BLレビューサイト「ちるちる」が開催する「BLソムリエが解説する流行BLのトレンド」に潜入! どんどん細分化されるBL作品、現在は大きく8分類化できるのだとか。その傾向を解説してもらいました。
BLジャンルを専門とするレビューサイト「ちるちる」を運営する株式会社サンディアス。そのサンディアスが主催するWEBセミナー「BLソムリエが解説する流行BLのトレンド」が2022年4月12日に開催! BLへの理解をより深めるべく、30代オタク女子ライターが参加してきました。
「ちるちる」が開設されてから約15年、BLに関するデータを収集&解析してきたサンディアスが考察する近年の気になるBL事情について【前後編】に渡りレポート! 前編の今回は、BLの多様化について伺います。
『幼馴染じゃ我慢できない』1巻(フロンティアワークス)
via 『幼馴染じゃ我慢できない』1巻(フロンティアワークス)皆さんが“BL”と聞いて皆さんが想像するのはどのようなものでしょうか。王道甘々モノ、骨太ストーリーモノ、それとも実写BLドラマ?
講師のBLソムリエ・アンリ54世さんによると「2022年現在、BLはひと括りで説明できないほどの多種多様の層(ジャンル、テイスト)に分かれている状態」になっているのだそう。
そのような状況を踏まえ、サンディアスではBLを8分類に分ける“BLメソッド8分類”を作成。分類は簡易的なものでもちろん例外もあるとのことですが、まずは商業BLを構成するという8つの分類をチェックしていきましょう。
あなたはどれが好き?BLメソッド8分類
【1】王道甘々系:一般的BL(ライト層寄り)10代から50代まで、幅広い層から最も人気があり、多くの人に読まれているまさにBLの王道ジャンル。BLを知らない一般層がイメージしやすく、BL初心者の入口にもなっている。(例:『幼馴染じゃ我慢できない』百瀬あん/フロンティアワークス)
【2】ビビッド系:次世代少年漫画的BL
10~20代の若者からの人気がバツグンで、逆に30~50代の上の層はあまり手に取らないジャンル。TikTokなどのSNSで流行になりやすい。アニメや二次創作作品などに触れてきた層に好まれる傾向がある。(例:『跪いて愛を問う』山田ノノノ/新書館)

『息できないのは君のせい』(リブレ)
via 『息できないのは君のせい』(リブレ)【3】青空日常系:少女漫画的BLこちらも幅広い人気を誇るジャンル。さわやか、儚げな作品が中心で、行間を読んだり、雰囲気を楽しむ要素が強い。Instagram系SNSで共感を得やすい。
(例:『息ができないのは君のせい』澄谷ゼニコ/リブレ)【4】アート系:女性誌的BL
こちらのジャンルの作品はBL作品の人気ランキングなどでは上位になりにくいが、アーティスティックな装丁などから、インテリアとして飾って楽しみたいといったおしゃれアイテムとして好まれることも。
(例:『CANIS Dear Mr.rain』(ZAKK/茜新社)
【5】コミカル系:サブカル的BL
コミカルな少年漫画テイストが含まれ、男性でも読みやすいとされるジャンル。男女ともにBL未経験者でも楽しめるため、オススメやすい。(例:『滅法矢鱈と弱気にキス』腰乃/東京漫画社)
【6】骨太系:青年誌的BL
ストーリー重視で、 “読ませるBL”。BLソムリエのアンリ54世さんのようなBL有識者から高評価を得ることが多い通好みの作品が多い。海外ドラマ好きの層に好まれる傾向がある。(例:『囀る鳥は羽ばたかない』ヨネダコウ/大洋図書)

『囀る鳥は羽ばたかない』(大洋図書)
via 『囀る鳥は羽ばたかない』(大洋図書)【7】いにしえ系:一般的BL(コア層寄り)基本は王道甘々系で古くからのファンが手堅く購入しつづけているジャンル。耽美的な少し前のBL作品、BL界隈で“いにしえ系”と呼ばれる作品などがここに振り分けられる。【1】がBLライト層寄りの一般BLなら、こちらはBLコア層寄りの一般BL。(例:『春を抱いていた ALIVE』/リブレ)
【8】フェロモン系:男性誌的BL
性を重視した作品で、設定や細かな違いにこだわる方から支持を得ている。母数は少ないが売り上げは固い。(例:『ヒーリングパラドックス』昼寝シアン/竹書房)

『跪いて愛を問う』(新書館)
via 『跪いて愛を問う』(新書館)こんなに細かい傾向が存在するんですね……アンリ54世さん、もう少し詳しく教えてください!【2】ビビッド系(次世代少年漫画的BL)は私たちアラサーにはあまり馴染みのなかったジャンルのように思えます。
少年漫画的というと『ONE PIECE』や『ドラゴンボール』のようなものでしょうか?

