Twitterを眺めていたら、あるツイートが目に飛び込んできた。
初個展が明日から始まります!ご来場の際は是非パンツを下さい!そこから新しいセックスが始まります!そのツイートに貼られた画像にはパフォーマンス作品「あたらしい保健体育」の内容について事細かに記されている。
「セックスに代わる充足手段の選択肢を増やしたい」
ののか:「あたらしい保健体育」のパフォーマンスの大きな要素である「新しいセックス」についてのお考え、とてもおもしろかったです。どうして既存のセックスではなく、新しいセックスを提唱しているのか教えていただけますか。CHERRY:いわゆるセックスの代替案というか、セックスに相当する選択肢を増やしたいと思ったからですね。ののか:ステートメントや説明書きの中でもそうおっしゃっていましたね。でも、どうしてセックスの代替案を増やそうとしているのでしょうか?CHERRY:逆に質問させていただくかたちになってしまうのですが、たとえば、ののかさんがセックスをする理由はなんですか?ののか:あまり考えたことがなかったですね。したいからする、というか。あえて言うならば「暴力」とか「侵食」に近いものだと私は思っていますけど、「愛」や「独占欲」「支配欲」みたいなものと結び付けて考える人も中にはいますよね。あとは、子どもをつくるため、という理由ももちろんあると思います。
ののか:少し立ち入った話になってしまうかもしれませんが、CHERRYさんはプライベートではどのような”セックス”を実践されているのか教えていただけますか?CHERRY:僕とパートナーの間ではほとんどいわゆるセックスはしないのですが、スキンシップを取りたい欲求はあるんですよ。頭を撫でたり、キスしたりだとか。そういったときに僕は興奮していないのに彼女は気持ちが昂ぶっている。僕の下着は汚れないのに、彼女の下着は分泌物で汚れている。そうした不均衡さを洗い流すこと、つまりパンツを洗うという行為自体が愛への昇華というか、僕にとってのセックスだったんですよね。下着を洗うことを毎日続けていると「今日は体調が良くなさそうだな」とか「下着がよれているからサイズが合っていないよ」とか、相手の体調にも心を配れるようになる。下着を洗う行為のほうが既存のセックスで得られる快感や相手への気づき以上に、相手に近づけた気がするのかもしれないです。
「既存のセックスを知ってしまってから、その他の方法を考えなくなってしまった」
ののか:犬のチェリーに抱いた思いがCHERRYさんにとっての性の原体験だったということですね。ちなみに、性的対象は犬だけですか?CHERRY:犬だけが性的対象だったというよりは、そのときはたまたま犬が性的対象だった、というほうがニュアンスが近いかもしれません。僕の中では人間の女性も、犬も、言うなれば鉱物のような物質さえもフラットに見えているんですよ。
真の意味での“性の多様性”は冷静な対話からしか生まれない
ののか:カップル間で相談しあって、お互いにベストな充足手段を見つけるのは率直に楽しそうだと思いました。一方で、広くは受け入れがたい性的趣向を持っている方も中にはいらっしゃいますよね。各人の嫌悪があるのも仕方ないものとして、そうした状況下で真の意味での性の多様性を実現するためにはどうしたら良いと思いますか?CHERRY:受け入れがたい性的趣向を持っているというだけで冷ややかな目を向けたり弾圧したりすることはつまり、既存の性の価値観に囚われたままになってしまっていますよね。⾃⾝の⾏うセックスは正しくて、彼らの⾏う⾏為は正しくない。こうして性の可能性を狭めてしまうのはかなりもったいないと思います。当たり前の回答になってしまいますが、感情ではなく理性で、冷静に話を聞いて分析しようとする姿勢が必要だと思います。ののか:何か具体例のようなものがあれば教えていただけますか?CHERRY:たとえば、下着愛好家の⽅は性器への執着から発展して、さらに下着というモノに対して愛情や執着をもっている⽅々です。
ののか:ありがとうございます。CHERRYさんは今後も同じテーマで表現活動を続けられるのでしょうか。CHERRY:そうですね。「これをセックスって呼んじゃっていいんじゃないかな」という感覚は恐らくみんなの中にあると思うんですよ。そこをパートナーや他の人とどんどん共有したほうが良いと思っていて。たとえば、人の写真を撮ることでいわゆるセックスに似た充足を覚える人もいますし、性的興奮よりも肌が触れ合う安心感を求めている人もいる。それは人それぞれ千差万別なわけです。僕自身は既存のセックスから得られるものはあまり多くないと感じていますけど、それも向き合ってみないとわからないことですよね。
インタビューの間じゅう、セックスにまつわるあらゆる問いが頭の中を駆け巡っていた。どうしてセックスをするようになったのか。なぜセックスをするのか。セックスに何を求めているのか。そもそも、セックスに意味づけが必要なのか。相手が変われば”セックス”に求めるものも変わってくるだろう。相手が変わるごとに、”適切”な方法を考えなければならない、と義務のように考えると骨が折れる。しかし、自分と相手の求めるものに徹底的に向き合うことは、お互いの快楽の幅を広げることとイコールだ。私自身の考えで言えば、セックスが暴力性を孕んでいることを認めつつ、既存のセックスをやめることはしないと思う。それでも、代替手段の可能性を考えることは単純にワクワクした。欲求を因数分解していくと、いわゆる性的な欲求からは離れていくかもしれない。そういった可能性を含めて、ひとりひとりにあった”セックス”が見つかるといいなとCHERRYさんの話を聞いて思った。
CHERRY
佐々木ののか
文筆家。1990年北海道生まれ。「家族と性愛」をメインテーマに、インタビューやエッセイの執筆を行う。最近は動画制作や映画・演劇のアフタートーク登壇、アパレルの制作など、ジャンルを越境して活動中。
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