もっとも有名なのは「タバコの灰」に関するホームズの研究でしょう。
くれぐれも「たかがタバコ」と思うなかれ。タバコのような嗜好品には、その人の習慣が反映されています。この銘柄が好きなのは確率的に男性が多い、匂いが強めの品種なら接客業ではないだろう、あるいはそもそも国内で売っている銘柄ではないので、外国人か、つい最近海外を旅行したはずだ、という具合です。事件現場にタバコの灰があるだけで、それだけのことがわかるのです。
そんなホームズ自身、朝食前にパイプを吸う習慣がありましたが、もったいなかったのか、前夜の吸い残しの葉っぱを詰めていました。当然、味はかなりまずいはず。そのエピソードから「ホームズは味音痴」という説も生まれています。
◆ケトル VOL.29(2016年2月12日発売)