米ワシントン事務所問題を巡り、県が2025年度の一般会計当初予算案に事務所の経費を盛り込んだことに対し、自民と公明の両会派が猛反発している。
2月定例会は自民が、県が修正に応じない限り予算案審議を拒否するとし、開会が大幅に遅れた。
その後いったん開会したものの、自民から経費が削減されるなどしなければ「審議に応じることはできない」との動議が出て、自民と公明の賛成多数で可決されたのである。
その結果、総額8894億円の予算案が県側に差し戻されることになった。
県政史上初めての事態という。県は今後、修正した予算案を再提出するか、そのまま専決処分するかを判断することになる。
米事務所は15年、名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長雄志前知事が設置。玉城デニー知事も米国で情報を収集・発信する拠点としてきた。
ところが昨年、事務所が株式会社として登録されていたことが発覚。9年間も必要な報告を議会にしていなかったことなど手続きの不備が次々と浮上した。
県も公有財産としての管理が適切でなかったと認め、議会が設置する百条委員会で説明するほか、独自に第三者委員会での検証も進める。
結論が出るまで米事務所を維持する経費として当初予算案に7カ月分約4千万円を計上していた。
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しかし、自民は「違法状態は是正されていない」と主張。経費の削除を求め、予算案の審議を拒否している。
米事務所問題については、設立の経緯に関する明確な記録も残されておらず、公文書管理の点からも県のずさんさは明らかだ。
玉城知事も事務所が株式会社だったことを知らなかったという。批判は免れない。
本来なら百条委の設置を待たずして問題点や疑問点に答えるなど県民への説明を尽くすべきだった。
一方、米軍機の騒音やPFAS問題、度重なる事件事故など米軍基地から派生する問題は山積している。
玉城知事は所信表明で「連邦議会議員などとの継続的な意見交換やネットワークの構築が重要」とし米事務所の継続に意欲を示した。
新基地建設阻止だけでなく、基地問題の解決についても沖縄の声を届ける重要な拠点となっている。
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行政のチェックはもちろんのこと、県民の利益を施策に反映させることも県議会の役割である。
事務所の設置・運営方法に疑義があるのであれば、予算案の審議の中で修正を求めればいいのではないか。
真に県民の利益にかなう事業とするためにも、与野党は本会議で議論を戦わせることが求められる。
県も議場できちんと説明責任を果たすべきだ。