推し」と呼べる存在がいるのではないだろうか。最近は、ビジネスにおいても推し活がキーワードになってきている。
そこで、なぜ人は推し活に楽しさを見出しているのか、ビジネスにどのようにつながるのかという点について、マーケティングの専門家である東京都立大学経済経営学部の水越康介教授に聞いた。
推し活ブームの背景にある「インターネットの普及」
水越教授は近年、推し活や応援消費に関する研究を進めているが、そのきっかけはコロナ禍にあったという。
「コロナ禍で外出自粛になった際、運営できないレストランが廃業したり農作物が売れ残ったりする状況になりましたよね。そのときに、店舗や農家を応援する目的で商品や農作物を購入する『応援消費』が活発化したことがきっかけで研究を始めました。推し活に関しても、コロナ禍でアーティストやアイドルがコンサートができなかったため、別の形で応援しようというファンの消費行動が加速した様子を見ていて、倫理的な応援消費とファン行動は似ているところがあると感じたんです」(水越教授・以下同)
以前から特定の人物やキャラクターを応援している人は多くいたが、推し活という言葉が世の中に浸透したのもコロナ禍以降といえるだろう。ファンの消費行動が加速したことと関係があるのだろうか。
「コロナ禍は偶然の出来事ですが、いまこれだけ推し活が盛り上がっている一番の理由は、インターネットの普及にあると考えています。かつては好きなアイドルやキャラクターがいても、身近に同じ趣味嗜好の人がいないと『私だけが好きなのかも』と思い、自分だけの世界で楽しむということがあったと思います。しかし、SNSなどが一般化したことで、誰でも広く発信できるようになり、仲間を見つけやすくなったため、推しがいることをオープンにしやすくなっているのだと思います」
推し活とは少し異なるが、数年前、アメリカの若者の間で「地球平面説(フラットアース)」を支持する人が増え、社会問題になった。これもインターネットの普及がひとつの要因になっているそう。
「『地球は平らだ』と信じて家族や友達に話しても、相手にされない可能性が高いでしょう。
SNSで「このアイドルが好き」と発信すると、同じアイドルを推している人からのいいねやコメントが届き、コミュニティが広がっていく。仲間ができると、推し活により積極的になるだろう。
「アーティストやアイドル、アニメ・ゲームを制作している会社側もSNSなどを通じて情報を発信しやすくなったので、ファンではない人たちにも情報が届きやすくなり、新たな層を獲得するということにもつながっているのだと思います。こういった理由から、推し活が盛り上がりを見せているのだと考えられます」
推し活の意味を見出すとお金のやりくりがうまくなる…?
推し活の盛り上がりとともに、そのリスクが取り上げられることもある。推し活にお金をかけすぎて、生活が破綻してしまうといったケースだ。しかし、水越教授は「推し活をすることで、かえって金銭感覚が身に付く可能性がある」と話す。
「まだ研究に取り組み始めた段階ですが、推し活をしている人のほうがお金の使い方がうまくなるのではないかという仮説を立てています。というのも、推し活をしている学生から『推し活のためにアルバイトをしている』『推し活以外のことにはお金をかけないようにしている』といった話を聞くからです。推し活が働くモチベーションになったり、お金をやりくりするきっかけになったりするのではないかと予想しています」
水越教授が立てた「推し活が金銭感覚を身に付ける」という仮説には、ブランド依存に関する研究も関係しているとのこと。ちなみに、ブランド依存とは特定のブランドに強い愛着を抱き、継続的に購入する心理のこと。
「『ブランド依存は借金をしなくなる』という研究があります。
ポジティブな効果が期待できるものの、推し活もバランスが大事。「推しに貢ぐようなことにならないよう、何のために推し活をしているのかといったことを考えてみることが大事」と、水越教授は話す。
「仕事には『ジョブ・クラフティング』という概念があります。担当業務は社内の事業にどう貢献しているか、自分のキャリアにどうつなげるかといったことを考えることでやりがいやモチベーションが高まり、仕事がうまくいくというものです。ここから派生して『レジャー・クラフティング』という言葉も出てきています。レジャーも何のためにやっているのかを考えることで、よりウェルビーイングにつながりやすいという考え方です」
推し活も「レジャー・クラフティング」に当てはめて考えることで、満足感や充足感を得やすくなるというわけだ。
「考えることが大事なので、理由付けは『ジョブ・クラフティング』のような堅いものではなく、人それぞれでいいと思います。『推し活が仕事のモチベーションになる』『推し活がきっかけで友達が増える』といったことでいいので、推し活をする理由を考えてみると、よりポジティブな感情でバランス感覚を持って推し活を楽しめるのではないかと思います」
商品に「推しのため」という意味を乗せると価値が上がる
マーケティングの視点で見てみると、推し活ならではの消費行動があるという。
「推しに関連する商品に対しては、プレミアムな価格を支払ってもいいという感覚になりやすいと考えられます。私自身は大谷翔平選手を推しているのですが、野球場に観戦に行った際、1杯2000円のビールを『大谷選手のためになるなら』と思って買ったことがありました。居酒屋でビールが2000円したら我慢すると思いますが、推しのためという意味が乗ると買ってもいいと思えてしまうんですよね」
アイドルやキャラクターのグッズも同じ効果があるといえる。例えば、無地のクリアファイルであれば、100円ショップで複数枚入りのものが手に入るだろう。
「日常生活での消費は『自分のため』という感覚のみですが、推し活関連の消費は『自分のため』+『推しのため』という感覚になるため、消費傾向が変わってきます。商品の機能的な価値にプラスして『推しのため』という意味が乗り、ファンにとっては価値が上がるため、ある程度高い金額でも支払えるのだといえます」
推し活が多様化し「地域」や「企業」を推す時代に
かつての推し活の対象はアイドルやキャラクターのイメージが強かったが、現在は食べ物や乗り物、建築物などを推す文化も根付いてきている。
「消費者行動研究の観点からも推し活の範囲は広いと考えていて、実在する人でも二次元のキャラクターでも物でも消費に関連しますし、地域も推す対象になってきています」
あらゆるものが推される時代において、推し活はどのような業界にも関係のあるキーワードといえそうだ。
「企業の多くは、まだまだ推し活をビジネスチャンスと捉えていると思います。その一例が、アイドルやキャラクターを起用したりタイアップしたりして、売上を立てるという手法です。昔からの定番ではありますが、近年は聖地巡礼がブーム化していることもあり、町おこしや地域活性化の一環としてアニメやゲームと連携する動きも活発です」
水越教授は、企業側の動きでもうひとつ注目したいものがあるという。
「企業そのものを推してもらう、という流れも出てきているように感じます。『応援される会社を目指しましょう』と書かれているビジネス書も出てきていますし、『関係性マーケティング』という言葉が使われる時代になってきています。いい商品をつくるだけでなく、顧客といい関係を築くことを目標にすることが長期的な経営につながるという考え方です。そのためには、企業として健全であることや社会的な活動に取り組んでいることも重視されるため、企業そのものが変化してきているといえます。気に入った企業の商品やサービスを使う、投資をするといったことも、一種の推し活といえるかもしれません」
企業にとってのチャンスであり、消費者にとってもプラスの効果をもたらす可能性を秘めている推し活。
(取材・文/有竹亮介)

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