県内各地の戦没者の遺族会が、存続の危機に直面している。
 市町村が把握する遺族会52団体に本紙がアンケートしたところ、8団体が既に解散し、9団体が活動を休止していた。

 存続する44団体のうち、13団体は「5年以内に解散予定」「活動の継続は困難」と回答した。
 遺族の高齢化で会員が減少しているほか、担い手不足で運営の世代交代が進まない、運営費などの資金集めが難しい-といった理由がある。
 県遺族連合会は遺族年金の給付などを求め、1952年2月に「琉球遺家族会」として発足、72年の復帰に伴い名称を改めた。
 組織力強化の下、戦没者の親や配偶者が各地に遺族会を立ち上げ、きょうだいや子へ引き継がれてきた経緯がある。
 戦後80年。戦争を知らない世代へのバトンタッチに、どの団体も悩みを抱えている。
 沖縄戦では激戦地となった沖縄本島南部のほか、集団自決(強制集団死)や強制疎開によるマラリア罹患など、地域によっても戦争体験が異なる。
 自治体ごとの遺族会は戦後、地域の戦没者を追悼するだけでなく、地域の戦争の実相を伝える役割を担ってきた側面がある。自分たちの暮らす地域で何が起きたかを知る意義は大きい。
 戦争体験者や遺族は今も各地にいる。遺族会の存在は戦争の教訓を受け継ぎ、「二度と戦争しない」という思いや覚悟を地域で共有するよすがともなっている。
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 都道府県遺族会の会員は、67年の約125万世帯をピークに減少し、2019年には半分以下の約57万世帯になった。

 高齢化と会員減少は全国的な課題である。
 県内では慰霊碑も民間主体で建立・管理されているところが多い。
 しかし当事者による管理には限界がある。経年劣化した慰霊碑は倒壊などの危険性もある。
 地域の戦争体験を風化させないために、継続的な管理に自治体が積極的に関与してほしい。
 慰霊祭については、自治体へ主催を移行する遺族会もある。
 一方、慰霊祭が行政の業務となれば「形だけになってしまうのではないか」との懸念も出ている。
 どうしたら次の世代へ教訓をつなぐことができるのか。遺族会が継続できるよう支える努力が求められる。
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 県遺族連合会はこの間、遺骨収集などにも活動の幅を広げてきた。
 現在は慰霊の日の6月23日に平和祈願慰霊大行進を主催し、戦争の記憶の継承活動に取り組んでいる。
 今後もこうした活動を絶やすことのないよう、平和のバトンをしっかりと受け取りたい。

 各地の遺族会の活動を持続可能にするためには、市町村の支援が不可欠だ。
 県も平和行政を担ってきた蓄積を生かし、市町村を支援する体制の構築、取り組みを進めてほしい。
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