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学習指導要領の改訂等に伴い、学校でも金融教育が盛んな昨今。「東証マネ部!」では、教員経験を持つ作家の乙武洋匡氏をレポーター役に、金融教育の最前線を追っていく。



今回は「親子で良いお金の習慣が身につく」をコンセプトに、2022年にローンチされた子ども向けプリペイドカード「シャトルペイ」にスポットをあて、仕掛け人のシャトル株式会社・見原思郎氏を直撃。開発の舞台裏に迫ろう。

お小遣いの収支をプリペイドカードで“見える化”する

乙武先生!金融教育、見にきてください シャトルペイ前編


乙武 プリペイドカードを通して子どもの金融リテラシーを養うという発想は、とてもユニークですよね。まずは「シャトルペイ」の概要から聞かせてください。

見原 「シャトルペイ」はアプリとプリペイドカードがセットになったサービスで、お小遣いの収支や用途を“見える化”し、親御さんはそれをアプリでチェックできる点がひとつのポイントになります。お金の使い方を見守りながら、金融教育をサポートしようという考え方ですね。

乙武 そのアプリでは、どのようなことができるんですか?

見原 機能としては大まかに3つあります。まず1つ目が収支管理機能で、お金の出入りが自動で記録されるので、これまでお小遣い帳をつけようとしても続かなかったお子さんでも、簡単に履歴を振り返ることができます。

2つ目はお仕事機能です。こちらは家のお手伝いをこなしたり、親子で決めた何らかのルールや習慣を守ったりといった実績に応じてお金を入金する、報酬制のお小遣いシステムを管理するものです。そして最後が貯金管理の機能で、目標金額を立てて、そこに向けて計画的にお金を貯めていくよう促します。

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乙武 なるほど、面白いですね。とくにお仕事機能というのは、自分で稼ぐことを早いうちから体験できて、すごく有意義だと思います。



見原 ありがとうございます。プリペイドカード形式なので、お子さんの側からすると、やればやった分だけちゃんと残高が増えていくのが見えて、モチベーションアップに繋がるんです。あるいは、できることがひとつひとつ増えていくたびに金額が加算されていくので、自己効力感が得られるツールでもあると思います。

乙武 見原さんはそもそも、どのようなきっかけでこうしたサービスを考案したのでしょうか?

見原 原体験としてはまず、自分自身がお金の管理や将来設計みたいなことに対し、長らく杜撰だったことが大きいと思います(笑)。高校生になってアルバイトを始めてからはとくに、稼いだお金はすべて無計画に使っていて、浪費癖は大人になってからもなかなか治りませんでした。

乙武 すごく真面目そうに見えるのに、意外ですよね(笑)。

見原 本当にお恥ずかしいことですが、いまの子どもたちには僕のような遠回りをせずに、もっと早くからお金について考える機会を得てほしいと思ったことが、「シャトルペイ」の発想に繋がっています。

乙武 たしかに、お小遣いをもらうというのはひとつのチャンスかもしれません。金銭感覚は早いうちに養っておくに越したことはないですし。

見原 そうですね。どういう買い物をした時にワクワクしたのか、どういうものが自分にとって価値があるのかを、「シャトルペイ」で体験的に学んでもらうのが理想です。さらにその延長線上に、「将来どういう仕事をして稼いでいくのか」を考えることもあるでしょうし、親御さんがその目標を傍らで応援するという、理想的な親子関係に繋がるのではないかと。



日本と海外で異なる、子どもの消費を見守る習慣

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※一部画面は開発中のものであり、変更の可能性があります

乙武 「シャトルペイ」のリリースは2022年とのことですから、ここまで3年強がたちました。これまでの取り組みを振り返ってみて、いかがですか。概ねイメージ通りに事業は進んでいるのでしょうか?

