「推しキャラの髪型・髪色にしてみたい」
一度は考えたこと、ありませんか?
numan編集長の筆者はもちろんあります。実は先日、そんな夢を叶えてきちゃいました。
『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』に感化され、オーダーした髪色。完璧な再現度です。
そんな全オタクの夢を叶えてくれるのは、東京・渋谷にあるヘアサロン「Wille(ヴィレ)」。アニメ、ゲーム、漫画、VTuber……さまざまなカルチャーの「推し」を独自の技術で表現してくれるクリエイティブサロンです。
このお店の代表を務めるのは、幼少期からアニメやアイドルなどのオタクカルチャーに魅了されてきた志賀尚之さん。
実はこの方、2016年に『ラブライブ!』の南ことりちゃんの髪色“ことりベージュ”を再現し、SNSで大きなバズを生み出した張本人。二次元の髪色を三次元に再現する「2.5Dカラー」の生みの親でもあります。
オタクたちの要望に応えた施術をするだけではなく、『ブルーロック』や『Paradox Live(以下、パラライ)』とのコラボも果たすなど、“オタクに優しすぎる”ヘアサロンと言っても過言ではないWille。
SNSでWilleと志賀さんを発見し、「推し活メディアを運営している身。推し活に特化したヘアサロンから見る“今の推し活ヘア事情”を調査したい!」と思い立ったというわけです。
そして、筆者は考えました。「施術時間に取材ができてしまうのでは?」「お仕事している姿を見ることもできて一石二鳥なのでは?」と。
そこで今回、あの美しい髪色が実現されるまでの施術の様子をレポートしながら、“推し活ヘア事情”に迫ったインタビューをお届けしていきます。
ポスター、アクスタ、MV、音楽…『パラライ』一色の店内!
渋谷駅のハチ公前口から徒歩5~6分、明治通り沿いに立ち並ぶビルの2フロアに入っているヘアサロン・Wille。
下の階は一見普通の美容院なのですが、上のフロアに到着すると店内の様相は一変。

ちょうど足を運んだタイミングが、『パラライ』コラボの会期中(2024年4月13日~5月19日)。
店内には『パラライ』のポスターやグッズが飾られ、テレビに流れている映像は『パラライ』のMV、流れているBGMも『パラライ』の楽曲と、とにかく『パラライ』一色!

『パラライ』のぬいやアクスタがズラッと敷き詰められたクリアケースとMVが流れる店内設置テレビ。コラボ期間中でない時は、クリアケースにはアニメキャラのフィギュアが並べられ、テレビにはアニメが流れているそうです。
ロッカーに荷物を詰め込み、イスに通され、店内をキョロキョロしながら少し待っていると、施術担当であるWille代表・志賀さんが登場。


本日担当する志賀です。よろしくお願いします! どんなスタイルをご希望ですか?
取材を申し込む際に、「カット+ケアハイブリーチカラー+ペールトリートメント」と施術メニューはお伝えしていたため、早速希望の髪色や髪型を細かくヒアリング。
実はこの時、特定の推しがいないという致命的な事態が発生。たまたま直近見ていたのが『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-(以下、EPISODE 凪)』であることを伝えます。
さらに、仕事に追われ過ぎて3ヶ月くらい美容院に行くのを怠っていたため髪色はかなりのプリン状態。条件的に無理難題であることは重々承知……。しかし、志賀さんはこのように返してくれました。


わかりました! まずはブリーチ後の髪の様子を見て、『ブルーロック』キャラの髪色の中から入りそうな色を一緒に選びましょう!
ぼやっとしたオーダー、髪の状態にもしっかり寄り添ってくれることに感動を覚えます。
ということで、施術スタート!
VTuberや『鬼滅の刃』キャラのカラバリ豊富な作品が美意識高めの推し活女子に人気!
ブリーチの施術をしていただいている間に、Willeへ足を運んでいるお客さんの推し活事情に迫ります。

最初に根本部分をブリーチ。無事にプリンのカラメル部分がなくなりました

まずはWilleの客層について教えてください。

8割は女性のお客さまです。コアの年齢層は、10代後半から20代。
30代以上のお客さまもいらっしゃるので年齢層は幅広いと思います。
ただ、ある程度自分でお金を稼いでいて、推し活に惜しみなくお金と時間を使える年齢、という意味で10代後半から20代の方が中心ではあります。

何をきっかけにWilleへ足を運ぶ方が多いですか?

