【田園日記~農と人の物語~ Vol.13】米のおいしさ 、力強さを感じる「サキホコレサンド」
え、サツマイモのデンプンで!?
鹿児島県鹿屋(かのや)市にある「どっ菜市場」は、JA鹿児島きもつきが運営する県内最大級の農畜産物直売所。
毎年十二月には大感謝祭があり、人気を呼んでいるのがJA女性部の「でん粉(ぷん)団子汁」です。手作りの郷土料理が無償で振る舞われることもあり、三百食があっという間になくなってしまいます。

好評を受け、昨年地元で開催された国体のバレーボール会場でも提供したところ「すごい反響だったのよ」と、JA鹿児島きもつき女性部部長の中園(なかぞの)朱美さん(66)は笑顔で振り返ります。
「サツマイモのデンプンで、こんなにおいしい料理ができるんだ、と驚いていました」
シラス台地が広がる鹿屋市周辺では、昔からサツマイモ作りが盛んでした。
地域のあちこちには、サツマイモを原料としたデンプン工場もあり、作られたデンプンは小麦粉やかたくり粉の代用品として、日常的に使われてきたのだとか。
なかでも親しまれてきた家庭料理が、この「でん粉団子汁」です。

半透明の見た目は、まるであの卵!
「”でん粉汁”と呼ぶ地域もあります。冬の寒い時期に食べることが多いですね。
と、思い出を語る女性部役員のみなさん。
一方、大阪出身の峯添(みねぞえ)サダミさん(75)は、初めて見たときにびっくりしたそう。
「お団子が、オタマジャクシが生まれる卵に見えて(笑)。でも今は、大好きですよ!」

プルプル食感こそ〝元気の源”
実際に作っていただき、その話に納得しました。
デンプンに熱湯を加えて作っただんごは、鍋の中で火が通ると、あら不思議。
半透明になっていくではありませんか。
プルプルとした弾力のある食感と、つるっとしてのどごしがよく、いくつでも食べられます。
野菜から出ただしの味も、だんごにいいぐあいにしみこんでいます。
そんな郷土の味も、若い世代の家庭ではあまり作られなくなっているそうです。
「でん粉団子汁は、この地域の”元気の源”。
女性部が振る舞う一杯には、「ふるさとの食文化を残したい、伝えたい!」という熱い思いが込められています。

「でん粉団子汁」の作り方

材料(4人分)
デンプン(サツマイモ)… 250g
ニンジン …1本
シイタケ …4枚
ハクサイ …2枚
長ネギ …1本
和風だし(顆粒)… 適量
だしじょうゆ …大さじ6
水 …1200ml
1. 野菜を食べやすい大きさに切る。鍋に水を入れて加熱し、和風だし、ニンジン、シイタケ、ハクサイを入れる。

2. デンプンをボウルに入れ、熱湯適量を少しずつ加えながら混ぜる。粘りが出て、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。

3. ニンジンに火が通ったら、2をスプーンで一口大にちぎりながら鍋に入れていく。

4. だしじょうゆで味をととのえる。デンプン団子が煮えて半透明になったら、長ネギを加えて完成。

※当記事は、JAグループの月刊誌『家の光』2024年11月号に掲載されたものです。