今回、紹介するのは、「わよう書道会」の書道の手本です。従来の書道の手本は、半紙に文字数で均等に配置した「縦書き」ですが、わよう書道会がサイトに公開(無料でダウンロード可能)した新しい手本(以下、新しい手本)は、従来の楷書より柔らかなデザインで、課題はもちろん名前まで横書きの手本もあるのです。
書道と言えば、まず間違いなく縦書き。ところが、「わよう書道会」を主宰する書家・うどよしさんは、この常識は思い込みだと語ります。“横書き書道”の手本を制作したうどよしさんに話を聞きました。
「今回、提供したのは全国でも大手のJA共済の書道コンクール。その規定には、半紙の縦横サイズの指定はありますが、課題が決まっているだけで、文字の配置は何も制限がありません。教科書や板書は横書きが主流なのに、書道では、縦書きが常識という思い込みがあります。現在、社会では自由な発想が求められているのに、子どもには、枠内で均等に文字をはめ込む書道の選択肢しか提供しないことは、筆で文字を書く楽しみやその可能性を妨げているのでは? と考えました」
これまでの常識を破壊するうどよしさんの試みは、多くの反響を呼びました。うどよし先生がお盆前にアップした新しい手本は、1週間で3500件以上のアクセスを集める人気コンテンツとなっているそうです。
「指導者の先生は、子どもたちに『自分の頭で考えて自分で行動しろ』と指導するそうです。しかし、私達指導者側は、それができているのでしょうか? 書道の手本1つをとっても、自分の頭で考えていたなら、柔軟な発想を持つ子供から縦書き以外の毛筆が発生しないことに疑問を持ち、『大人が邪魔をしている?』という考えに至るべきです。
しかし、誰も提案をしてないので、私の具体的な行動として、具体的に新しい手本を作成し、アップロードして反応をみようと思いました。そうしたところ、非常に大きな反響となりました。私達が提供した手本は小中学生向けですが、この反響は、私達、業界の指導者に『自分の頭で考えて自分で行動しろ』というメッセージではないかと感じます」
新しい手本は定番の楷書ではありません。楷書の特徴である「とめ、はね、はらい」がありません。2016年2月末に文化審議会国語分科会漢字小委員会が「字の細部に違いがあっても,その漢字の骨組みが同じであれば、誤っているとはみなされない」という指針を示しました。漢字に「正しい筆順が存在しない」という事実が、皆さんに中々浸透しないように、「とめ、はね、はらいが必須」というのは私達の勝手な思い込みのようです。
しかも、この方針は、私達が生まれる前の昭和24年「当用漢字字体表」以来、変わってないのです。つまり、文化庁は、昔から、もっと文字に自由度を認めようという方針があるのに、無視し続けているようなのです。
新しい手本を見ると、文字デザインにばかり目が行きますが、今まで枠内に入れるだけだった書道に、「構図を考える」という新たな課題の提案をしています。これは、芸術分野ではもっとも重要な要素です。
そして重要なのは、それを見た指導者側、審査側が「前例がない」「常識はずれ」と固定概念に捕らわれ拒否せず、公平な視点で見てほしいと思います。夏休み明けの教室の後ろに、横書きや均等ではない構図の書道が並んでいたら、もしかしたら、新しい手本の影響かもしれません。今は小さな一歩ですが、将来振り返った時に、大きな一歩になるかもしれません。
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