事件事故の現場で活躍し、人間の3千~6千倍の嗅覚を持つとされる警察犬。シェパードやラブラドルレトリバーなど、民間の「嘱託警察犬」は大型犬が大半を占めるが、近年は小型犬の採用も増えている。
認知症などの行方不明者を捜索する需要は高まっており、沖縄県警も「狭い場所に入りやすく、威圧感も少ない」と活躍に期待を寄せている。(社会部・豊島鉄博)

警察犬訓練所で、障害物を飛び越えるジンジャー=1月19日、糸満市阿波根

 1月中旬。糸満市にある民間のシオン警察犬訓練所で、1匹のトイプードルがさまざまな種類の障害物をリズムよく飛び越えていた。
 名前は「ジンジャー」(雄、7歳)。元々は2018年、しつけのため訓練所に預けられていた。数カ月のしつけ後、山内昌靖所長(73)に「意欲がある」と見込まれ、嘱託警察犬の試験を受けるよう誘われた。

バスケットボールのW杯が開かれた沖縄アリーナ周辺の警戒活動に、嘱託警察犬として参加したトイプードルのジンジャーと飼い主の伊波きよみさん=2023年8月25日、沖縄市(伊波さん提供)

 飼い主の伊波きよみさん(66)は「イメージ的に警察犬は大型犬。まさか私のジンジャーが、と思った」と振り返る。それでも訓練の末、2022年に合格。23年に沖縄市の沖縄アリーナで開かれたバスケットボール男子ワールドカップ(W杯)の際は、会場周辺の警戒などに参加した。
 警察犬は、警察が直接訓練し運用する「直轄警察犬」と、一般家庭で育てられ、警察の要請で出動し謝礼金も出る嘱託犬の2種類に分けられる。県内には現在、4~9歳のシェパードの直轄犬4頭と、嘱託犬22頭がいる。


 嘱託犬のうち、増加が目立つのが小・中型犬。嘱託犬になるための審査会も開かれており、県警によると2012年ごろから採用が増え始めた。現在はトイプードルやボーダーコリーなど、全体の2割に当たる5頭が小・中型犬だ。
 全国的にも小・中型犬の採用は広がりつつあり、日本警察犬協会(東京)は「大型犬では対応しづらい、狭い場所などでの活用が期待されているのではないか」と分析する。
 これまでに、県警の嘱託犬が事件事故で出動した事例はないが、県警鑑識課の担当者も「認知症高齢者の行方不明事案などで出動要請が重なった場合、嘱託犬にお願いすることも十分ある」とみる。「体力は大型犬に劣るが、嗅覚は変わらず、周囲にも警戒されにくい。出動中も物々しい雰囲気になりづらい」と利点を挙げた。
 ジンジャーの社会貢献に向け、伊波さんはこれからも訓練を続けるという。「小型犬だからこそ役立つ部分もあると思う。小さくてもできるんだよ、ということをアピールしたい」と意気込む。
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「まさか私の犬が」飼い主驚く 沖縄県警、トイプードルを警察犬にスカウト シェパードにない「強み」とは?【動画あり】
バスケットボールのW杯が開かれた沖縄アリーナ周辺の警戒活動に、嘱託警察犬として参加したトイプードルのジンジャーと飼い主の伊波きよみさん=2023年8月25日、沖縄市(伊波さん提供)">
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