「初めは渋谷系云々なんてことは意識してなかったんですよ。そんな言葉もなかったし。ただ、フリッパーズも、ピチカートが88年に出した『ベリッシマ』の時も頭にあった気分は、アンチロックでした。昭和の終わり、平成の始まりの時期は、ロックもかなり成熟して、音楽的にもファッション的にもルーティン化していたんです。
それに対して、僕は『そんなものはロックじゃねえ』って思っていた。時代の流れか、小西康陽くんや小山田(圭吾)くんや小沢(健二)くんは、同じようなアティチュードを持っていたんです。だから、それをデザインとして昇華するにはどうしようかなというのは、常に考えていましたね」
音楽が産業として急成長を遂げた昭和を経て、ロックといえば、アイドルといえば、ポップスといえばという大衆イメージも固まってきていた80年代末。既成概念を壊すことが、そもそもの始まりだったということです。そこで信藤さんが何よりも大切にしたのはユーモアだったとのことですが、それはどういう意味なのでしょうか。
「素直にそのまま……ではなくて、捻ってベクトルを変えて表現するのが面白いと。
DJというか、ヒップホップというか、組み合わせには当人の審美眼が必要だし、かたちを変えて作品にするにはユーモアのセンスが必要になってくる。今考えると、時代の気分と僕の気分も合っていたんですよね。だから若い人たちと一緒にできた。ロック的な言語は使わずにやるぞって」
ロック的でないことによってロックを体現しようとした信藤さんですが、それが実現できたのは「それが許されたから」だと言います。
「仕事をするアーティストにも恵まれたんですね。捻ったデザインなんていらないと言われたらそれまでじゃないですか。でも、一緒に面白がってくれたんです。僕に仕事がたくさん舞い込むようになったのは間違いなく彼らとの出会いのおかげだし、当時もう40歳ぐらいだった。
本人たちの才能はもちろんのこと、出会いとタイミングの良さがムーブメントの広がりに一役買ったのも間違いないよう。凝り固まった概念を壊すロック精神が、音楽とシンクロしたデザインを生んだのでした。
◆ケトルVOL.48(2019年4月16日発売)
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