農にまつわるリアルを伝えるドキュメンタリー連載。情熱をもって地元で「農」を盛り上げる「人」にスポットを当て、いま起こっているコトをお届けします。
今回紹介するのは、富山県東部の郷土食「くるみ入り押しずし」です。結婚式や収穫祭など祝いの席に欠かせない伝統の味を、JAくろべ女性部のみなさんが次世代へとつなぎます。

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【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


子どもの頃から親しんだ懐かしい味

北アルプスの豊かな水が田畑を潤す富山県東部の新川地域(黒部市、魚津市、入善町など)。この地域に受け継がれてきた郷土の味が「押しずし」です。

焼いたサバをほぐし、刻んだくるみを加えて、焼きのりでくるりと巻いた「くるみ入り押しずし」は、昔から祝いの席に欠かせないものでした。

「結婚式や新築祝い、祭りや収穫祭には、かならず作っていました。押しずしをこしらえる祖母を、よく手伝ったものです」
そう話すのは、JAくろべ女性部部長の髙本一惠さんです。子どもの頃は、酢飯が苦手だったそうですが、今では、押しずしが大好物になったと笑います。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


「この地域は富山湾でとれるサバをよく食べます。また山間地にはくるみの木が多く、どちらも郷土の味。黒部の人はくるみのことを”クロベ”って呼ぶの。くるみ入りは珍しいと言われますが、わたしたちにはなじみの味ね」

さらに伝統の押しずしを基に、女性部で開発したのが「黒豆入り押しずし」です。
煎った黒豆を米と炊いて酢飯にすると、鮮やかなピンク色に。黒豆の香ばしさが、いいアクセントになっています。

華やかな紅白の押しずしにして、市のイベントや道の駅で販売することも。子どもから高齢者まで好評です。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


小学生向けの食イベントも大好評!

JAくろべ女性部では「食は生命、子供は宝」と掲げ、食農教育に力を入れています。地域の小学生を対象に、食のイベントも実施しています。

「みんなで百メートルの”のり巻き”作りに挑戦するなど、楽しみながら食農教育をしています。食の喜びやたいせつさを感じてほしいです」

また二十年ほど関わっているのが、市主催「名水の里くろべ こども自然体験村」で、”家庭の味”を子どもに振る舞うこと。令和六年は小学生六十人に弁当を提供。野外の調理実習では、旬の地場産野菜で天ぷらを作りました。

「天ぷらは店で食べるものと思っている子も多くて、とても喜んでもらえました。天ぷらを揚げない家庭も増えているそう。
郷土料理だけでなく家庭の味も、子どもや若い親世代へ伝えていきたいと思っています」

そのために保育園や小学校で、親子参加型の料理イベントをしたいと語る髙本さん。
郷土が誇る”押しずし”のように、夢や目標を女性部という大きな型に詰め込んで、仲間と共に意義のある活動へと押し出していきます。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


「くるみ入り押しずし」の材料と作り方はこちら

【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


材料(20人分)
米…10合
サバ…1尾
らっきょう酢…適宜
おろししょうが…80~100g
くるみ…90g
焼きのり…24枚

[A]
らっきょう酢…330mL
砂糖…50g
塩…5g

作り方
1. サバは焼いて身をほぐし、らっきょう酢とおろししょうがを加え、混ぜておく。

2. 炊きあがった米に混ぜておいた[A]を入れて冷ましたら、細かく砕いたくるみを混ぜこむ。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


3. 2を400g量り、半分を木型に入れてならす。その上に1をちらす。残りの半分を重ねて押しぶたをのせ、重しをして一晩おく。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


4. 木型から取り外して、四等分に切り分ける。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


5. 焼きのりを巻いて完成。のりの形を工夫し、あればサクラの花の塩漬けで、飾るのもいい。

【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」


※当記事は、JAグループの月刊誌『家の光』2025年6月号に掲載されたものです。
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