“ワインは、一人で飲むな、ワインは、シュンポシオン(酒宴)で、誰かと語り合いながら、飲むものだ”とは、古代ギリシャ人の言葉です。哲学者プラトンは、ワインを飲みながら愛を論じる、シュンポシオンの様子を本に書き残しています。
ギリシャは、フランスやイタリアに並ぶワイン造りの歴史が長い国ですが、日本人からするとあまり知名度が高くないかもしれません。しかし、美味しいワインがたくさんあり、世界のワイン好きも注目をしているほどなんです。
今回は、ソムリエの私が特におすすめの10本をランキング形式でご紹介。さらに、ギリシャワインの歴史や特徴についても解説していきます。
ギリシャワインの特徴
ギリシャワインの歴史
ギリシャは、フランスやイタリアに並ぶヨーロッパ最古のワイン生産国のひとつです。ワイン造りの歴史は、紀元前1500年頃に始まり、およそ3500年の歳月が流れました。
近年のようなギリシャワインの形になったのは、1980年の半ばのこと。フランスで学んだ栽培家と醸造家がギリシャに帰国し、近代的な方法による国内向けのワイン醸造を始めたのです。これにより、ギリシャワインの新時代は幕を開けました。
さらに、2009年。世界中のワインラヴァーの好奇心をつかもうと、ギリシャの土着品種にこだわったワイン造りを開始。海外への輸出を積極的にスタートさせていったのです。
松の風味がする!?ギリシャワインの代名詞「レツィーナ」
紀元前、ギリシャではアンフォーラという陶器の壺にワインを注ぎ、松ヤニで栓をしていたのだそう。そのため、松ヤニがワインに溶け込むことから、古代ギリシャのワインは松ヤニの風味があったそうです。
そう、これが有名なギリシャワインの代名詞「レツィーナ」です。
ギリシャのワイン生産地と主なブドウ品種

国土としてはそこまで大きくない印象のあるギリシャですが、実は地域によってそのワインの特色は大きく異なります。以下では、各地域ごとのワインやぶどうの特徴をご紹介していきます。
ギリシャ北部
ギリシャ北部では、ナウサ・アミンデオン・ジツァの3つのエリアがワイン醸造地帯として有名です。
・ナウサ
ナウサでは、クシノマヴロ種(黒)から魅惑的なブーケをまとう赤ワインが造られます。そのクオリティは、イタリアの名醸造地「バローロ」と肩を並べるほどだと言われてることもあるほどなのです。
・アミンデオン
最も高い所では、標高650mの所にブドウ畑があるというアミンデオンは、冬に雪が降るほどの寒冷地。芳香のある白ワインのほか、クシノマヴロ種(黒)によるロゼとスパークリングワインが有名です。
・ジツァ
ギリシャ原産のデビーナ種(白)による軽快なスパークリングワインが人気のジツァ。リンゴの香りと酸味の強さが特徴のワインを造っています。
中央ギリシャ
ギリシャ本土の中央部では、首都アテネの裏庭アッティカが有名。アッティカはギリシャ最大の生産地としても知られています。
・アッティカ
ギリシャワインの代名詞的存在「レツィーナ」の一大生産地です。原料のブドウは、サヴァティアーノ種(白)ですが、アッティカに広がるブドウ畑の95%を占めています。現在では松ヤニを入れないワインも造られています。
ペロポネソス半島
ギリシャ本土の最南端にある半島です。中でも有名なワイン生産地がネメアです。
・ネメア
ネメアは、神話の登場人物としても有名なヘラクレスの生誕地。「ヘラクレスの血」とよばれる、ギリシャ原産のアギオルギティコ種(黒)の赤ワインが有名です。
諸島
ワインを造っているギリシャの島々のこと。主な島をご紹介します。
・クレタ島
ギリシャの最南端にある最も大きな島です。近年、投資家から資金を集めヴィナラ種(白)やプリト種(白)などの土着品種の栽培に力を入れています。
・ケファロニア島
ギリシャ本土の西に浮かぶ島です。ココには島の伝統品種のロボラ種(白)があり、酸味のあるフレッシュな白ワインとして愛されています。
・サントリーニ島
クレタ島の北に浮かぶ島。諸島の中でも有名で、覚えておきたい島の1つです。海からの強い風を防ぐために、鳥の巣のような形をしたクールラという独特のスタイルでブドウ樹を仕立てます。
サントリーニ島原産の高級なアシルティコ種(白)で造った甘口ワイン「ヴィンサント」は、特に有名です。
・サモス島
エーゲ海の東に浮かぶ島です。マスカット種(白)による甘口ワインがよく知られています。
・ロードス島
クレタ島の北東に浮かぶ島です。紀元前7世紀頃は、ギリシャの中心的なワイン生産地でした。ギリシャ全土で栽培されるアシリ種(白)の白ワインが人気です。
ソムリエが選ぶ!ギリシャのおすすめワインランキング10選をご紹介
10位 マラグシア/ロミナス・ワイナリー
ロミナス・ワイナリーは、1917年に中央ギリシャのアッティカに設立されたワイナリーです。当主のスタティマス・ミロナスは、高度な醸造技術と高いテイスティング能力をもった先進的な醸造家。オーク材とアカシア材の2種類の木材を使って熟成用の樽を造るなど、彼の手腕が光ります。
「マラグシア」は、近年発見されたギリシャの古代品種マラグシア100%による白ワイン。色が深く、柑橘類の香りが漂うほかフィネスながらコク深い味わいのあるワインです。
ラベルの白ウサギは、ふしぎの国のアリスがモチーフ。見た目が可愛いのもポイントです!

