【田園日記~農と人の物語~ Vol.28】酒蔵の‟賄い”から生まれた郷土料理「美酒鍋」
子どもの頃から親しんだ懐かしい味
北アルプスの豊かな水が田畑を潤す富山県東部の新川地域(黒部市、魚津市、入善町など)。この地域に受け継がれてきた郷土の味が「押しずし」です。
焼いたサバをほぐし、刻んだくるみを加えて、焼きのりでくるりと巻いた「くるみ入り押しずし」は、昔から祝いの席に欠かせないものでした。
「結婚式や新築祝い、祭りや収穫祭には、かならず作っていました。押しずしをこしらえる祖母を、よく手伝ったものです」
そう話すのは、JAくろべ女性部部長の髙本一惠さんです。子どもの頃は、酢飯が苦手だったそうですが、今では、押しずしが大好物になったと笑います。
「この地域は富山湾でとれるサバをよく食べます。また山間地にはくるみの木が多く、どちらも郷土の味。黒部の人はくるみのことを”クロベ”って呼ぶの。くるみ入りは珍しいと言われますが、わたしたちにはなじみの味ね」
さらに伝統の押しずしを基に、女性部で開発したのが「黒豆入り押しずし」です。
華やかな紅白の押しずしにして、市のイベントや道の駅で販売することも。子どもから高齢者まで好評です。
小学生向けの食イベントも大好評!
JAくろべ女性部では「食は生命、子供は宝」と掲げ、食農教育に力を入れています。地域の小学生を対象に、食のイベントも実施しています。
「みんなで百メートルの”のり巻き”作りに挑戦するなど、楽しみながら食農教育をしています。食の喜びやたいせつさを感じてほしいです」
また二十年ほど関わっているのが、市主催「名水の里くろべ こども自然体験村」で、”家庭の味”を子どもに振る舞うこと。令和六年は小学生六十人に弁当を提供。野外の調理実習では、旬の地場産野菜で天ぷらを作りました。
「天ぷらは店で食べるものと思っている子も多くて、とても喜んでもらえました。天ぷらを揚げない家庭も増えているそう。
そのために保育園や小学校で、親子参加型の料理イベントをしたいと語る髙本さん。
郷土が誇る”押しずし”のように、夢や目標を女性部という大きな型に詰め込んで、仲間と共に意義のある活動へと押し出していきます。
「くるみ入り押しずし」の材料と作り方はこちら
材料(20人分)
米…10合
サバ…1尾
らっきょう酢…適宜
おろししょうが…80~100g
くるみ…90g
焼きのり…24枚
[A]
らっきょう酢…330mL
砂糖…50g
塩…5g
作り方
1. サバは焼いて身をほぐし、らっきょう酢とおろししょうがを加え、混ぜておく。
2. 炊きあがった米に混ぜておいた[A]を入れて冷ましたら、細かく砕いたくるみを混ぜこむ。
3. 2を400g量り、半分を木型に入れてならす。その上に1をちらす。残りの半分を重ねて押しぶたをのせ、重しをして一晩おく。
4. 木型から取り外して、四等分に切り分ける。
5. 焼きのりを巻いて完成。のりの形を工夫し、あればサクラの花の塩漬けで、飾るのもいい。
※当記事は、JAグループの月刊誌『家の光』2025年6月号に掲載されたものです。
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