森友学園問題に関する決裁文書改ざんを巡り、財務省が文書の存否も明かさず不開示としたことの妥当性が問われた裁判で、大阪高裁は「違法」と認めた。
改ざんを強いられて自死した元近畿財務局職員赤木俊夫さんの妻雅子さんの請求を退けた一審大阪地裁判決を覆し、不開示決定を取り消した。
「自死の真相を知りたい」として国や当時の上司である佐川宣寿元国税庁長官を相手取り訴訟を重ねてきた雅子さんにとって一歩前進といえよう。
財務省側は、改ざんを指示したとされる佐川氏らが告発されたことで関連文書を検察に任意提出。捜査を理由に文書の存否も明かさず不開示としていた。
情報公開法は「存否を答えるだけで開示となるときは、行政機関は存否を明らかにせずに拒否できる(存否応答拒否)」と規定する。
これに対し高裁はまず、「文書の存在を明らかにした上で開示、不開示の決定が原則」とし、存否応答拒否は「例外」と指摘した。
その上で今回の文書が例外に当たるかどうかを判断。佐川氏らの不起訴で捜査は終結し、不開示にできる「捜査や公訴(起訴)の維持に支障を及ぼすおそれ」があったとは言えないとした。裁判所が開示拒否の乱用に歯止めをかけた形だ。
■ ■
ただ、今回の判決は存否すら明かさない姿勢を否定したもので開示の可否には触れていない。国は今後改めて判断することになる。
一連の問題は2017年2月、森友学園への国有地売却で8億円余りも値引きされたことが発覚したことに始まる。
国会で関与を問われた当時の安倍晋三首相は「私や妻が関わっていれば、総理も議員も辞める」と答弁。学園との交渉記録の提出を求められた佐川氏は「廃棄した」と答弁した。
だがその後に関連文書が改ざんされていたことが明らかになった。翌18年5月には廃棄したと言われた文書の存在も判明した。
改ざんや虚偽答弁は国民への重大な背信行為だ。石破首相は当時の自民党総裁選で森友問題を再調査する必要性を説いていた。有言実行が求められる。
■ ■
この間の訴訟では赤木さんが改ざんの経緯を詳細に記した「赤木ファイル」が開示された。内容は財務省の内部調査報告書との齟齬(そご)が分かっている。
昨年は総務省の情報公開・個人情報保護審査会も「不開示決定を取り消すべきだ」と答申したが、財務省は応じていない。
そもそも国有地の大幅な値引きや文書改ざんに政治的関与はなかったのか。
高裁が不開示を違法とした文書に手掛かりがあれば、国会が真相解明に取り組むべきだ。