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9位 サマロペトラ/キリ・ヤーニ
キリ・ヤーニの設立者ヤーニス・ブタリスは、ギリシャ随一の醸造家としても名高い人物。ワイナリーは、北ギリシャのナウサにあります。テロワールを重視したブドウ栽培はピカイチで、すばらしいワインを生み出し続けています。
今回紹介する「サマロペトラ」は、アミンデオンの畑で育ったギリシャ初のソーヴィニヨン・ブラン100%で造った白ワイン。柑橘類の香りとすっきりとした酸味が心地いい1本は、非常に飲みやすく初心者にもおすすめです。

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8位 パランガ/キリ・ヤーニ
「パランガ」は、キリ・ヤーニが自慢するクシノマヴロ50%、シャルドネ30%、マルヴァジア20%をブレンドしたユニークなスパークリングワインです。
接ぎ木なしの樹齢80年のブドウが混ざっているため、派手さがあるというよりは、落ち着きのある味わいのため食事と合わせても良さそうですね。

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7位 ヴィーノ・ディ・サッソ/ドメーヌ・スクラヴォス
ドメーヌ・スクラヴォスは、ケファロニア島にあるワイナリー。化学肥料や農薬を使わず、自然の摂理を重んじるビオディナミ農法を実践しています。
こちらの「ヴィーノ・ディ・サッソ」は、ケファロニア島の伝統品種ロボラ100%の白ワイン。栓を開けた途端に漂うオレンジの花や朽ちた木のアロマに加え、微炭酸の泡の刺激と酸味主体のキレのある味わいが魅力のミディアムボディです。
特に魚料理との相性が抜群です!

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6位 クレティコス/ブタリ・ワイナリー
ブタリ・ワイナリーは、1879年から続く老舗ワイナリーです。ワインの保存をアンフォーラの壺からガラス製のビンに変えたという、ギリシャワインの歴史の中では大きな動きを行なったことでも知られています。
ギリシャワインの牽引役をつとめながら、2018年にはアメリカの雑誌『ワイン&スピリッツ』が選ぶ「トップ100ワイナリー2018」の第6位に輝きました。まさに、ギリシャワインの英雄ですね!
こちらの「クレティコス」は、クレタ島の土着品種ヴィラナを主体に、プリト・ダフニなどをブレンドした白ワイン。

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5位 レツィーナ/アオトン・ワイナリー
アオトン・ワイナリーは、1936年に中央ギリシャのアッティカに設立されたワイナリーです。当主のギニス・ソティリスは、“ブドウのできが悪い年は、ワインを造らない”というポリシーの持ち主。それ故に、彼のワインのクオリティの高さは世界から注目を集めています。
こちらのワインは、ギリシャが誇るワイン「レツィーナ」。ギリシャ原産のサヴァティアーノ100%のワインの中に、松ヤニをわざと添加するという製法。ワイン1リットルあたり1~5グラムくらいを添加しているのだそう。
ギリシャワインの魅力を感じたいという方は、ぜひ飲んでみてほしい1本ですね!

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4位 カリ・リーザ/キリ・ヤーニ
「カリ・リーザ」は、ワインの専門家が絶賛するキリ・ヤーニが育てたクシノマヴロ100%の赤ワインです。クシノマヴロは「酸っぱい黒」という意味。
プレフィロキセラの樹齢60~80年のブドウを使い、フレンチオークの樽で18か月熟成させるので、コク深い味わいになっています。
この酸味のあるエレガントな赤は、ピノ・ノワールやネッビオーロを連想させるといわれています。

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3位 ネメア/ネメア生産者組合
「ネメア」は、ペロポネソス半島のネメア生産者組合が、アギオルギティコ100%から造った赤ワインです。「ヘラクレスの血」といわれるアギオルギティコは、深紅の色調が妖艶なのでギリシャ神話の英雄ヘラクレスが難業で流した血を連想させます。
ギリシャワインでは絶対にはずせない1本なので、勝利の美酒に酔いたい夜や、何か良いことがあった夜などにぜひ開けてみてください!

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2位 サントリーニ/ドメーヌ・シガラス
ドメーヌ・シガラスは、サントリーニ島に佇む世界的に有名なワイナリーです。当主のパリス・シガラスが生み出すワインは、様々なホテルやレストランのテーブルで見かけるほど、知名度も人気も高いワインです。
「サントリーニ」は、サントリーニ島原産のアシルティコ100%の白ワイン。レモンやミネラルのアロマのほか、アルコールのボリューム感と酸味のある味わいが印象的です。

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1位 ヴィンサント/ドメーヌ・シガラス
イタリアのヴィーノ・サントは、ギリシャのサントリーニ島のヴィンサントが起源だって知っていましたか? ヴィンサントは、収穫したブドウを陰干ししてから造る甘口の白ワイン。
「ヴィンサント」はサントリーニ島の代表品種のアシルティコ75%、アイダニ25%による甘口白ワインです。フレンチオーク樽で発酵と熟成を行います。
熟成期間は5年。豊潤で濃厚な味わいは、甘口ワインならではの魅力を教えてくれます。

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まとめ

ギリシャワインといえば、やはり松ヤニ入りの「レツィーナ」。ギリシャワインの魅力を確かめたい方は、まず口にしてみることをおすすめします。
また、どのワインも原料のブドウは土着品種だというのも、ギリシャワインの大きな特徴。それほど、土地と密接したワイン造りをしているということなのでしょう。
さらに、古代ギリシャの哲学者プラントやギリシャ神話の英雄ヘラクレスなど、ギリシャは文学とワインが密接にかかわっています。名前や由来などを調べてみると、ギリシャワインがさらに楽しめるかもしれませんね!
今回の記事を参考に、ぜひともギリシャワインの奥深き世界に足を踏み入れてみてください。