見原 それが、まったく思い描いていた通りには進んでいないんです(苦笑)。お陰様で少しずつ伸びているとはいえ、正直、このサービスにはもっと欧米並みのニーズを見込んでいましたから。

乙武 ほう、それはどういうことでしょう。

見原 事業を立ち上げるにあたり、僕は日本国内のキャッシュレス比率が40%を超えたら、「シャトルペイ」もPMF(プロダクトマーケットフィット(※製品やサービスが市場に受け入れられ、継続的に利用される状態のこと)して、事業として一気に成長するだろうという仮説を立てていたんです。

ところが、2024年の時点で40%に達したものの、イメージしていたほど金融教育に対するニーズは高まりませんでした。親御さんの優先順位としては、どうしても受験に備えた勉強が先にあり、なかなか金融教育にまで意識が向いていないのが現実です。

乙武 なるほど。これだけ金融教育の必要性が指摘されていても、まだまだ積極的に家庭でケアする段階にはない、と。

見原 また、欧米と日本の、お小遣いにおける文化の違いも大きいと感じています。欧米では日本の2~3倍の金額を子どもに渡し、小学生の頃から教科書代や日用品などは自分で購入させるのが主流なんです。

乙武 へえ、それは興味深いですね。

向こうでは早いうちから、子どもの自主性に任せる土壌があるわけだ。つまり親の側にも自ずと、子どもの消費行動をチェックする必要性が生まれることになります。

見原 おっしゃる通りで、欧米では“見守る”文化がそもそも根付いているんです。逆に日本では、お小遣いの金額を抑え、大きな買い物は誕生日やクリスマスなどに買い与える文化ですから、子どもが自分で消費を試行錯誤する余地がありません。

乙武 たしかに私も、初めてお小遣いをもらったのが小学4年生の時で、月に400円という金額でした。不便や不自由を感じることはありませんでしたけど、当然、自分でいろいろ考えて使うほど自由度が高い額でもなかったですね。

見原 まさに、そうした文化の違いは、直視しなければいけない現実だと痛感しています。

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「シャトルペイ」が目指す今後のさらなる進化と役割

乙武 それでも「シャトルペイ」は現状、こうして事業として頑張っていらっしゃるわけで、目論んでいた通りではないまでも、多くのユーザーに支えられています。いま見原さんが抱えている課題は何ですか。

見原 「シャトルペイ」は結局のところ、親御さんがどれだけうまく使いこなせるかにかかっているツールだということですね。まず家庭内でお小遣いの制度を設けて、「シャトルペイ」を使って消費行動をチェックして、気付いた点をフィードバックしてあげるというPDCAをまわさなければ、本当の意味で機能しません。

これは意外と簡単ではなくて、声を掛けるにしても親子喧嘩にならない程度の距離を維持しながら見守るという、親御さんの頑張りに委ねられるところが大きいです。

しかし、実際問題として親御さんの側も、必ずしも自分の金融知識に自信を持っているわけではありません。

乙武 たしかに、金融教育を受けてきた世代ではないですから、なおさらですよね。

見原 とはいえ、我が子が将来お金について困らないよう、無駄遣いは正してやりたいという想いは根源的に持っていますから、本来はそこで「シャトルペイ」が機能しなければならないと思うんです。

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乙武 つまり、そこにアップデートの余地がある、と。何か具体的な構想やイメージはすでにお持ちですか?

見原 ユーザーであるお子さんの消費や貯蓄に対し、「シャトルペイ」が第三者的なポジションからアドバイスを送る機能を開発したいと思っています。AIを使ってコーチングする機能があれば、親御さんは指導をアプリに任せて、純粋なサポーターの立場にまわることができます。

さらに、そのAIが親御さんに対して、「いまこういう状態だから、こんなアドバイスをしてあげるといいですよ」というヒントを与えられるものにしていきたいですね。ここまでやれれば、これまではひとつの“ツール”であった「シャトルペイ」が、習い事に近い存在になれるのではないかと。

乙武 いいですね。AIがコーチとして機能することで、子どもが本当の意味で何を良しとするか、適切な価値観が養われるようになるかもしれません。浪費を止めることも大切ですけど、その反面、ただただ消費を我慢して貯金を頑張るだけになってしまうのももったいないですからね。これからの「シャトルペイ」が、ますます楽しみになりました。



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