保守系候補が三つに分裂した中で、「オール沖縄」勢力として一本化したにもかかわらず勝ち抜けなかったのはなぜなのか。
 宮古島市長選は、保守系無所属の新人で前副市長の嘉数登氏が初当選した。
現職でオール沖縄勢力が推す座喜味一幸氏は及ばなかった。
 今回は市が誕生して以来、最多タイとなる6人が立候補した。そうした中、嘉数氏が9345票を獲得し勝利した。
 嘉数氏は県知事公室長や副市長などを経験した行政手腕を前面に出し、少子化対策や若年者の定住促進などに最優先で取り組むと訴えた。
 市民との対話を通し市の課題を洗い出すことで解決策を具体的に提示。そうした様子をSNSでも発信した。
 従来の保守票だけに頼らない運動を展開。無党派層を取り込むなど幅広い支持を得た形だ。
 市内では新型コロナ後の観光需要に伴うホテル進出などを受けた土地価格の上昇や、物価高による資材高騰がUターンや移住を希望する若者の住宅確保の障壁となっている。
 これら課題への評価が座喜味氏の敗北につながったとも言える。
 一方、陸上自衛隊の配備強化問題についての議論は深まらなかった。
 嘉数氏は「さまざまな意見があり、国に丁寧な説明を求める」との姿勢だ。
配備強化や米軍との共同訓練に懸念を示す住民の声に真摯(しんし)に向き合うことが求められる。
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 座喜味氏の落選により県内11市でオール沖縄系の市長はいなくなった。
 オール沖縄は保革の枠を超えて名護市辺野古への新基地建設反対を掲げ、県内の新しい政治勢力として台頭。知事選では翁長雄志氏から玉城デニー氏まで計3回にわたり勝ち抜いてきた経緯がある。
 一方、足元の生活課題が問われる市長選では当初から苦戦してきた。
 約10年の間に那覇、名護、南城、豊見城、宮古島の5市でオール沖縄系市長が次々に誕生したが、2018年の名護市長選以降、22年には那覇や豊見城などで落としてきた。
 今回の結果ではっきりしたのは、「新基地反対」という理念には共感しても、有権者が今どういう基準で投票先を選んでいるかということとのずれだ。
 オール沖縄のまとまりが機能しなくなっているのではないか。
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 選挙イヤーの初戦である宮古島市長選がもたらした政治的な意味合いは大きい。
 結果は自民側にとって弾みとなった。
 県政を支援する首長の存在は大きく、玉城知事の痛手は深い。
 来週は沖縄市長選があり、4月にはうるま市長選もある。
7月には参院選も予定されている。
 オール沖縄勢力対自公の構図となることが予想されている。
 それぞれの結果は来年の知事選に直結する。 
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