1994年『漫画ゴラク』にて連載を開始し、最新57巻が絶賛発売中! 累計発行部数800万部を記録するラズウェル細木の長寿グルメマンガ『酒のほそ道』。主人公のとある企業の営業担当サラリーマン・岩間宗達が何よりも楽しみにしている仕事帰りのひとり酒や仕事仲間との一杯。
「おお パリパリだった海苔がスライスチーズと密着するや 見る見るしっとりしていくぞ」

3軒の酒場をハシゴしつつ、「チーズサラミ」「海苔チーズ」「チーズの串揚げ」と、それぞれの酒場でチーズ系つまみを頼む宗達。
ごきげんな顔で語るポイントは、使われているのが「プロセスチーズ」であること。ナチュラルチーズを加熱して熟成を止めたプロセスチーズは、そのクセのなさが、むしろ気軽な酒のつまみにいいという持論のようだ。
帰宅し、その夜のシメに市販のチーズちくわを食べてみると、意外にも本格派のカマンベールチーズ入り。「ったく けしからんなあ よけいなもの入れよって~」と言いつつも、なぜか嬉しそうなのだった。
ところで今回の名言。このシーンからしばし、ひとり海苔チーズ論を語りながら嬉しそうに飲む宗達。酒場でたまに見る、スライスチーズを海苔で挟んでカットしただけのごくごく簡単なつまみにも、こんなにも饒舌な感想を語れる酒飲みって、やっぱり幸せな人種だ。
「いやあいい季節だなあ 暑からず寒からずで」
『酒のほそ道』52巻第5話「夏前の豹変」©ラズウェル細木/日本文芸社ビアガーデンやテラス席のあるレストラン、もしくはしっかりと準備をして臨むバーベキューなどのオープンエアーで飲む酒はもちろん素晴らしい。けれどもそこまで大げさでなく、公園のベンチや芝生の上で飲む気軽な一杯だって、それに負けないくらいに極上なものだ。
広々とした公園のベンチで缶ビールで乾杯する斎藤と宗達も、「一年の大半は暑いか寒いかのどっちか 春と秋が短くなってるよな」「まあこの貴重な一日を存分に楽しもう」と語り合っている。
世の中の多くの人にとってあまり興味のない話かもしれないが、暑からず寒からず、ただ外にいるだけで、そしてそこで酒を飲めるだけで幸せな日というのは、実は初夏と初秋あたりにわずかしかない、1年のうちでとても貴重なものなのだ。
ぜひ感覚を研ぎ澄まし、そんな日を無駄に過ごすことのないよう、いい酒を飲んでいきたい。
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次回「小さなシアワセの見つけかた『酒のほそ道』の名言」(漫画:ラズウェル細木/選・文:スズキナオ)は7月4日みんな大好き金曜日17時公開予定。
Credit: 漫画=ラズウェル細木/選・文=パリッコ