多国籍なルーツと、幼少期から世界各地を転々としてきた経験。その特異なバックグラウンドを“物語”として消費することなく、ヒップホップを軸に、自身の人生と言葉を精緻に掘り下げてきたアーティスト・Skaai。
研究者から表現者に。「自分にしか言えないこと」を表現する悦び
NEUT:韓国人の母、中国系マレーシア人の父というルーツを持ち、幼少期には海外の学校を転々としていたと伺いました。そのようなユニークなバックグラウンドは、現在のあなたの人間性やSkaaiの音楽性に、どのような影響を与えていると思いますか?Skaai:幼い頃から海外を転々としていると、並外れた適応力を身につけることができます。どこの国に行っても、どのコミュニティに参入しても、その場に流れているバイブスや空気感を瞬時に解読して、馴染む。その技術において、自分はトップクラスだと思います。ただ、かっこいい表現者というのは、社会との協調に半ば諦めを覚えながら、未熟な自我に突き動かされてモノを作る生き物のことを指すと思っているので、そういう意味においては、自分が長らく誇ってきた「社会適応力」は特になんの意味も持たない気がします。海外経験も言語力も、別に大人になってから選択的に身につければいいものです。
NEUT:九州大学・大学院に進み、研究者という安定したキャリアの道もあったなかで、ラッパーとしての道を選んだ決定的なきっかけは何だったのでしょうか?Skaai:実を言うと、研究者の世界もそれはそれで殺伐としています。どれだけものを知っているかでスタートラインが変わるし、一見無機質な事象にも文脈を見出して、それをどれだけ独自の目線で説得力を持って証明できるかで勝敗が分かれる世界です。勝てば金と権威を得ますが、その倍率は計り知れません。大学院時代の昼休み、友人がGoogle Scholorをいじっている傍らでPitchforkの記事を読んでいる自分を俯瞰してみて、もしかしたら自分は本当は音楽の仕事がしたいのかもしれないとぼんやり考えるようになりました。そのタイミングで、僕の親友で音楽ライターのJohnがうちに居候するようになり、共にヒップホップに関するYouTubeチャンネルを始めました。そしたらある日、偶然SNSで「ラップスタア誕生」の応募ページに出会い、そのあとはもう番組を見てくれればわかりますが、自分自身を世に発信することの悦び、それにくらってしまったんです。
インスタントに売れる音楽で溢れないように。Skaaiが提示する音楽性
NEUT:音楽活動を本格的に始めてから、ご自身や周囲の環境で大きく変わったことはありますか?Skaai:付き合う人も、自分の言動も、ファッションも未来像も全てが変わりました。ただ、日々の生活において「アンテナを張ること」そして「考え続けること」を大事にするという部分は変わっていません。NEUT:Skaaiさんのラップスタイルには独自の言語感覚やビートの捉え方があるように感じます。言葉・音・感情のバランスにおいて、制作時に最も大切にしているものは何ですか?Skaai:自分だけの言葉や音をずっと探しています。
NEUT:自主レーベルを立ち上げた理由と、そのスタンスを取ることで生まれた制作スタイルや心境の変化があれば教えてください。Skaai:自主レーベル「FR WIFI」を立ち上げたのは、とにかく今のチームで作りたいものややりたいことが多かったからです。BadFriends、uin、yuya saitoと集まって僕のアルバムを制作する中で、これからどうしようかみたいな話が自然と出てきて。俺らだったら色んなアーティストと柔軟に面白い動きができそうだし、しっかり責任を持ってビジネスもやっていきたい。それなら、クルーやコレクティブといった側面も持ち合わせたレーベルという形をとろうという発想になりました。自分が全ての責任を取らないといけないというプレッシャーはありますが、別にメジャーやインディーレーベルに所属していたとしても、当たり前に自分の音楽は自分が守るしかないし誰のせいにもしてはいけないと思うので、そこまで心境に大きな変化はありません。気合いはめっちゃ入りますけどね。
生演奏を基盤にした、“最高のヒップホップ”への挑戦
NEUT:1stアルバム『Gnarly』では、生楽器を基盤にした制作やバンドセットでのライブという新しいアプローチに挑戦しています。こうした方向性を選んだ理由と、その過程で得た発見があれば教えてください。Skaai:ラッパーのバンドセットについて考える場面が多くて、例えば打ち込み音楽として作られた曲をバンドアレンジで演奏している現場をみて「それは原曲のまま歌った方がかっこいいんじゃないか」とか、ギターソロかなりイカしてるのになんかお約束感が出て勿体無いなとか。幸いにも、自分の周りにはバンドマンが多くて、バンドミュージックについて、また楽器プレイヤー特有の会話や音楽への向き合い方について教えてもらうことが多かったので、より強くそう感じてしまったのかもしれません。
NEUT:『Gnarly』で伝えたかったメッセージ、あるいは作品全体を通して描きたかったテーマは何でしょうか?Skaai:特定の人物や層に対するメッセージは特に無くて、アルバムではかなり自分の話を主軸に書き進めたような気がします。とはいえ、このアルバムが世間に「興味深いヒップホップアルバム」として受け入れられたら最高だなとは思っています。NEUT:1stアルバムのリリースによって“Skaaiのアーティスト性”がより明確になった印象があります。あなた自身が考える“自分らしさ”とは何だと思いますか?Skaai:自分らしさはまだわかりません。2ndか3rdアルバムあたりでようやく分かってきたら良いなと思っています。革新的な音楽を作り続けるのみですね。
NEUT:アルバム収録曲の制作とミキシングには、レーベルメンバーでありプロデューサーとして活動する BadFriends、uin、yuya saito が、『Alex Interlude』には共同生活をともにする Alex Stevens も加わっています。さらに、全曲のマスタリングは親交の深い Kota Matsukawa(w.a.u)が担当していると伺いました。
『Skaai ONE MAN LIVE Gnarly』
チケット日時:2026年1月31日 (土)会場:18:00 / 開演:19:00会場:Spotify O-EASTチケット:¥5,500(ドリンク代別)
Skaai
Instagram / X / YouTube / Link Coreアメリカ合衆国・ヴァージニア州生まれ、大分県育ちのアーティスト。日本語・英語・韓国語を操るトリリンガルで、幼少期から日本に加え、韓国、マレーシア、シンガポール、カナダ、アメリカ合衆国での滞在経験を持つ。
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