コアラが食べるユーカリは全部で30種類ほど。埼玉県こども動物自然公園のコアラ舎では、その中から1日に5、6種類を用意しています。その理由は、コアラが今日どのユーカリを食べるのか、飼育員の方々にもわからないから。コアラはユーカリがほかの動物に取られないことをいいことに、その日の気分に合わせて、かなり選り好みをして食べるのです。
実際に食事の時間に観察してみると、たくさん用意したユーカリの葉を、コアラがひとつひとつ嗅いでいることがわかります。そこに自分が食べたいユーカリがなければ、いくらお腹が空いていても関心を示しません。人間には何がどう違うのかわからないのですが、同じ種類でも、ある葉は食べなかったり、別の葉はむさぼるように食べたりします。昨日は食べなかったのに、今日は食べているなんてこともしょっちゅうです。
しかも、毎日たくさんのユーカリをそろえておくのは大変。
これほど苦労しているというのに、コアラは今日のユーカリを気に入らないと、ぷいっと横を向いてしまい見向きもしません。それでも愛らしい姿を見ていると、飼育員の方々も、「かわいいからしょうがないな」と思ってしまうそう。どれだけグルメでも許される、まさに「かわいいは正義」を体現している動物なのです。
◆ケトル VOL.33(2016年10月14日発売)