厳しい暑さによる25年産米への影響が懸念される中、JA全農にいがたは25年産のコメについて各JAへの仮渡し金を発表した。一般コシヒカリで去年の1.7倍という大幅な引き上げに生産者は喜びを見せつつも、複雑な思いを漏らした。

その理由とは…

■仮渡し金1.7倍に!一般コシヒカリは60キロあたり3万円

「これなら農業を子どもに継げる」仮渡し金“1.7倍”で一般コシ60キロ3万円!大幅引き上げで従業員にボーナス支給も価格高騰による“米離れ”危惧 新潟
JA全農にいがた

JA全農にいがたが発表したのは、25年産のコメを集荷する際に県内の各JAへ支払う仮渡し金だ。各JAは、この金額をもとに実際に生産者へ支払う価格を決める。

発表によると、一等米で60キロあたり一般コシヒカリは3万円、新之助は3万1000円、魚沼産コシヒカリは3万2500円と各銘柄の金額はおおむね24年産の1.7倍に。

JA全農にいがたは、生産資材価格や物流費・人件費等が高止まりし、生産コストが上昇していることや、持続可能な農業の実現へ生産者が将来の規模拡大などに向け経営基盤の強化を図る必要があること、猛暑や渇水により収量の確保が心配される中、県産米の安定供給の要望が大きいことなどを増額の理由に挙げている。

■コメ農家 大幅な引き上げに「子どもに農業継がせる親も出てくるのでは」

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青空ファーム 青木等さん

心配されていた25年産米の暑さの影響について、阿賀野市で30ヘクタールの田んぼでコメを栽培する青木等さんは「今のところは順調。お盆前後に降った雨のおかげで夜間の温度がかなり下がってくれたので、このままいけば一等米だろう」と肥料の工夫などにより出来への影響は少ないと話す。

そして、発表された仮渡し金については「仮渡金が出て半分びっくりしている状態。『3万円かあ』と。これであれば、規模を拡大しなくても、家族型農業でも子どもに農業を継がせる親も出てくるのでは。今は農業をやっていても子どもには継がせないという人が多いが」と話す。

■規模拡大・従業員へのボーナス検討…仮渡し金増額に喜び

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コンバイン

肥料や燃料などの資材が高騰する中、将来、規模の拡大を見据えている青木さん。

「規模は増えたら増えただけコンバインの条数が増えるので、以前の機械が4条刈り、今の機械は5条だが、この機械も11年目で、もう入れ替えのタイミングが来ている」と話し、設備投資のためにも、仮渡し金の増額を歓迎する。

また、従業員への還元のためにも、これまでになかったボーナスの支給も検討しているという。

「私が小学生のころでも2万7~8000円だった。高校生のころで2万4000円くらいだったので、それを超える金額というのは、農家としてみればうれしい反面、われわれ農家で生活者なので、生活者として考えたときに『ちょっとコメは…』と、食べられるのかなあと」

■喜びの一方…価格高騰によるコメ離れ・今後の価格低下を懸念

「これなら農業を子どもに継げる」仮渡し金“1.7倍”で一般コシ60キロ3万円!大幅引き上げで従業員にボーナス支給も価格高騰による“米離れ”危惧 新潟
喜びの一方不安も…

喜びの一方で、青木さんが危惧しているのは、価格高騰による“コメ離れ”だ。



仮に今後、価格が下がった場合に、税金や従業員への給与などの負担が重くなり、経営に影響が出る可能性も不安視している。

そのため、農薬を減らすなどの付加価値をつけて、JAへの出荷だけでなく、自身のコメのファンを独自に開拓する必要性を感じていると話す。

「次の世代は、このままいけば継げるけど、また(価格が)下がったら継げなくなる。3万円が続くのであれば、ありがたいが。それが1~2年であればちょっと困る」

これから本格的な収穫を迎える25年産のコメ。価格の動向などを注視していく必要がある。

(NST新潟総合テレビ)

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