農にまつわるリアルを伝えるドキュメンタリー連載。情熱をかけて地元で「農」を盛り上げる「人」にスポットを当て、いま起こっているコトをお届けします。
第二弾は、富山県の伝統料理「三日のだんご」のレシピを受け継ぐ、JAなのはな女性部のみなさんを紹介します。

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出産した女性をいたわる栄養食

北アルプス立山連峰の雪解け水が田畑を潤す富山市は、米の一大産地です。
この地では、人生の節目に、地元産米を使った餅やだんごの郷土食が並びます。

JAなのはな農産物直売所に併設するキッチンスタジオでは、JAなのはな女性部(※)が、郷土食「三日のだんご」を作っていました。

「三日のだんご」とは、もち米粉を練っただんごと、ずいきや根菜、厚揚げがたっぷりと入ったみそ汁のことです。出産後の女性に栄養をつけて、母乳の出がよくなるようにと、産後三日めに家族が作って、食べさせた伝統的な郷土の味です。

※JA女性部…JA(農業協同組合、農協)をよりどころとして、食・農・暮らしに関心のある女性が、集まって活動する組織です。地産地消を進める活動や高齢者福祉活動など、幅広い活動に取り組んでいます。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.2】出産を祝い、ねぎらう「三日のだんご」


「富山では、だんご入りの汁物をよく食べます。三日のだんごは、出産した女性の実家が作るのがならわし。娘に食べさせるためですが、鍋いっぱいに作って嫁ぎ先や親戚、近所にも配ります。出産を祝い、誕生報告を兼ねた料理ですね」

料理のいわれを教えてくれるのは、JAなのはな代表理事組合長であり女性部部長の谷井悦子さん(78)です。

離れた町に暮らす母が作って届けてくれたことを、谷井さんは懐かしそうに話します。

「今でも母が作ってくれた三日のだんごが、いちばんおいしいと思っています。富山でも地域によって材料が異なります。ただ、もち米粉のだんごとずいきは、かならず入っていますよ」

【田園日記~農と人の物語~ Vol.2】出産を祝い、ねぎらう「三日のだんご」


母から娘への愛がこもった贈り物

谷井さんや副部長の上滝澄子さん(75)と共に、各支部のリーダーが調理を進めます。
だんごを丸めつつ「鍋いっぱい作って産院に持ってきたわ」「義母も作ってくれたの」など、三日のだんごの思い出にみなさん話が弾みます。

ずいきは煮ると膨らむため細かく切って、だんごはほどよいかたさに仕上げるのがコツだそう。たまに昼食で作っている、と話す上滝さん。

「作り方も簡単です。それにだんごは、お餅よりも粘りけが少ないので、子どもから老人まで食べやすいの」

【田園日記~農と人の物語~ Vol.2】出産を祝い、ねぎらう「三日のだんご」


今では産院でバランスのとれた食事指導もありますが、三日のだんごは出産の喜びを込めた母から娘への贈り物。
そんな愛がこもった食文化をつなげていこうと、谷井さんたちはJA祭りやイベントなどで、三日のだんごを作って積極的にPRしています。

「コロナ禍で休止していた料理教室を再開し、三日のだんごや郷土食を若い世代へ引き継いでいきたい。食文化を未来へ紡ぐことは、わたしたち世代の役目ですからね」

「三日のだんご」の作り方

【田園日記~農と人の物語~ Vol.2】出産を祝い、ねぎらう「三日のだんご」


材料(4人分)

もち米粉 150g
干しずいき 10g
ゴボウ 1/2本
厚揚げ 1/2個
だし汁 800mL
みそ  大さじ2
花がつお 適量

作り方
❶ 干しずいきは1時間ほど水につけてもどし、1~2cmの長さに切る。
ゴボウはささがき、厚揚げは1~2cm角に切る。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.2】出産を祝い、ねぎらう「三日のだんご」


❷ もち米粉をボウルに入れ、湯を少しずつ加えながら練って耳たぶぐらいのやわらかさに。一口大に丸め、真ん中にくぼみをつける。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.2】出産を祝い、ねぎらう「三日のだんご」


❸ 鍋にだし汁を入れ、ずいきとゴボウを加えて煮る。やわらかくなったら、厚揚げ、だんごを入れる。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.2】出産を祝い、ねぎらう「三日のだんご」


❹ だんごが浮いてきたら、みそを溶き入れ味をととのえる。わんに盛って、花がつおをちらす。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.2】出産を祝い、ねぎらう「三日のだんご」


※当記事は、JAグループの月刊誌『家の光』2024年5月号に掲載されたものです。
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