今年5月から放送の始まった、アニメ『鬼滅の刃』柱稽古編。2月には先立って劇場版「『鬼滅の刃』絆の奇跡、そして柱稽古へ」にてアニメ1話が全世界で放映され、大勢のファンが劇場に足を運んでいましたね。
これまでにも『鬼滅の刃』から、作中の数々の登場人物の魅力を紹介してきた本シリーズ。今回ピックアップするのは、いよいよ今作の柱稽古編より本格的に登場する柱の一人、蛇柱・伊黒小芭内です。
※本記事は性質上、アニメ未放送の原作内容を含みます。
Blu-ray『鬼滅の刃 柱稽古編』1巻(アニプレックス)
ついに本格登場した蛇柱・伊黒。不死川との共闘に沸いたワケは
鬼殺隊の最高戦力・柱のひとりでもある伊黒小芭内。白黒の縞模様の羽織に包帯で隠した口元、そして緑と黄色のオッドアイが特徴的な、小柄な体格の剣士です。
アニメを通してこれまでも度々姿を見る機会はありましたが、今回の柱稽古編からが、いよいよ彼の本格的な登場となってきます。
全世界で劇場公開もされた、今回の柱稽古編第1話。冒頭から原作マンガにはない、彼と風柱・不死川実弥の共同任務が描かれ、ここまで戦闘シーンをほとんど見る事のなかった二人の活躍がたっぷり楽しめる!とファンの間でも話題に。
荒々しく攻撃的な風の呼吸、そして素早く相手を翻弄する蛇の呼吸による連携の取れた戦い。その姿に思わず「おおっ!」と歓喜した人も多かったことでしょう。
これまであまりアニメでは出番のなかった二人の共闘。しかし鬼滅の刃をより深く知る人であれば、今回のアニメオリジナルとなる不死川&伊黒コンビの活躍を嬉しく思った人もきっといたはず。
その理由は、原作マンガからさらにディープな資料ともなる公式ファンブックに掲載された、ある情報がポイントとなっています。
不死川との関係。“仕事とプライベート”を分けるタイプ?
全2巻で敢行されている鬼滅の刃公式ファンブック。そのうち『鬼殺隊見聞録・弐』(集英社)には、9人の柱の人間関係が詳しく書かれている相関図があります。
ここには作中の物語で描かれなかった部分も含め、謎の多かった柱同士の人間関係や隠れたエピソードも満載。書籍発売当時は大きな話題を呼んでいました。
柱たちの意外な関係性も多数明かされたこの相関図。そこで注目を集めた内容のひとつが、不死川と伊黒の関係についてです。

『夢幻/永久 -トコシエ-』(ソニー・ミュージックレーベルズ)
柱の中では比較的、人の好き嫌いがかなりはっきりしていることが読み取れる彼ら。ですがお互いに対しては揃って、それぞれ明確に友人として仲が良いことを明かしていました。
そんな彼らの関係性を知ると、あの連携の取れた戦い方にもますます納得です。非常に細かい所ですが、筆者としては伊黒が後輩隊士の前では不死川を「風柱」と呼び、二人になってからは「不死川」と呼び方を名前に変えた点にも思わずにっこり。
「仕事とプライベートを分けるタイプの人だ…」と、これまであまり見えなかった彼の素が垣間見えるような。そんなワンシーンでもあると感じました。
蜜璃との微笑ましい両片思い。想いあう2人が切ない
また伊黒の一面を語る上で、もうひとり欠かせないのはやはり恋柱・甘露寺蜜璃。前作の刀鍛冶編では大活躍を見せた彼女ですが、元々恋多き乙女として、柱をはじめ様々な男性にときめく姿が印象的という人も多いはず。
そんな彼女の過去の回想シーンでも、彼と二人で食事に行った時のことが思い出されていましたよね。

Blu-ray『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』1巻(アニプレックス)
普段から大勢の人にときめいている蜜璃。ですがその中でも伊黒と二人で過ごした時間や、彼がくれたチャームポイントの靴下は、彼女にとって少し特別なものでもある様子。
一方の伊黒も、これまでアニメでは比較的他人に辛辣な一面の方が多く描かれていました。そのため原作未読勢の中には、穏やかな彼の姿にちょっとしたギャップを感じた人もいた様子。
原作を読んだ人にとっては、もどかしくもほほえましい二人の両片想いな関係性は、もはやお馴染みでもあることでしょう。蜜璃だけでなく、伊黒もまた彼女に対し特別な想いを抱いている。そんな一面も、彼の素性が語られる中で明らかとなっていきます。
とはいえ、そのように想いを寄せつつも今回のアニメ1話で描かれた、蜜璃の的を得ない痣の説明にちょっぴり頭を抱えてしまうのも、ある意味で非常に伊黒らしいですね。
まさに先ほども触れた、プライベートと仕事はきっちり分ける彼らしい反応です。
明るく朗らかで大勢に好かれる蜜璃と、冷たくシビアでどこか人を寄せ付け辛い伊黒。一見正反対な性格ですが、それぞれをお互いの特別として想い合う二人。彼らのことを思うと、ほっこりしつつも同時に辛く悲しい部分もあり…。
これはきっと筆者だけでなく、原作を読んだ全鬼滅ファン共通の思いでもあることでしょう。
過去の登場シーンを見返すと…伊黒の本心がわかる
この他にも、今後明かされる伊黒の過去を知った上で改めて以前のシーンを振り返ると、ここまでの彼の登場シーンも少し違った印象に見えてきます。例えば最初期の柱合会議での一幕。
思い返せば隊律違反を犯した冨岡に対し、不死川と伊黒は特に厳しく彼に詰め寄っていました。しかし三人の関係を踏まえると、その行動や台詞に納得する人も多いはず。
また無限列車編で炎柱・煉獄杏寿郎の訃報を受けた際も、彼は表情の見えない後ろ姿で、たった一言「俺は信じない」とだけ言い放っています。
実は元々、伊黒は家族を鬼に殺された過去がありました。その時に自分も殺されそうになりましたが、幼い彼を間一髪で助けたのが、実は当時の炎柱だったとのこと。
二十歳前後の彼がまだ子どもだった十数年前。原作ではっきり明言はされていませんが、年月を計算するとおそらく当時の伊黒を助けたのは、煉獄杏寿郎の父・煉獄槇寿郎だったのではないでしょうか。
実際に強さを目の当たりにした昔の炎柱はすっかり酒浸りで、今や見る影もありません。ですが、その意志を引き継いだ息子・杏寿郎に対しては、同世代として尊敬の念や仲間意識も持っていたのでしょう。
伊黒の辛辣な発言の意味。宇髄に対する尊敬の念
そんな彼が鬼に敗れたと聞いた伊黒の悲痛な胸中は、察するに余りあるものがあります。そして遊郭編でも、戦いが終わった後に彼は音柱・宇髄天元の元へ現れていましたよね。
満身創痍の宇髄を前にした時の台詞も、非常に伊黒らしいネチネチとした嫌味なものでした。ですが当然、そんな小言を言うためだけにここへ来るほど柱も暇ではないはずです。

テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編』第1弾キービジュアル
皮肉の印象が強いためやや気づきにくいですが、宇髄夫婦との会話から察するに、おそらく彼は戦闘の報を受け、遊郭まで助太刀のために駆けつけたのでしょう。
タッチの差で鬼殺隊が辛勝したため結果サポートには至りませんでしたが、これはあくまで結果論。もしかしたら彼は味方全滅の可能性も視野に入れつつ、現場へ向かっていたかもしれません。
とはいえそれでも、伊黒の発言はやはり辛辣すぎると思う人が実際は大多数かもしれません。
ですがそんな彼に対し、柱として同僚である宇髄はまったく腹を立てることなく会話を続けている点も、実は隠れた注目ポイントです。時折大人げない一面の覗く宇髄なら、彼の嫌味に怒って反論する可能性もありますよね?
その理由の一端は、こちらも公式ファンブックに書かれた二人のエピソードが関係しているのかも。

Blu-ray『鬼滅の刃 遊郭編』(アニプレックス)
過去に兄弟を自分の手で殺めた凄惨な過去を持つ宇髄ですが、実は伊黒も家族にまつわる凄惨な過去を持つ身。具体的な状況は不明ですが、とあるきっかけで二人はそれぞれの生い立ちを、お互い相手に話したことがあると明かされています。
そんな経緯を経た上で、実は伊黒は宇髄に対し一定の尊敬の念を抱いていた様子。
それを知って改めて二人のやりとりを見ると、互いにある程度相手がどんな人間か知っており、柱としての信頼がベースにある中で、あの会話をしていることがうっすら伝わるのではないでしょうか。
だからこそ宇髄も、伊黒の嫌味に怒ったりはしません。口調こそややキツいですが、彼の言葉は裏返せばいろんな意味で「宇髄に前線を引いて欲しくない」と言っているも同然。

CD『鬼滅の刃』サウンドトラック(アニプレックス)
それに下級隊士の戦力不足が深刻な状況で、柱が二名も欠員することが重大な痛手だという伊黒の主張ももっともです。
だからこそ宇髄もつとめて冷静に、そして現実的に彼との会話に応じているのでしょう。二人の柱同士の、ある意味非常に柱らしいやりとりが垣間見える。そんなシーンが、件の遊郭編のラストではないかと筆者は感じるのです。
徐々に明らかになる蛇柱の秘密…知れば知るほど魅力的な伊黒
今春から放送の柱稽古編で、ようやくその素性が明かされつつある伊黒小芭内。ですがまだまだアニメ派の人にとっては、謎に包まれた部分も多いキャラクターでしょう。
記事内で少し触れた過去の話もそうですが、何より目を引くのは包帯で隠された口元に、オッドアイの瞳という一風変わった外見です。
なぜ彼は口元を隠しているのか?なぜ彼は眼の色が違うのか? また彼が常にお供として連れている白い蛇も、その詳細はいまだアニメでは明かされていません。
これから少しずつ明かされる素顔を知れば知るほど、より彼のことが好きになる。そんな隠れた魅力もまだまだたくさん持っている、要注目人物ともなっています。
(執筆:曽我美なつめ)
■アニメ『鬼滅の刃』キャラクターの魅力徹底解剖【竈門炭治郎&禰豆子、我妻善逸、胡蝶しのぶ、煉獄杏寿郎、鬼舞辻無惨、宇髄天元etc.】https://numan.tokyo/anime/yakmL/
作品基本情報
『テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編』
■スタッフ
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島 晃
アニメーション制作:ufotable
■キャスト
竈門炭治郎(かまど・たんじろう):花江夏樹
竈門襧豆子(かまど・ねずこ)※:鬼頭明里
我妻善逸(あがつま・ぜんいつ):下野 紘
嘴平伊之助(はしびら・いのすけ):松岡禎丞
冨岡義勇(とみおか・ぎゆう):櫻井孝宏
宇髄天元(うずい・てんげん):小西克幸
時透無一郎(ときとう・むいちろう):河西健吾
胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ):早見沙織
甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり):花澤香菜
伊黒小芭内(いぐろ・おばない):鈴村健一
不死川実弥(しなずがわ・さねみ):関 智一
悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい):杉田智和
■コピーライト表記
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
■公式サイト
https://kimetsu.com/anime/
■Twitter
@kimetsu_off
https://twitter.com/kimetsu_off(推奨ハッシュタグ:#鬼滅の刃)