【アボカド新常識】えっ、スーパーでは「緑色」を買うのが正解!?おいしいアボカドの選び方【農家直伝】
あえて雪国・新潟でアボカドを栽培!?
越後平野の内陸部、信濃川と中ノ口川に挟まれた場所に位置する新潟市白根地区。2つの川によって堆積した肥沃な土壌に恵まれ、古くから稲作や果樹栽培が盛んな地域です。
冬は雪に覆われるこの地でアボカドを栽培し、注目を集めているのが「せきね農園」の9代目、関根邦仁さん(41)です。
ビニールハウスで栽培する「雪国アボカド」が脚光を浴び、テレビなどのメディアにたびたび登場していますが、前職は、ビジュアル系バンドのボーカリストという、異色の経歴の持ち主なんです。
いったいどんな経緯で、バンドマンからアボカド農家へと転身を遂げたのでしょうか?
ビジュアル系バンドのボーカリストからなぜ農家に?
歴史ある農家の長男として生まれた関根さん。幼い頃から、両親に農家を継ぐよう言われて育てられたといいます。
そうしたことへの反発もあり、高校生の時、仲間と共にバンドを結成。高校卒業後、東京の大学に進学しましたが、本格的にバンド活動をするために、すぐに中退したそうです。
「父に大学を辞めると話した時は、反対されました。認めてもらう代わりにした約束が、”バンドを辞めた時は農家を継ぐ”というものでした」(関根さん)
関根さんはOZ(オズ)というインディーズバンドのボーカリスト、Natsukiとして精力的に活動。いくつもの楽曲を世に送りだし、多くのファンを沸かせましたが、2013年、31歳の時にバンドを解散しました。
バンド時代の関根さん。
「解散の理由は、自分たちの集大成ともいえるアルバムが作れたことです。やりたかった音楽をすべて出し切れた、やり切ったという感じでしょうか。他のメンバーも同じ気持ちで、自然と解散という形になりました」(関根さん)
その後、父との約束を果たすべく、新潟の実家に戻ったといいます。
「当時は、まだ農業がやりたかったわけではありませんでした。ただ、約束したからには守らなきゃな、という気持ちでしたね」(関根さん)
家族が農作業をする姿を見たことはあるものの、農業について何も知らなかった関根さん。
「最初はただひたすら、父に言われたことをやるだけでした。うちの農園では以前から桃、米、ひらたけを栽培しているのですが、桃の畑に行け、と言われたら行って、草刈りしろと言われたらして」(関根さん)
当時は農業に対して、やりがいを感じられずにいたといいます。
農家仲間との出会いが、自分を変えた
しばらくして、関根さんの心境に変化が訪れます。きっかけは、同世代の仲間との出会いでした。
関根さんが住む新潟市白根地区は、桃、梨、ぶどう、洋梨の栽培が盛んな地域。
「周りには農業大学校を卒業して、知識も経験も豊富に積んできた同世代の若者がたくさんいました。農業に対する姿勢も一生懸命で、やる気のない自分とはまるで違う。
仲間と話すうちに、農業へのイメージも変わったといいます。
「農家の方って、すごく勉強してるんですよ。作物を栽培するためのマニュアルはありますが、その中で創意工夫もしなきゃいけない。とにかく、みんな頭を使って、考えながらやっているということに気づかされたんです。それって大変なことですが、だからこそ、おもしろさがあると思いました」(関根さん)
関根さんがとくに興味を持ったのは、果樹栽培でした。
「野菜や米は作付けして収穫したら、そのシーズンはいったん完結します。それに対して果樹は、畑に木を植えてから毎年土作り、枝作りをして、5年後、10年後にその結果が出るんです。ずっと先の未来を見据えて、そのための仕事を、今やる。そして少しずつ自分の理想に近づけていく。そんなところに、カッコよく言えば、ロマンを感じました」(関根さん)
「自分なりの農業」に挑戦したい。それがアボカドだった
実家では、桃の栽培をしていましたが、関根さんはあえて、他の作物に挑戦したいと考えました。
「せっかくやるなら、自分なりの農業をやってみたかったんです。
2014年の末、関根さんはどの作物を栽培するか、インターネットで情報収集を始めます。目をつけたのは、輸入量が多く国産が少ない作物。ここに販路拡大の可能性を感じたのです。
「まずは、輸入量の多い作物を検索しました。バナナ、パイナップル、グレープフルーツ、オレンジ、キウイフルーツ…と、それぞれ一つずつ、栽培方法を調べていき、たどりついたのが、アボカドだったんです」(関根さん)
アボカドは熱帯のイメージが強い作物ですが、意外と寒さに強く、品種によっては、マイナス6℃まで耐えられることが分かったそうです。
しかも、味のいいアボカドを育てるには昼夜の寒暖差が必要で、本場メキシコでも、名産地とされているのは標高2000mの高地。昼間は暖かく、夜は10℃前後になる地域でした。
「日本ではアボカドの旬は、10~1月あたりになります。新潟県では10月になると、夜間は10℃を切りますが、日中は、ハウスの中は暖房を使わなくても30℃くらいまで上がります。ハウスを利用することで、収穫前の味をのせる時期に、寒暖差をつけられる。だったら、新潟の寒さもメリットになるんじゃないか、新潟の気候を生かした栽培ができるんじゃないか、と考えました」(関根さん)
アボカドの栽培方法を独自に研究して…
アボカドを育てると決めたものの、日本には経営に使えるほどの栽培マニュアルはありませんでした。
「手に入る情報といえば、根が弱いので根腐れしやすい、とか、花がこんなふうに咲く、といった、植物として基本的なことだけでした。そこで、他の果樹の栽培方法を参考にしつつ、この作物のこの技術がアボカドにも使えそうだな、などと、自分なりの栽培マニュアルを考えていきました」(関根さん)
その中のひとつが、果樹栽培の技術である「根域制限栽培」。ポットで栽培し、根が広がらないようにすることで、木が大きく成長するのを抑制するとともに、実つきをよくする技術です。
そんなふうに栽培方法をある程度決めたうえで、2015年春、関根さんはアボカドの苗木を購入し、栽培を開始しました。
アボカドは植えてから初めて実をつけるまで、早くても5年はかかると言われていますが、関根さんはわずか1年で、数個の実を収穫することに成功。2017年には大きいハウスをたてさらに収穫量を増やし、2018年、「雪国アボカド」という商品名でインターネット販売を始めました。
「アボカド栽培にはコストがかかるので、2品種以上3~4個入のセットで約7000円(税込・送料込み)という決して安くはない価格設定です。それにもかかわらず、販売開始直後から申し込みが殺到し、短期間で売り切れたんです」(関根さん)
その後、テレビなどのメディアに取り上げられたことが人気に拍車をかけ、販売は、インターネットの抽選販売が中心となりました。
「いちばん嬉しいのは、リピーターの方が多いことですね。ネット販売なので顔の見えないやりとりですが、この価格で買っていただき、実際に食べたうえで、納得してくださったんだな、と感じられるからです」(関根さん)
関根さんは農家になったことで、農業はクリエイティブな仕事だと感じるようになったといいます。
「自分流の工夫をして、いいものを作り、納得してもらえたら、ファンになっていただける。それって、バンド活動と全く一緒だなと。
アボカド栽培について、熱く語ってくださった関根さん。農業という新たなステージで、キラキラと輝く姿が印象的でした。
インターネットの抽選販売について詳しく知りたい方は、せきね農園のホームページをぜひチェックしてくださいね。
●ホームページ
https://sekinenouen.com/
●インスタグラム @sekine.farm
https://www.instagram.com/sekine.farm/
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