【画像を見る】まっすぐで優しい眼差しの三浦貴大さん
――映画『行きがけの空』では、かつての恋人の娘・美歩と出会い、その少女の夢を応援する役者・建斗を演じられました。
この映画は、建斗、美歩、そして建斗の妻・涼子、主要人物三人の気持ちの変化が美しく描かれており、それぞれ壁にぶつかりながらも前に進んでいく物語です。
最後は爽やかな気持ちになれる作品だと思います。父(俳優・三浦友和)も映画を観てくれて、よかったと言ってくれました。少し照れくさいですけど、やっぱり嬉しいですね(笑)。
――共感できた点や特に難しかった点はどんなところでしたか?
ダンサーを夢見る美歩を見守る建斗の心情には、とても共感しました。
俳優としてある程度キャリアを重ねてきて、若い俳優たちがいい現場で活躍していけるといいなとか、後進を見守るようなことをちょうど考え始めた時期だったので、まさに今の自分の気持ちと重なる部分がありましたね。
一方で難しかったのは、妻・涼子の病気との向き合い方です。もし実際に自分がそういう状況になったらどうするんだろうと、かなり長い時間をかけて考えました。
役作りでは、望月建斗は目の前にいる人のことを大切に考える人なんだと思ったので、そこを大事に演じました。
台詞がなくても伝わる「目」の秘密
――三浦さんは主役でありながら、台詞の無いシーンも多くて、特に目の表情が印象的でした。
過去の作品でも、「目がいい」「目力がある」と言っていただくことが多いのですが、自分が見るとすごく気になるんですよね。
目で芝居をしようとすると、動きが見えすぎてしまうタイプの目をしているので、普段から「目で芝居をしよう」とは考えないようにしています。
例えば、わざと目線を外すといったことはあまり考えず、役の人物の気持ちのまま自然に目線がズレたら、それでいいかなと。
台詞のないシーンは難しいと感じますが、観客に「この人は何を考えているんだろう?」と想像してもらえるのが映画の良さだと思います。
そのためにずっと試行錯誤を続けていますね。

――特に印象深いシーンがあれば教えてください
屋上で、美歩のダンスを建斗が見ているシーンがすごく良かったです。
撮影当時は高校1年生だった服部樹咲さんの演技には本当に驚きました。「この年で、こんなにちゃんとお芝居されたら困るな」と思ったくらい(笑)。
雰囲気があるっていうのは俳優として一番の武器ですから、理屈じゃない存在感が素晴らしかったです。この先、どんな俳優になっていくのかすごく楽しみですね。
あとは、妻・涼子との夫婦のシーンも印象深いです。実は、撮影初日に全てのシーンを撮ったんです。シリアスなシーンが多く、まだ現場ができあがっていない初日で時間軸を全部撮りきるというのは大変でした。
僕は見守る役まわりですが、病気になって悩む妻・涼子を演じた菜葉菜さんは、すごい役者だなと思いました。初日にあの芝居を全てやりきれるのは信じられないくらいです。
小樽は「とにかく寒かった!」
――作品を拝見して、小樽のレトロで美しい街並みや、自然の風景が印象的でした。小樽でのロケはいかがでしたか? 小樽滞在の思い出を教えてください。
小樽には2週間滞在しました。とにかく外に出たくないくらい寒かったです(笑)。残念ながらあまり自由な時間はありませんでしたが、この映画のロケでも使った「小樽オルゴール堂本館」などがある、運河沿いのレトロな街並みを散歩したりはしました。本当に美しかったですね。
――これまで数多くの作品に出演されていますが、出演を決める際に大切にされていることは?
20代の頃は、仕事のオファーは全部受けようという気持ちでいました。これは大学までスポーツをやっていたからだと思うんですけど、ずっとやり続けていないとできなくなってしまいそうで怖いんですよね。続けた時間こそが力や自信になると、それは今も信じています。
今は数をこなすのではなく、台本1冊に対してどれだけ時間を使えるかスケジュールを重視しています。
色々なタイプの役に挑戦したいので、「こういう役がやりたい」といったこだわりは一切ないです。

――役作りの上で大切にしていることや、撮影前のルーティンなどがあれば教えていただけますか?
特定のルーティンみたいなものはないですね。台本を読んですごく心情がリンクする感じだったら、気持ちに沿った台詞の言い方を考えますし、全然自分と違うタイプの、例えば「すぐに人を殴ってしまうような人物」だったら、自分の中で作り込むのではなく、短気な友達と会話して感情の動きを観察するなど、外側から作っていく場合もあります。
僕はすごくビビりなので、そういうことにどれだけ時間をかけられるかが大事なんです。
体育会系って実はすごくネガティブなんですよ。ネガティブだからこそ、自分のダメな場所がわかるし。
例えば相手がいるスポーツだったら、戦ったときに「これがダメなんじゃないか」「これができないんじゃないか」っていうところを全部つぶしていく。スポーツ選手がやっているそういう作業が、役者でもすごく活きているような気がしています。
実はゲーム配信者!?意外なプライベートとは…
――最近プライベートで熱中していることはありますか?
趣味のゲームをやる時間は長めにとっています。Twitchでの配信は面白いですね。ゲームをプレイしながら、ダラダラしゃべっているだけなんですけど、そこにコメントが来たりして。「タカミウラ」という名前で配信しているので、僕が役者だと知らない人がほとんどなんですよ。
だいたい50人~100人くらいがいつも見に来るくらいなので、居心地がいいというか。リフレッシュにもなっていますね。
休日はほぼ外出しないし、人と話すことがほとんどなかったんですけど、配信をするようになって人としゃべるようになりました(笑)。
――11月に40歳になられます。どんな40代にしたいですか?
まずは、運動したいです。高校・大学はライフセービングをやっていて、20代は体が動きすぎた分、動けなくなった実感がすごくあって。
俳優を長く続けたいので、気持ちを新たに若い頃よりも自分で行動して、健康もいい仕事もいろんなものを掴んでいきたいと思います。
※三浦貴大さんのインタビューは、月刊誌『家の光』2025年9月号にも掲載されています。
https://www.ienohikari.net/press/hikari/
映画情報
「行きがけの空」
小樽で暮らす高校生・星野美歩(服部樹咲)は、母の遺品整理中に古い携帯電話を見つける。そこには、若き日の母と見知らぬ男性―東京で舞台俳優として活動する望月建斗(三浦貴大)の姿があった。自分のルーツが知りたくなった美歩は、建斗に手紙を送る。数日後、建斗は小樽を訪れ、二人は過去について語り合うが、語られる過去はかならずしも美しいだけのものではなかった。

©2025 「行きがけの空」フィルムパートナーズ
8月1日(金)より全国順次公開
共同配給: T-artist、アークエンタテインメント