人びとが「能力主義」を疑わずに受け入れるメカニズムとその呪縛から解かれた未来について分析した『能力2040 AI時代に人間する』(太田出版)が、4月24日に発売された。

〈教育基本法「改正」から10年を経て、日本の教育は一層「人材」養成に重きを置き、一定の子どもたちが「問題のある子ども」、「困難を抱えている子ども」へと分類されていく。
かれらは「支援」の対象となり、排除された上で現状の価値尺度への適応を求められる。これは国際的な動向でもある。

「できる―できない」の軸で人びとを判断しようとする価値観は、それに基づく格差を正当化するだけでなく、むしろ平等を実現していると見られている。戦後最大の殺人事件と言われた相模原障害者施設殺傷事件と、始業式の日に子どもの自死が最多となる「9月1日問題」。2つの深刻な事態に共通する問題こそ「能力主義」なのである〉

同書は、人々が能力主義を疑わずに受け入れるメカニズムを解明し、その呪縛から解かれたあとの社会を想起するものだ。著者は池田賢市、市野川容孝、伊藤書佳、菊地栄治、工藤律子、松嶋健の6名。
教育学、社会学、教育社会学・教育経営学、文化人類学・医療人類学、編集者・ライター、ジャーナリストと、多様なジャンルの研究者らが、

「『能力論』をめぐる基本的問い」


「交換の論理と『能力』」


「能力主義を問い直す」


「教育改革の「闇」ともうひとつの物語 ~対話的空間を創る試み~」


「つながりの中で生きる ~スペインの試みから考える~」


「近代を生きるための根本課題 ~人間と社会の限界性と向き合う~」

という6章で、「人間する」が奪われない未来を想像する。

『能力2040 AI時代に人間する』は2020年4月24日(金)発売。1200円+税。