随意契約による政府備蓄米の店頭販売が首都圏を中心に始まった。価格高騰にあえいできた消費者の関心は高く、「5キロ2千円」のコメは瞬く間に完売となった。

 今後、販売が本格化するが、沖縄など地方にはいつ届くのか。特に県内離島では、輸送費高騰も重なり5キロ6500円といった異常な高値も見られる。幅広く速やかに食卓にのせる必要がある。
 全国のスーパーで5月18日までの1週間に販売されたコメ5キロの平均価格は4285円。2週連続で過去最高値を更新した。1年前と比べると約2倍の高値が続いている。
 これら銘柄米やブレンド米に対し、この日店頭に並んだ備蓄米の価格は、いずれも税込みで5キロ2160円。政府が競争入札をやめ随意契約で大手小売業者に売り渡したものである。
 安価なコメを求める消費者の姿がニュースに映し出されていた。1人1点に制限しても、買えない人が多かったという。
 既に販売が始まっているインターネット通販サイトも、売り切れが相次いでいる。購入希望者が殺到し、約45分で完売したところもあったようだ。

 ただ、ネットに不慣れな高齢者や、大規模店のない地方の消費者は、置いてきぼりにされるようで気が気でない。
 順次販売が始まるといわれるが、流通に地域差が出ないよう目配りを忘れないでほしい。
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 政府が随意契約に切り替えて放出する備蓄米は2022年産20万トン、21年産10万トンの計30万トン。うち22万トンを大手小売が、8万トンを中小スーパーなどが扱う。
 それまでは全国農業協同組合連合会(JA全農)などの集荷業者に絞り、一般競争入札で販売していた。
 小泉進次郎農相が表明した随意契約は、手続きの簡素化など「スピード感」を重視する。価格を競争入札時の半額程度に抑え、輸送費用を国が負担し、買い戻しの条件もなくした。
 政府が3、4月と計3回、競争入札で放出した備蓄米は、4月下旬時点でも店頭に届いたのは全体の7%に過ぎなかった。
 一方、今回は随意契約の受け付け開始から、わずか5日で店頭に並んだことになる。
 これまで備蓄米がほとんど出回らず、対応が後手に回ったことは率直に反省すべきである。
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 コメ価格に国が介入する備蓄米の随意契約は、あくまでも緊急時の対応だ。 
 最大の課題は高止まりする銘柄米の価格をどう下げ、安定供給を図るかにある。
家計負担の軽減と同時に、生産者にとっての適正価格も見定めなければならない。
 石破茂首相は、5キロ当たり3千円台にする目標を掲げる。生産を減らしてきた農政に値上がりの原因があるとし構造改革に意欲を示す。
 価格の地域差をなくすことも含め、中長期的視点で大改革を進める必要がある。
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