2万2千人以上が犠牲になった東日本大震災の発生から11日で14年となった。海に囲まれた沖縄は過去に「明和の大津波」で1万2千人以上が犠牲になるなど津波の危険と隣り合わせだ。
一方、台風に加え、近年ではゲリラ豪雨による水害も発生しており、災害は身近に迫る。沖縄の災害の歴史を振り返りながら、避難の注意点を確認し、災害への備えについて考える。
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発生したら初動が重要 まずやるべきこと
地震 机の下へ

 

津波 垂直避難

 

台風・豪雨 急いで避難

 

事前の準備で弱者を支援
 災害時、高齢者や乳幼児は自力避難が難しく支援が必要だ。子ども、女性、高齢者が避難する際に注意するポイントや必要な事前の備えを、2児の母でもある防災士の平田千春さんに聞いた。
こども リュックに必要品を

 

 リュックを自分で背負うようになる頃が「防災教育の始まり」。リュックには、おむつや着替えのほか、おもちゃや折り紙、お菓子など避難所で心が落ち着くものを入れることを勧める。小学生はランドセルを頭に載せてかがむ「だんごむし」ポーズの練習もしてほしい。
女性 生理用品をストック

 

 避難生活中に香りでリラックスできるハンドクリームの携行を勧める。アロマは香りが周囲に広がるので要注意。化粧品などの試供品や生理用品も「ローリングストック」し、日頃から使用しながら備えること。ロングスカートがあると災害時のトイレ対策にもなる。
高齢者 薬と一緒に入れ歯も

 

 入れ歯を忘れて食事ができず、結果薬が飲めない状況に直面した事例がある。
命の危機にもつながるので、常用している薬などと一緒に忘れずに持っていきたい。認知症の家族がいたら、名前や住所を書いた紙などを財布やかばんに入れて携行することも大切。
実は地震が多い沖縄 5年で震度1以上464回
 沖縄気象台によると、日本周辺は海溝に沿って地震活動が活発なため、世界の地震の約10%が日本周辺で発生している。沖縄周辺は、南西諸島の東から南にかけてある南西諸島海溝に沿って地震活動が活発だ。

 

 昨年、沖縄周辺で観測した地震は約1万3500回に上る。県内では震度1以上の地震を57回観測し、全国で28番目に多い。2020~24年の5年間では、県内で震度1以上の地震を464回観測し、全国で15番目の多さだった。
 日本最大クラスの津波といわれるのは、1771年に石垣島南東沖で発生した八重山地震津波(明和の大津波)。石垣島で約30メートル、宮古島で約20メートルの津波に襲われ、約1万2千人以上が犠牲になった。気象庁によると、被害が大きかった石垣島は島の面積の約40%が波にさらわれ、沿岸の集落では死亡率が8割を超えた。
 1960年にチリ沖で発生したチリ地震津波では、沖縄まで数回にわたって津波が押し寄せ、名護市真喜屋で3人が亡くなった。
沖縄に津波 最短50分弱 南海トラフ地震最大3~5メートル
 30年以内に発生する確率が約80%と言われる南海トラフ地震。
気象庁は、県内に津波が最短50分弱で到達すると予測している。津波の高さは最大3~5メートルになる見通し。
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 南海トラフ地震は、静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘沖に至るプレート境界を震源域として、およそ100~150年間隔で繰り返されてきた大規模地震。
 前回から約80年が経過し、次の切迫性が指摘されている。最悪の想定では死者、行方不明者が約32万3千人、家屋の全壊、焼失が約238万6千棟に上る。
 発生すれば、県内にも大津波警報や津波警報が発表される可能性がある。県内の予想震度は3~4程度で、津波の予想到達時刻は南大東島地方で50分弱、沖縄本島北部で約1時間、宮古島地方で約1時間半、石垣島地方で約1時間40分となっている。

 

[防災士からアドバイス]
津波警報は「垂直避難」 平田千春さん(FMとよみアナウンサー)

