ライオンの子保育園グループが、実際には勤務していない保育士を勤務しているように虚偽申請し補助金や給付金を受け取っていた問題で、不正受給額が約1億3千万円に上ることが明らかになった。
 同グループは県内で7園を運営。
今回明らかになったのは那覇、浦添、宜野湾市内にある5園の過去5年間の被害総額だ。本紙調べによると、虚偽登録は少なくとも延べ千人に上る。
 グループに対する調査は続いており、残る企業主導型の2園を含めると不正受給額はさらに膨らむ見込みだ。刑事告訴の動きも出ている。
 宜野湾市の2園と浦添市の1園に対し、両市は3月から1年間、新規の園児受け入れを停止する行政処分を行う方針だ。処分通知書では、保育士を水増しして虚偽申請したり、一般指導監査の際に職員の出退勤簿やシフト表を捏造(ねつぞう)したことが指摘された。
 園の元代表は取材に対し「意図的な不正や私的流用はない」と説明していた。しかし県の調査で、保育士の筆跡をまねて雇用契約書を作成したり、園に近い住所を偽って書いたりしていたことも発覚しており、巧妙な手口にも映る。
 不正はいつ始まったのか。誰が主導したのか。受け取った公金は何に使われたのか。さまざまな疑問が出ている。

 保育の信頼を取り戻すためにも、不正の実態を明らかにする必要がある。自治体や警察などによる徹底的な調査と捜査を求めたい。
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 認可園の管理者である各自治体は、延べ千人にも上る保育士の水増し申請に、なぜ気付くことができなかったのか。
 県によれば、複数自治体にまたがる保育園の不正発覚は初めてのこと。施設単位で書類が整備されていれば、別の施設や自治体と照合することもなく、虚偽の申請などがあっても発覚しづらいという。
 とはいえ、総額1億円以上も支払い続けてきた市の責任は大きい。
 公金を取り扱う自治体として、不正を防ぐ仕組みをいかに構築していくか。より丁寧な調査とチェック体制が必要だ。
 行政監査の在り方を改めて見直すなど、再発防止に向けた対策の強化が不可欠だろう。
 そもそも、園児の人数に対し保育士の数は足りていたのか。基準を満たす保育士が確保できていないにもかかわらず、虚偽申請した上で少ない人数で運営を続けていたとすれば深刻だ。
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 保育園では小さなミスが、けがや事故につながりかねない。
保育士の心身の負担が増大するだけでなく、認可園に対する保護者の信頼を裏切る行為でもある。宜野湾の園では職員の離職が相次ぎ、在園児が転園せざるを得ない状況だ。
 待機児童が多い沖縄で、保護者が安心して働くためにも、子どもが安全に過ごせる保育園の役割は大きい。園に残る子も別の園に移る子も、適切な保育が受けられるよう、十分配慮してほしい。
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