不動産を相続した時、何をどうすればいいのでしょうか。本連載では不動産相続の専門家・ともりまゆみ氏が、失敗事例をもとに相続のポイントを説明していきます。

● 相続後に売却に関する税金を確認 ●
 相続で取得した空き家を売却する際にも譲渡所得税は課税されます。しかしいくつかの要件を満たすことで税金がかからない、または税金を低く抑えることが可能となります。(文・ともり まゆみ)
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概要・経緯
 相談者は被相続人の長女。5年前、母の相続が発生し、それまで母が1人で住んでいた離島の住まい(一戸建て)を長女が相続した。いずれは売却しようと思っていたが、知り合いに頼まれ2年間は賃貸に出すことになった。相続から5年がたち売却を検討し始めたところ、思っていた以上の税金がかかることが分かった。
【相続関係図】

 

どうなった?
 不動産の売却は譲渡益に対し20%(所有期間による)の税金がかかるが、相続した不動産について幾つかの要件を満たせば税金がほぼかからないと判明。しかし相談者の場合、賃貸に出してしまったことや、売却が相続から3年以上たっていることから、数百万円の税金を納めることになった。
どうすべきだった?
・相続後に売却に関する税金を確認する
・不動産譲渡課税の軽減措置の適用要件を確認する
売却した人は確定申告忘れずに
 まず最初にお伝えしたいのは、今年不動産を売却した方は来年の2月中旬~3月中旬に確定申告が必要になること。会社の年末調整などとは関係なく、個人で行う必要があるので、該当される方はご準備ください。
 沖縄県は土地の価格が年々高騰していることから、不動産の売却の際に利益が出やすい状況が続いています。売却ばかりに目がいき、その後の税金について理解が追いついていないため、税金が軽減される特例等を活用できない方も多いようです。

相続した空き家に限定
 通常、不動産を売却すると、その譲渡所得(利益)に対して20%または39%の税金(不動産譲渡課税)がかかります。譲渡所得とは売却価格から、売却にかかった費用(登記費用、仲介手数料、修繕費用など)と不動産の取得費(土地の購入価格、建物の減価償却後の残存価格など)を引いた額をいいます。例えば4000万円で売却し、売却費用が500万円、不動産の取得費が1500万円の場合、4000?(500+1500)=2000万円が譲渡所得となります。税率は不動産を所有している期間が5年未満である場合は39%、5年以上である場合は20%となります。
 しかし、相続した空き家の場合、この税金を払わずに済む可能性もあります。譲渡所得が1000万円以上で数百万円を納税した今回の相談者も、「相続した空き家を売却したときの3000万円特別控除」が利用できれば、この税金をゼロにすることもできました。
 この制度を利用するには、①相続してから3年以内に売却②相続が発生してから売却までに賃貸等に出さない③昭和58年(1983年)以前に建てられた④相続が発生するまで相続人が居住(施設や医療機関へ入所されている場合の特例あり)などの要件を全て満たす必要があります。相談者の場合、「売却が相続発生から5年以上たっていた」「その間賃貸に出していた」ことで、この特例を利用できなくなってしまいました。 不動産の売却はその額が大きいことから、さまざまな税の軽減特例が準備されています。確定申告しないと軽減特例が利用できないばかりか、延滞税や無申告加算税などを上乗せして支払わなければなりません。そうならないためにも今年不動産を売却した方は、自分にどの特例が適用されるのか専門家にご相談を。
用語説明 「相続した空き家を売却したときの3000万円特別控除」
 相続で空き家を引き継いだ人が、その空き家を売却して得た所得から最大3000万円が控除される軽減特例。
文中内で挙げた以外にもいくつかの要件があり、全て満たしていれば売却翌年の確定申告で特例適用を申告することで利用できる。
[執筆者プロフィル]

 

友利真由美/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。
ともりまゆみ事務所
https://tomomayu.com/
電話=098・988・8247
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