SNSで見かけてくださった人が多いです。特に、Instagramから知っていただいている方が多いですね。

そんなお客さんからのオーダーで、今1番多い作品やジャンルはありますか?

最近は本当にさまざまな作品やキャラのオーダーがあるので一括りにするのがすごく難しいのですが…ただ、VTuberの髪色のオーダーはかなり多いと思います。カワイイ髪色が多いんですよね。

また、VTuberが流行る前は『鬼滅の刃』キャラのカラーのオーダーがすごく多かったです。
最初にオーダーがあったのは(我妻)善逸。(嘴平)伊之助や(甘露寺)蜜璃ちゃんのヘアカラーも人気でした。

あとは、『ヒプマイ(ヒプノシスマイク)』や『ツイステ(ディズニー ツイステッドワンダーランド)』ですかね。

ヘアカラーのバリエーションが多い作品はオーダーが入りやすいので、人気が出そうなコンテンツを事前に調査・予想して、オーダーがあった時に対応できるように、かつ話ができるように準備しています。

素晴らしい心意気……。とはいえ、私のように「この作品は好きだけど、箱推しで特定の推しがいない」という方もいると思います。
その場合は、どう対応することが多いんですか?

こちらからいくつか候補を提案していますね。
イメージが湧いていないから悩んでいる方がほとんどなので、ヒアリングしつつ「どっちのヘアカラーがしっくりきますか?」と、具体的な色見本やデザイン例を見せるようにしています。

前回のヘアカラーの残留をできる限り失くすため、今度は表面部分をブリーチしていきます

逆に、実現が難しいヘアカラーや配色を要求されることもありますか?

基本的に、どのヘアカラーの再現も難しいと思いながら施術しているのですが、「そんな中でも特に難しい」というものはあります。例えば、全く異なる3色を使って配色してほしいとか。
「『遊戯王』の(武藤)遊戯の髪色と髪型にしてほしい」とオーダーされた時は、かなり悩みました(笑)。

それはまた高難易度な……(笑)。

その場合は、カラーを縦の層に入れるのか、横の層に入れるのか、インナーに入れるのか、顔回りに入れるのか、毛先に入れるのか、グラデーションにするのか……などさまざまなバリエーションを考え、まったく同じにできなくてもお客さまが納得できる最適解を導き出すようにしています。
数年前に比べるとカラー剤が進化していて、再現できるヘアカラーが増えてきたので、絶妙な色味にも対応できるようになりました。

また、推しカラーではないのですが、先日「木から落ちて1週間くらい経った桜の花びらの色にしたい」と花びらを持ってきて見せてくれた方がいて(笑)。たしかにかわいい色なのですが、すごく絶妙な色でもあったんですよね。

そんなオーダーの仕方もあるんですね……!

さすがに花びらを持ってきた方は初めてだったので驚きました(笑)。それも何とか再現しましたよ。
僕は「NO」を言わないことをモットーにしているので、どうにか要望を叶えるために毎回試行錯誤しています。

いろいろお話を聞いているうちに、キレイな金髪へと生まれ変わりました! 美しい……。
推しの存在が美意識を高める「グッズを買うのと同じ温度感で自己投資」
金髪になったところで、インタビューを中断して、どの推しカラーにしていくかを話し合います。

キレイに色が抜けたと思うから、真っ白とかでなければどの色も入ると思いますよ。とはいえ、『EPISODE 凪』主人公・凪(誠士郎)のヘアカラーはシルバーっぽい白ですし……どうしましょうか?

もう一人のメインキャラである(御影)玲王のヘアカラー(紫)ならどうですか……?

いけると思います! あと、全頭で白は難しいですが、インナーに凪の概念を入れるとかはできそう。やってみますか?

ぜひお願いします!

玲王のヘアカラーである紫のカラー剤が塗られていきます

ヘアカラーがようやく決定したところで、インタビューを再開していきたいと思います。
今回、凪と玲王の概念ヘアカラーにしましたが、同じように複数人の推しカラーをオーダーする方もいるんですか?

