子どもの命を守るためにはどうすればいいのか。原因を多角的に分析し、有効な対策をとることが求められている。

 2024年の小中高生の自殺者数が527人(暫定値)で過去最多となった。内訳は小学生15人、中学生163人、高校生349人でいずれも前年より増えた。
 全体の自殺者数は2万268人で2年連続の減少。それに対し子どもの自殺は新型コロナ禍の20年ごろから急増し高止まりしている。
 10代の死因の1位は自殺だ。主要7カ国(G7)で日本だけの現象という。
 なぜなのか。
 国連児童基金(ユニセフ)の子どもの幸福度に関する38カ国調査で、日本は「身体的健康」が1位だったのに対し「精神的幸福度」は37位と最低レベルだった。
 過熱する受験競争や自己肯定感の低さ、子どもの貧困の問題など、社会の生きづらさが背景にあるのではないか。
 今回は特に女子中高生の増加が目立つ。男子が前年比24人減の230人だったのに対し、女子は同36人増え282人となった。
 生きづらさが、より少女たちに重くのしかかっている可能性がある。

 自殺した子どもの過半数が1年以内に自殺未遂に及んでいたとのデータもある。
 一部の救命救急センターでは自傷行為や自殺未遂などで受診した患者のサーベイランス(集中監視)事業も始まっている。医療機関とも連携し、自殺リスクを早期発見する仕組み作りを急ぐべきだ。
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 小中高生の自殺に対し、文部科学省は2段階の調査を指針で定めている。最初は学校が主体で行う「基本調査」。次が教育委員会主体の「詳細調査」で、弁護士や心理職などの専門家らが調査する。
 特にいじめや指導死など学校生活が背景に疑われる場合は「重大事案」として詳細調査の実施が定められている。
 しかし、遺族側がいじめを訴えても実施されなかったり、実施されたとしても不十分だったりするケースが続発している。
 文科省によると22年度に全国で自殺した小中高生のうち詳細調査が行われたのは4・6%にとどまった。
 教委や学校に指針の趣旨が行き渡っていない可能性がある。全事案の詳細調査実施に向け体制を整えてほしい。
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 子どもの相談に対応する民間団体には「自分は必要ないのでは」「生きている意味ってあるのかな」との悲痛な声が寄せられている。

 政府は25年度予算案でリスクの早期発見事業を盛り込む。児童生徒1人1台端末での心の健康観察の導入や、支援が必要な子どもを把握するための情報・データの連携を掲げている。
 子ども一人一人の気持ちに丁寧に耳を傾け、自殺の「前兆」を分析し、実態把握と支援強化に生かす取り組みの充実を急がなければならない。
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