最長9連休となった年末年始。那覇空港は帰省客のほか、国内外の観光客でごった返していた。

 新型コロナの5類移行から約1年半。県内の観光産業は再び活況を取り戻している。
 国内からの観光客数はコロナ前を上回る水準に。海外客も順調に増え、沖縄観光コンベンションビューローは昨年の入域観光客数の見通しを965万4500人と発表した。
 過去最高だった2019年の95%まで回復している。
 これに伴いホテルやスポーツ・レジャー施設の収益が増加。観光客をはじめ堅調な県内消費を背景にスーパー、デパート、コンビニなども好調に推移している。
 基幹産業の観光が県経済をけん引した形だ。
 今年は本島北部に大型テーマパークの開業を控えており、さらなる観光客の増加が見込まれる。観光関連需要の高まりによる波及効果も期待される。
 鍵は、こうして生まれた利益を県民一人一人に還元することだ。
 全国的な賃上げの動きを受け、昨年は県内でも最低賃金が初めて900円台に乗り952円となった。

 ただ、実質賃金はマイナスが続く。24年10月の県内の実質賃金指数(20年を100とする)は前年比3・8ポイント減の75・4だった。
 全国と比べても落ち幅が大きく、物価上昇に全く追い付いていない。
 相応の賃上げを継続することこそが求められる。
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 昨年は小売業大手の出店も相次いだ。これらの店舗では全国並みの時給による雇用を実現。他の小売業の時給引き上げの呼び水ともなっている。
 気がかりなのは、拡大基調にある景気の波に乗り切れない企業の存在だ。
 観光関連の業種が売り上げを伸ばす一方、原材料の上昇や人手不足により中小・零細企業の多くが景況について「悪化した」としている。
 適正な価格転嫁による賃上げで人材を確保し労働生産性を高める工夫とともに、政府の支援が求められる。
 県は観光を軸に、農林水産や商工など産業横断的に「おきなわブランド戦略」の浸透を図ることで地域の稼ぐ力の強化を目指している。
 経済の好循環を広く他産業にも回す仕組みづくりが必要だ。

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 観光客の増加に伴い課題となるのがオーバーツーリズムだ。住民生活や自然環境に負の影響をもたらすことがあってはならない。
 県や自治体は宿泊税の導入を進める。地域を守る施策の充実が急がれる。
 交通体系整備の検討も急ぐべきだ。
 戦後の米軍統治の影響を受け県内は今も車社会だ。渋滞は経済活動の壁となるほか、暮らしにも直結する社会問題となっている。
 狭あいな島では道路の整備にも限界がある。
 経済振興の基盤となる新たな公共交通の整備も必要となろう。
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