1994年『漫画ゴラク』にて連載を開始し、最新56巻が絶賛発売中! 累計発行部数800万部を記録するラズウェル細木の長寿グルメマンガ『酒のほそ道』。主人公のとある企業の営業担当サラリーマン・岩間宗達が何よりも楽しみにしている仕事帰りのひとり酒や仕事仲間との一杯。
「酒つまみを旨くし つまみ酒を旨くす 酒あってのつまみ つまみあっての酒」

宗達にしては珍しい名言らしい名言で、まるでどこかの酒場のトイレにでも貼ってありそうだ。よく見るとコマのすみに「宗達名言集より なんちて」と書いてあり、その名言集、ぜひ読んでみたい! と思ったが、よく考えてみればこの連載がそれそのものだった。
酒飲みにはいろいろなタイプがいて、つまみがないと酒の楽しみが半減してしまうという人もいれば、飲みはじめると基本的に食べないという人もいる。ただし、居酒屋にも暗黙のマナーはある。それは「最低でもひとり1品と1杯以上は注文をするべき」というものだ。ところが最近、料理だけ食べて飲みものは水ですませるとか、大人数で来て1品だけを頼んでシェアする、なんていうちょっと困った人々もいるらしい。
そんな話を常連たちが交わすなか、生ビールをぐいぐい飲みながら「酒とつまみは切っても切れない関係だ たのめばいくらでも出てくる環境で酒を頼まないなんてオレにはどうしても理解できん」と言いきってくれる宗達が頼もしい。
「あのねー 酒場には上も下もなくてみんな平等なの わかる?」
『酒のほそ道』46巻第13話「ファミレス呑み」©ラズウェル細木/日本文芸社人気のイタリアンファミレスチェーンでひとり飲みを楽しんでいる宗達。「結局いつも同じもの頼んじゃう」と言いながら、青豆温サラダ、イカのパプリカソース、辛味チキン、エスカルゴなどをつまみに、生ビールから白ワインのデカンタへと飲みすすめ、幸せそうだ。
ただし、どこかいつもと様子が違うようにも見える。
そこへなじみの飲み屋でよく顔を合わせる常連たちが入ってきたから大変で、見つかってしまった宗達はわかりやすくあわて、ほほを赤らめる。それを見たメンバーのひとり、カヨは、席に合流して説教をはじめるのだが、その内容がもっともすぎ、宗達はただただ「ハイ…」と答えるばかりなのだった。
酒に対する信念をきちんと持っているところ、さすが酒ほそ常連キャラクターだ。
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次回「小さなシアワセの見つけかた『酒のほそ道』の名言」第47回(漫画:ラズウェル細木/選・文:スズキナオ)は5月16日みんな大好き金曜日17時公開予定。
Credit: 漫画=ラズウェル細木/選・文=パリッコ