ブロッコリー、カリフラワー、キャベツの垂直仕立て栽培のコツを道法さんと池田さんに教わります。育ちがよくなり、害虫被害が減り、なによりもおいしさがアップします。
葉を立てて育てれば、おいしさアップ!
ブロッコリー、キャベツを垂直仕立てで栽培すると、育ちがよくてとてもおいしくなります。ブロッコリーには1本ずつ支柱を立て、葉を立たせ気味に縛って育ててみましょう。キャベツは背が高くなりませんから、ブロッコリーのような支柱栽培はできません。別のアイデアで葉を立たせます。
ブロッコリーもキャベツも、8月がタネまきの適期です。垂直仕立て栽培のコツを覚えて、今年の冬においしい収穫を楽しんでください。葉を立てて育てると害虫被害も少なくなるので、無農薬栽培が容易に行えます。
監修=道法正徳さん、池田千恵美さん
どうほうまさのり1953年、広島県豊田郡(現、呉市)生まれ。垂直仕立て栽培により、肥料を施さない、安全でおいしい果実と野菜づくりを提案。農業のコスト削減(儲かる農業)、地球環境に重要な地下水を守る農業技術の普及に努める。全国で自然栽培セミナーを開催、農業技術指導も国内外で行う。
いけだちえみ
広島県の自然栽培農家。“魔法使いの野菜畑【monpe du Rita】”園主。垂直仕立て栽培を採り入れ、道の駅の直売所や個人宅配、畑での収穫体験マルシェで野菜を販売中。
①堆肥や肥料を入れずに畝を用意
肥料や堆肥を入れずに畝を整える垂直仕立て栽培は無施肥・自然栽培で行います。肥料や堆肥を入れずに畝を用意します。
水はけが期待できない畑では高めの畝をつくり、水はけがいい畑では高さのない平畝にします。
畝に黒マルチを張ると除草の手間が省け、水分も安定するので育ちがよくなります。黒マルチを利用しない場合は、ワラや刈り草、落ち葉などで畝を覆う“有機物マルチ〟を利用するといいでしょう。
ブロッコリーのタネまき時期は、中間地では8月中旬です。畑に直まきするか、育苗ポットにタネをまいて育苗します。育苗期間は約30日で、9月中旬に畝に植えつけます。
垂直仕立て栽培は無肥料栽培が前提です。夏野菜を片付けたら、畝を耕して形を整えます。マルチをぴったりと張って、植えつけに備えましょう。家庭菜園では黒マルチが安価でおすすめです。写真は害虫の飛来を防ぐ効果があるシルバーマルチです。

②草丈15cmに育ったら垂直仕立て
支柱に縛って葉を立たせるブロッコリーが草丈15cmに育ったら垂直誘引を始めます。
長さ1m程度の支柱をブロッコリーの苗の西隣りに立て、茎、茎の柄を麻ヒモなどで縛り、葉を立たせます。
植物ホルモンが活性化し、根量が増えて初期から生育がよくなります。
支柱を西側に立てる理由は、日が昇ったときに苗が支柱の陰に入らず、すぐに光合成を始められるからです。

③ブロッコリーは麻ヒモで縛るか挟んで葉を立てる
大きくておいしい花蕾が採れる写真はカリフラワーの垂直仕立てて栽培です。
カリフラワーもブロッコリーも、葉を立てて育てると、生育が旺盛になり、しっかりと締まった形のいい大きな花蕾を収穫できます。食感も素晴らしく、野菜本来の味が楽しめます。
カリフラワーはてっぺんの頂花蕾を収穫したら終わりですが、ブロッコリーは頂花蕾を収穫したあともわき芽から側花蕾がどんどん生え、小さなブロッコリーの収穫が長く続きます。側花蕾を収穫しやすいよう、葉の立て方をやや緩めて栽培を続けましょう。耕すだけで畝を用意カリフラワーの垂直仕立て栽培例です。ブロッコリーも同様に仕立てます。あらゆる植物ホルモンがバランスよく活性化し、根量が増えて葉がぐんぐん育ちます。



畝に杭を立ててヒモを2本張り、カリフラワーやブロッコリーの葉を挟んで垂直気味に立てる方法もあります。株数が多い場合はこのやり方がおすすめです。

夏の果菜類や花の栽培で利用されるフラワーネットを利用してブロッコリーの葉を立たせ気味にして育てたというレポートが読者から送られてきました。
畝に何本か杭を立て、目合い15cmのフラワーネットを低い位置に水平に張り、苗を定植します。
苗が生長したら、葉を目合いに通して支えて、葉が垂れないように育てます。
またこの方はキャベツの畝にもフラワーネットを張って栽培してみたそうです。こちらは、葉が地面につかずナメクジ被害がなくなったとのことでした。

POINT!キャベツは密植栽培で葉を立てる
キャベツを密植気味に育てると葉が自然に立ち上がり、垂直仕立て栽培の生育促進効果が得られます、葉色とツヤがよく、害虫もついていません。京都府の山本晋也さんの実践例です。
キャベツの苗を植える時期は、中間地では9月上旬~中旬が目安です。ブロッコリー同様、堆肥や肥料を入れずに、土を耕して畝をつくり、マルチを張っておきましょう。
タネを直まきする場合は8月上旬~中旬が適期です。それに合わせて畝を用意します。
幅60cmの畝に株間35~40cmで1列に植えるか、幅80~90cmの畝に株間35~40cmで2列、千鳥に植えます。少々株間が狭いですが、これは、生長に従い、隣り合うキャベツの外葉を押し合わせて、自然に葉を立ち気味にさせるためです。キャベツはブロッコリーのように背が伸びず、支柱を立てて誘引する方法は向きません。
さて、草丈が15cmくらいに育ったら垂直仕立て栽培をスタートします。
短い支柱を立てて、キャベツの葉柄の部分にヒモを回して縛りつけるか、2本のヒモを張って挟むかして、葉を立たせた状態で育てます。初期の生育がとてもよくなります。
その後は、外葉を押し合って立ち気味になり、垂直仕立て栽培の効果が得られます。11月中旬から、葉がぎっしり詰まったおいしい玉を収穫できます。
【重要】草丈15cmに育つまでは害虫対策
害虫に強い垂直仕立て栽培だが…垂直仕立て栽培を行うと、あらゆる植物ホルモンが活性化します。エチレンの量が増して、病害虫が出にくくなるのも大きなメリットです。
ただし、発芽してから草丈15cmになるまでの間は、防虫ネットや寒冷紗で苗を害虫から守ってください。
幼苗期に虫にたかられると致命傷になります。

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