2024年に生まれた子どもの数が68万6061人となり、1899年の統計開始以降初めて70万人を割った。
 1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」も1・15と過去最低を更新した。

 少子化は国が想定するより早い「異次元のスピード」で進んでいる。
 出生数は第1次ベビーブーム(1949年)の約269万人がピーク。第2次ベビーブーム(73年)の約209万人以降は減少傾向となり、2年前に80万人を割った時も大きなニュースとなった。
 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計)で68万人台となるのは2039年のはずだったが、歯止めがかかる兆しは見えない。
 出生数落ち込みが続く理由に挙げられるのが、未婚化・晩婚化である。子どもの教育費負担の重さ、女性に偏る家事・育児負担も見逃せない。
 さまざまな要因が複雑に絡み合っているが、要約すれば、若い世代が結婚や出産に明るい展望を描けないということである。
 国民生活基礎調査では子どもがいる世帯の65・0%が「生活が苦しい」と回答している。
 全国家庭動向調査によると、平日の家事時間は夫の47分に対し、妻は約5倍の247分に上っている。
 若い世代の所得向上や家事・育児負担の偏りの解消が急務である。
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 政府が少子化対策に本腰を入れて、既に30年以上が経過する。
 育児休業制度や保育サービスの充実など仕事と家庭の両立支援で一定の成果はあったものの、深刻さは増している。

 そして一昨年、「少子化反転のラストチャンス」として示したのが、児童手当の拡充などを柱とする「次元の異なる少子化対策」だ。しかし思うような結果にはなっていない。
 女性の社会進出が進み、結婚、出産を経て働き続けることは当たり前の時代である。一方で出産、育休によるブランクがキャリア形成の壁になることも少なくない。
 子どもを産むことで不利益を受けることがないよう、男性の長時間労働や男性優位の社会といった構造的問題にも切り込む必要がある。
 女性が子どもを産まないのは「抱える不安の表れ」との視点をもっと強く持つべきだ。
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 沖縄の出生率は1・54で全国で最も高かった。
 とはいえ豊かな財源を背景に保育料無償化などの施策を次々と打ち出す東京など都市部と異なり、地方の支援策は充実しているとは言い難い。
 とりわけ県内の小規模離島では子育て基盤が脆弱(ぜいじゃく)だ。渡名喜村では島で唯一の保育園が保育士の確保ができず閉園したままである。
 地方の出生率低下は、女性の働く場所が少ないことも影響している。都市部とは違ったアプローチが必要である。
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