〈教育基本法「改正」から10年を経て、日本の教育は一層「人材」養成に重きを置き、一定の子どもたちが「問題のある子ども」、「困難を抱えている子ども」へと分類されていく。
「できる―できない」の軸で人びとを判断しようとする価値観は、それに基づく格差を正当化するだけでなく、むしろ平等を実現していると見られている。戦後最大の殺人事件と言われた相模原障害者施設殺傷事件と、始業式の日に子どもの自死が最多となる「9月1日問題」。2つの深刻な事態に共通する問題こそ「能力主義」なのである〉
同書は、人々が能力主義を疑わずに受け入れるメカニズムを解明し、その呪縛から解かれたあとの社会を想起するものだ。著者は池田賢市、市野川容孝、伊藤書佳、菊地栄治、工藤律子、松嶋健の6名。教育学、社会学、教育社会学・教育経営学、文化人類学・医療人類学、編集者・ライター、ジャーナリストと、多様なジャンルの研究者らが、
「『能力論』をめぐる基本的問い」
「交換の論理と『能力』」
「能力主義を問い直す」
「教育改革の「闇」ともうひとつの物語 ~対話的空間を創る試み~」
「つながりの中で生きる ~スペインの試みから考える~」
「近代を生きるための根本課題 ~人間と社会の限界性と向き合う~」
という6章で、「人間する」が奪われない未来を想像する。
『能力2040 AI時代に人間する』は2020年4月24日(金)発売。1200円+税。