昨年9月に市議会で早々と立候補の意向を表明した松本氏。
保守系の市議候補20人と協力体制を築くなど市議選とのセット戦術も効果を上げた。
選挙戦で松本氏は福祉関連総合拠点の整備や県経済界、那覇市などと連携して進める「GW(ゲートウェイ)2050プロジェクツ」構想の実現を強調した。
那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市西海岸への移設に伴い、市の内陸部と西海岸周辺の両エリアでは開発計画が進む。キャンプ・キンザー(牧港補給地区)の返還跡地と西海岸開発を一体的に推進し「県全体をけん引するエリアにする」との主張が市民の期待感をすくい上げた。
給食費についても市の独自予算で小学生を半額に。中学生も県事業で半額とするほか「今後無償化も検討する」とした。
3期12年の実績と、経済振興や子育て支援策を前に進めるとした訴えが受け入れられたといえるだろう。
4期目ともなれば集大成の成果が求められる。
那覇空港から普天間までの返還跡地の一体的開発を目指すGW構想では県とどう協力関係をつくるかが重要になる。
給食費についても市は昨秋に2025年度からの値上げ方針を示したばかりで無償化をどう実現するのか。松本氏の手腕が問われる。
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今回の市長選で、里道氏が立候補を表明したのは告示4日前だった。政党推薦も間に合わないなど選挙態勢が調わないまま「超短期決戦」に突入した経緯がある。
里道氏は軍港移設に伴う西海岸埋め立てへの反対を強く訴え、一定の票数を獲得している。
埋め立てを巡っては昨年4月、民港部分の環境影響評価(アセスメント)に寄せられた市民意見の6割強が反対し、見直しを求めていた。
埋め立てに肯定的な意見はゼロだった。
市長選の本紙出口調査でも「反対」が約45%で「賛成」の約17%を大きく上回っている。
松本氏にはこうした根強い懸念にも丁寧な対応を求めたい。
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市議選と同日選挙にもかかわらず、投票率は過去最低の50・73%で前回を12・25ポイントも下回った。
告示直前まで松本氏の対立候補が見えず、何を問うのかが不明確な選挙だったことが影響したのではないか。
松本氏が危なげなく勝利したことで自公勢力は勢いづいている。
対し、軍港移設容認の立場を取る玉城デニー知事は今回、里道氏の応援に入らないなど移設問題が尾を引いた。
4月にはうるま市長選が控えており、7月には参院選もある。