本紙が新年より取り組む連載企画「人口格差 振興策を問う」は、急激な人口減少でコミュニティーや行政サービスの維持に黄信号がともる小規模離島の危機を追う。
 「島でただ一つの保育園が6年間、開園できないまま」
 「担い手不足から祭祀(さいし)をつかさどる神おばぁ(ツカサ)をシフト制に」
 「輸送コストが価格を押し上げ、ペットボトル2リットルのお茶が448円」
 驚くような状況は、ここへ来るまで島の「切実な声」に政治がどう向き合ってきたのか、社会全体で危機意識を共有してきたか、その不十分さも映し出している。

 中でも深刻なのは、小規模離島の職員不足だ。
 国や県から配分された予算を使い切れなかったり、新規事業に取り組む余裕がなく最低限の住民サービスの維持に専念せざるを得ないところも出ている。
 小さな離島では住民と役場の距離が近い。それだけに役場職員が地域行事などコミュニティーの核になっていることも多い。
 深刻な職員不足は行政サービスだけでなく、古くからの伝統行事にも影を落とし始めている。
 玉城デニー知事は2月、県議会の所信表明で「離島振興なくして沖縄の振興なし。県政の最重要課題と位置付け、持続可能な行政サービスの提供体制の構築に取り組む」と述べた。
 現実を直視し、対策を講じなければならない。
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 「誰一人取り残すことのない社会」の実現を掲げ2022年度にスタートした新・沖縄21世紀ビジョン基本計画(6次振計)の折り返しを前に、県は25年度、その検証に着手する。
 6次振計では、小・中規模離島の振興について「住み慣れた島で安心して暮らし続けられるよう、定住条件の整備、交流・関係人口拡大を一体的に推進」と記す。
 移住よりも緩やかに都市部に住む人たちが多様な形で島に関わる「関係人口」の創出は、一つのきっかけになるかもしれない。
 関連法の成立で、都市と地方に生活拠点を持つ2地域居住への関心も高まっている。

 人と人との温かなつながり、ゆったりと流れる時間、独自の文化や行事…、沖縄の島が大好きという人は多い。
 その「ファン」の力を課題解決に結び付ければ、ピンチはチャンスになる。
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 琉大前学長の大城肇氏が副知事に就任した。鳩間島生まれで、島嶼(とうしょ)経済に詳しく、アジア太平洋島嶼研究センター長などを務めた。
 身をもってしまちゃび(離島苦)を知っているからだろう。就任に当たり「国民としての権利が制約されているのが島」と語った。
 一部離島では行政の機能不全も起き始めている。離島の危機は、6次振計後半の最大テーマとなる。
 大城氏には島への深い思いと専門知識を生かし、問題解決に取り組んでもらいたい。
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