県内では昨年6月、米兵による少女の誘拐暴行事件が明らかになった。
県や政府は米軍に綱紀粛正を求めるが、効果が出ているとは言い難い。
事件を防ぐには日米地位協定の抜本的な見直しが必要との考えから、地位協定改定についての首相の見解をただした赤嶺政賢衆院議員に対する答弁だ。
石破首相は地位協定改定について「主権独立国家の在り方の問題」との認識を示した一方、米軍駐留と犯罪との因果関係を否定したのである。
しかし、県内で繰り返される米兵事件はほとんどが駐留米兵によるものだ。
1989~2024年に全国で摘発された米軍関係者の刑法犯は4786件で、沖縄は2312件と半数近い。性犯罪も全国169件のうち沖縄だけで72件(42・6%)に上る。
米軍基地が集中する県内では米兵事件も集中している。因果関係は明らかで、首相の答弁は放言と批判されても仕方ない。
記録に残る国会答弁は言い間違いでは済まされない。政府の公式見解とも認識されかねず、石破首相は発言を撤回すべきだ。
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林芳正官房長官は、石破首相が事件の再発防止について「沖縄県民と心を一つに政府として取り組んでいかなければならない」と述べているとして、個別の表現のみを取り上げて論評するべきではないと擁護した。
政府はリバティー制度を含めた再発防止策が実際に事件事故の防止につながることが重要とする。
だが、同制度が機能しているとは思えない。午前1~5時の間の外出などを規制するものだが、事件はそれ以外の時間帯も起きている。あまりにもちぐはぐな対応ではないか。
昨年7月に在日米軍司令部が「建設的な意見交換の場」として創設を表明した県や地域住民を交えた「フォーラム」もいまだに設置されていないのである。
その間にも事件事故は発生していることを重く見るべきだ。
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米軍関係者による事件事故が発生するたび、県内では日米地位協定の問題が指摘されてきた。
米軍関係者の刑法犯の起訴率は、20年までの過去20年間15~20%で、日本人の場合と比べ半分程度かそれ以下とのデータもある。
石破首相は地位協定の見直しについて「日米同盟の抑止力と対処力を強化し、在日米軍の信頼性、同盟の強靱(きょうじん)性や持続性を高める観点から検討する」との考えを示している。
それであるならば、事件事故を防止する観点からの地位協定改定に向け、議論を前に進めるべきだ。