BLソムリエメソッド8分類(腐女子マーケティング研究所作成)
via BLソムリエメソッド8分類(腐女子マーケティング研究所作成)「イメージとしては『呪術廻戦』や『東京卍リベンジャーズ』あたりが近いかもしれません。これらは現在の若い世代の女性に大変人気のあるジャンルで、二次創作をされる方も多いんです。“次世代少年漫画的”というジャンルは、そういった二次創作される方が描くようなBL漫画というくくりで、先に挙げた『呪術廻戦』のようなダークさがある少年漫画的でありつつも女性向けの作品になっている、という意味で“次世代少年漫画的”というジャンル分けになっています」なるほど……。では【5】コミカル系(サブカル的BL)とはギャグやラブコメ作品ということでしょうか?
「というよりは、“BL”を俯瞰で見てパロディ化しているような作品ですね。例えば、BL読者に向けて“BLってこうだよね!”というあるあるネタを楽しむ作品とか、通常は“攻め”であるはずのスパダリを“受け”にするといった、既存のイメージを逆転させて面白がるような作品などを指しています。
コミカルでテンポよく進んでいきやすく、普段からBLを読んでいる人はもちろんのこと、BLに慣れていない人や男性でも割と読みやすい傾向があるジャンルです」

『滅法矢鱈と弱気にキス』(東京漫画社)
via 『滅法矢鱈と弱気にキス』(東京漫画社)『おっさんずラブ』の影響からライトなBLが増加中
BLが多様化していることについては前述のとおりですが、BL界はまだまだ成長の途中で、アンリ54世さん曰く「ここ1、2年で流行の移り変わりがさらに速くなったという印象です」と語ります。筆者個人としても、近年のBLの変化――カジュアル化には驚いているところがあり、その変化の理由が気になるところでした。BL界のここ近年の変化については、「ちるちる」で毎年行われている「BLアワード(※その年のBL界を振り返り、様々な視点からランキング化する企画)」の2020年版と2022年版を比較してみるとわかりやすいそう。これらのランキングに上がった作品を8分類にそって分けてみると、2年前の2020年版は偏りがある結果が出た一方、2022年版ではまんべんなく分布しているといいます。この違いは一体何故なのでしょうか?「2022年になってBLライト層が拡大して増えたという見方が正しいかと思います。4年くらい前まではシリアスで重めな題材のBLが流行っていたんですが、ここ2年くらいで大きく変わってライトなBLが増えました。BLだけどエロがない“ボーイズライフ”というジャンルも近年台頭してくるようになりましたね。
こういった変化は、閉じていたBL界が“外”の流れの影響を受けたからと言えるかもしれません」

Blu-ray『おっさんずラブ-in the sky-』
via Blu-ray『おっさんずラブ-in the sky-』外――すなわちBL業界以外でのBL作品の流行。ピンときた人も多いかと思いますが、やはり大ヒットドラマ『おっさんずラブ』の影響が大きかったのだそう。「『おっさんずラブ』の初回放送当時はキワモノのような扱いを受けていた印象でしたが、だんだんと普通の恋愛ドラマとして受け入れられはじめ、今では普通に一般層にも受け入れられているんですよね。
もともとBL好きではない人たちにも“男性同士のドラマでも面白いものがあるんだなぁ”と思ってもらえるようになったことで、BLライト層の増加という流れができたんじゃないかと個人的には思っています」少し前までは、BLについて大っぴらに話すなんてできない(照)と、閉じた世界で隠れて楽しんでいたものですが、最近では上記のような風潮の変化もあって、“外”にBL情報を出しても大丈夫という流れに。
その結果、若い人たちの中にはBL好きを誇り、腐女子であることをステータスに感じることもあるとのことなので、本当に近年のBL界の変化には驚かされるばかりでした。つづく【後編】では2022年のBL流行傾向をお届けします! BLソムリエも驚いた世代別で異なる傾向とは?
※後編はこちら!
・2022年のBL流行は王道甘々系と骨太系に真っ二つ!世代で異なる理由は“シェアしたい”
https://numan.tokyo/column/OXpzC
(執筆:イケダトモ)<参考>
・第11回BLアワード2020 商業BLの祭典
https://www.chil-chil.net/blAwardRank/y/2020/
・第13回BLアワード2022 商業BLの祭典
https://www.chil-chil.net/blAwardRank/y/2022/■2019年BL流行予想は”スパおじ攻め”と”スパダリ受け”!? ヒットの理由と注目作品を聞いた
https://numan.tokyo/column/FXyPn
■BLコミックの流行ジャンルを振り返り!2016年は子育て、2017年はショタ攻め…今年は?
https://numan.tokyo/column/qZnAh
■平成から昭和、腐女子はどう変わった?BL業界「SNSで新たな需要が日々発見される時代に」
https://numan.tokyo/column/0mxEG
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