もちろんありますよ! 前から見た時の印象で決まるので、複数人の推しカラーをオーダーされた場合は、「正面からどうやって色が見えてほしいか」をヒアリングします。

「真ん中から半分は何色、もう半分は何色」とオーダーがあった場合は、どちらを右か左にするかが重要な場合もあるので、そこまで聞くようにしています。「表面はこの色、インナーはこの色」という場合も同様ですね。

人によっては色の配置も重要なんですね。

そうなんです。お客さまによってこだわるポイントはそれぞれ。だからこそ、ヒアリングはかなり重要な工程です。

表面に紫のカラー剤を塗り終わったら、顔回りに白のカラー剤が塗られていきます

志賀さんがWilleで多くのオタクたちの夢を叶えてきた中で、“オタクたちにとっての推しの存在”をどのように感じていますか?

自分自身も推しがいるので「推しを見ると体力が回復する」と常に思っているのですが、それと同じように推しの存在によって“美容意識”が高まっていると感じます。
恋人ができるとかわいくなったり、キレイになったりするのと近い現象が起きるんですよね。

キレイな姿で推しに会うためにWilleのようなヘアサロンへ来ることはもちろん、日常的なところでいうとシャンプーやトリートメントを少しお高いものに変えてみるとかもそうですよね。
好きな人に会いに行く感覚で推しのために頑張っている。いくらイベントで一瞬しか接触できなくても、ライブで席がステージから遠くても「キレイにしたい!」と思うんですよね。

カラーが無事終わり、カットへ。「実はカラーよりもカットが好きなんです」と意外なことを話す志賀さん

そして、そこに対してお金を落とすことに躊躇しない。グッズを買うのと同じ温度感で、自分を磨くために投資をしている。「推しの存在ってすごいな!」と常々思います。

素敵なお話、ありがとうございました!

そんなこんなで完成! 素晴らしい『EPISODE 凪』概念ヘアになりました。

施術代:カット+ケアハイブリーチカラー+ペールトリートメント+ロング料金=38,500円
インナーすべてを白にしてしまうと、シャンプーが大変(紫が侵食してしまうので…)とのことで、イヤリングカラーにしてもらいました。紫からチラリと覗くシルバーホワイト?がとってもかわいい。
何より生活習慣(シャンプー)のことも考えて、デザインを考えてくれるなんて、さすがです……。
筆者の髪の状態がなかなか酷かったため、施術時間は約5時間とかなりの長丁場に。
長居してしまった申し訳なさもありつつ、丁寧に施術していただけてとってもありがたかったです。おかげで、ウィッグではなく地毛でアニメキャラの髪色になるという夢が叶いました。
オタクの夢を夢で終わらせないのが推し活ヘアサロン
小学生の頃、『カードキャプターさくら』の(木之本)桜ちゃんに憧れて、ショートボブ+サイドのもみあげを触覚にするなんてことをしていた筆者。当時は携帯もスマホもなかったので漫画を見せて「この髪型にしてください」とオーダーしていました。
まだアニメが市民権を得ていなかったため、美容師さんに伝えるのがとても恥ずかしかったことを今でも覚えています(「痛い子だ」と思われていたかもな……)。
しかし、今は美容師さんに限らず、アニメ、漫画、ゲームなどのカルチャーに自然と触れている人が多いように感じています。
どのヘアサロンに行ってもアニメや漫画の話が当たり前のようにできるのは大きな変化です。
加えて、奇抜な髪型や髪色が珍しくなくなってきました。「少しでも推しに近づきたい」と思っていた人たちが息をしやすい時代になりましたよね……。
そしてそれは、志賀さんのような人のおかげでもあったのかもしれません。オタク心のわかる人たちが流行の最先端にいる業界へ進出し、オタクたちの夢を叶えている。

今回筆者も夢を叶えてもらい、よりそんなことを感じました。
今推しがいて「いつも推しの存在を感じたい」「推しに会うために推しと同じ姿になりたい」と思っている人、私のように「推し作品のキャラになりたい」と思っている人は夢を夢で終わらせず、Willeに足を運んでみてはいかがでしょうか。
>>numan公式Instagramでも当日の様子を詳細にレポート!
店舗情報
Wille(ヴィレ)
■所在地:
東京都渋谷区神宮前6-23-4KSビル2F,3F
■TEL:03-6433-5532
■営業時間平日:11:00~21:00 土日祝:10:00~20:00(定休:水曜日)
■アクセス
<東京メトロ 渋谷駅>
渋谷駅13番出口徒歩5分
<東京メトロ 明治神宮前駅>
明治神宮前駅7番出口徒歩5分
■公式X(旧:Twitter):https://x.com/willehair
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