スポーツ選手の極限まで鍛え上げられた肉体は自由で優美で力強く、その感動は、伊藤若冲の本物の絵を初めて見た時のそれと似ている。あの迫力を映像で再現することは不可能。
だから映画でスポーツを描くことは難しい。
 しかし本作は、スリリングな勝負の世界に国際問題の緊張感を重ねることで、スポーツを扱ったエンターテインメントとして完全に成功している。
 イラン代表のレイラは金メダルが狙えるほどに絶好調。しかし、順調に勝ち進む中、本国から棄権しろとの指令が下る。勝ち進めば決勝で敵対国のイスラエル選手と当たるから、という理不尽極まりない理由。
 断固拒否の姿勢を貫き、畳に上がり続けるレイラへ、毎試合ごとにイラン政府から脅しの連絡が入る。これが実話だという情報までもがスリルを高めるエッセンスになる。(桜坂劇場・下地久美子)
◇桜坂劇場で上映中
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