日頃からの備えの重要性を強調する防災士の平田千春さん=5日、豊見城市のFMとよみ

 FMとよみアナウンサーで防災士の平田千春さんは、津波警報が出た際は高いところに上がる「垂直避難」を徹底するよう呼びかける。日頃から自宅や通学路、職場の近くの津波避難ビルを確認しておくことが重要だと指摘する。また、避難ビルが近くになければ周辺の高台や高層の建物への避難が必要だと強調。避難者だけでなく、事業者や高層の建物に住んでいる住民も「地域の人が避難してくることを普段から想定することも大切」と説明する。
 自宅では地震に備え、物が落ちてこない「セーフティーゾーン」を各部屋に確保することを提案する。
暗闇での避難を想定し「自宅内では常に安全な避難導線を確保すること」と説く。
 防災用の保存食や衛生用品などは使いながら買い足していく「ローリングストック」を勧める。「避難生活を考えると実際に食べておいしいと思うものを備えることも重要」と話す。
台風時の外出は避けて ジョバンニさん(FMやんばる社長)

台風や豪雨への備えについて語るFMやんばるの新城拓馬(ジョバンニ)さん=5日、名護市・FMやんばる

 FMやんばる社長で防災士の資格も持つジョバンニこと新城拓馬さんは「台風や豪雨時には外出は極力避けてほしい」と強調する。冠水の恐れがある地域などでは事前の避難も必要だ。「無理せず、早めの避難を」と呼びかけた。
 飛来物の危険があるため「カーテンを閉め窓には近づかないように」と語る。窓は開けずに冠水が迫っていないかの確認も都度、行うべきだという。
 線状降水帯の発生など豪雨は予測しづらい。「日頃からの備えが重要だ」と指摘する。防災バッグは必要なものを家庭で話し合い、必ず用意してほしい。特に簡易トイレや4、5日分の水と食料を備蓄しておくと良い。
インターネットでは必需品が完備されているバッグが手に入る。
 断水の恐れもある。事前にアパートの管理会社などに聞くほか、浴槽などで水をためるよう求めた。
水圧でドアが開かない 地震と水害 記者が体験
 災害の危険性と備えの大切さについて学ぼうと、名護市防災研修センターで5日、本紙記者が地震と水害を体験した。

地震体験で緊急地震速報がテレビから流れた後にテーブルの下に入り身を守る末吉未空記者=5日、名護市防災研修センター

 地震体験の震度は3~4。テレビで緊急地震速報が流れ、急いで机の下に潜り込む。揺れが収まるのをじっと待ちながら、自宅ならキャスター付きのいすや棚が暴れ動く光景が浮かぶ。揺れは20秒だったが感覚では1分ほど。現実なら余震や本震が続く恐れもある。「このあと津波から逃げなければいけないのか」と思うと気が重くなった。
 また津波や集中豪雨で建物周囲の水かさが増すと、水圧でドアが開かなくなる。水深10センチで4キロ、30センチで36キロ、50センチで100キロを動かす力が必要になる。

 水害体験で10センチはなんとか開けられたが、30センチは体全体で押しても数センチしか開かず息が上がった。50センチではドアはびくともしなかった。

センター内では水害などでドア前の水位が上がった状況を体験できる=5日、名護市防災研修センター(竹花徹朗撮影)

 実際には開いたドアの隙間から水が勢いよく流れ込み、足をすくわれる危険が伴う。津波が街を飲み込む東日本大震災の映像を思い出し、手足に力が入らなくなった。
 災害はある日突然にして私たちを襲い、住み慣れた街を「被災地」にしてしまう。行政も被災する可能性があり「公助」も万全ではない。自分自身の身を守る「自助」と、地域やコミュニティーで助け合う「共助」の意識を高めることが一人一人に必要だ。もう二度と、災害で大切な命を失わないために。
防災バッグの中身チェック
写真を拡大 防災バックの中身

地震への備え
□安全な避難場所・避難経路などを確認
□プロパンガスのボンベを固定、転倒を防ぐ
□家族との連絡手段を決めておく
□漏電遮断器や感震ブレーカーなどを設置
□窓ガラスの飛散防止対策をする
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