「昔は1部と2部でディレクターが一緒だったので、僕のことなんてほったらかしですよ。放送作家もいない。だから原稿を書いて、選曲して、編集してって全部を自分でまかなってました。その中でいろんなことを学びましたね。ゲストにインタビューするときは自分の声が被らないようにすると聴き取りやすいし、編集もしやすいとか」
今でこそANNのパーソナリティは芸人やミュージシャンばかりだが、当時は局アナがパーソナリティを務めることもあった時代。
「ホテルの宣伝のために上司から番組をやれと言われて、スタッフと一緒にスイートルームに入ったんですけれど、夜中の3時だから眠くてしょうがない。それで、ふと窓の外に目を向けると街の灯りが見えたので、『自宅で聴いている人は電気を点けたり消したりしてくれ』と言ったんです。そしたらパパッって反応があって。これは面白いと、『男性は1回、女性は2回』とか、いろんなことを質問しながら灯りの点滅で会話する放送をしたんです」
面白い放送をやったという確信があったものの、ニッポン放送に帰ると「何をやっているのか分からなかった」と言われてしまった上柳。しかし翌週の放送には、「私は和歌山でやってました」「博多にいたけれど、点滅させている家があった」と全国からたくさんのハガキが届き、「ラジオを聴いている人の頭の中に映像を呼び起こすことが、パーソナリティにとっていかに大事か」を学んだそうだ。
◆ケトルVOL.45(2018年10月12日発売)