戦後80年を前に、沖縄歴史教育研究会が県内の高校生を対象にした平和教育アンケートで、こんな若者像が浮かび上がった。
アンケートは戦後50年の1995年以来、5年ごとに実施。今回、沖縄の米軍基地について「全面撤去」や「整理・縮小」と答えた割合は前回を8・2ポイント下回る52・6%となり、4回連続で減少した。米兵による少女暴行事件が発生した1995年には83・8%だった。
この間の世論調査でも鮮明になっているが、若い世代ほど米軍基地を容認する傾向がある。
基地は生まれた時からある日常の風景で、違和感がない。反対しても変わらない現実があきらめを生んでいるように思う。沖縄戦や復帰運動を体験した世代と、就職など重要視する課題が異なる若者の間で、意識の違いが表れているのではないか。
基地は沖縄戦と、続く27年の米軍統治下で強制的に形成された。日本各地に分散していた米軍は、住民の反対運動を受け、岐阜、山梨、静岡などから沖縄に移転した経緯がある。依然として在日米軍施設の70・3%が沖縄に集中する。
相次ぐ女性への性暴力事件やPFAS(ピーファス)による水質汚染、航空機騒音。過重な基地負担は変わらない。
自分の今につながる歴史である。米軍統治下の歩みを学ぶ機会を、どうつくっていくのか問われている。
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アンケートでは、沖縄戦を学ぶことについて「とても大切」または「大切」とした生徒が計94・8%となり、高い水準を維持した。
一方で、戦争体験者に限らず、家族や親族で沖縄戦について話してくれる人が「いる」のは26・5%で、初めて3割を下回った。
戦争を知る世代が県人口の1割を切り復帰後世代は約6割に上る。身近に悲惨な地上戦を語ってくれる体験者は少なくなっている。
問題は沖縄戦への関心は高いが、知識が追いついていないことだ。
「従軍慰安婦」について正しく回答できたのは31・2%にとどまった。
県内には平和のための資料館や美術館がいくつもある。県史、市町村史などに収められた膨大な証言、南風原陸軍病院壕といった戦争遺跡を通じた継承の動きも進んでいる。平和教育に積極的に活用すべきだ。
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沖縄歴史教育研究会顧問の新城俊昭さんは「平和教育が沖縄戦教育になっていることが、基地問題への意識低下につながっている」と警鐘を鳴らす。
高校生が基地を「政治的な問題」として避ける傾向もあるという。若者が接触するSNS空間には基地への誤った言説も目につく。
ウクライナ戦争にガザ侵攻。そして「新しい戦前」という言葉が沖縄を覆い始めている。
だからこそ、沖縄戦の実相の継承とともに米軍統治下、戦後史を含めた平和教育を体系的に学ぶカリキュラムの導入が必要だ。県が主導し取り組むべきだ。