「沖縄美ら海水族館の歩き方」を手にする沖縄美ら島財団の松堂大志さん=5月、本部町の沖縄美ら島財団(提供)
沖縄美ら海水族館がこのほど、国内外の観光情報を扱うガイドブック「地球の歩き方」とコラボした特別冊子「沖縄美ら海水族館の歩き方」を発行した。ことし、ジンベエザメ「ジンタ」の飼育30年、ミナミバンドウイルカの「オキちゃん」と「ムク」飼育50年の節目を迎え、同水族館が海洋生物の保護や保全を目的に行う調査研究の活動を広く知ってもらおうと制作した。
「沖縄美ら海水族館の歩き方」の表紙
限定配布 デジタル版はいつでもどこでも
「沖縄美ら海水族館の歩き方」は、同水族館のウェブサイトからデジタルデータをダウンロードして入手できる。印刷冊子は、イベントでの配布やキャンペーンの賞品として入手可能で、配布情報は随時、沖縄美ら島財団の公式インスタグラムで案内する。また、冊子は名護市教育委員会を通じて、市内の小中学校19校と名護市中央図書館に寄贈。今後は本部町内の小中学校への配布も予定しており、要望に応じて提供を検討する。
冊子は全24ページ。調査・研究成果の他にも、飼育員が担当者目線で各エリアや生物をガイドしながら館内を紹介している。スタッフしか入れない業務エリアや、教育、医療、福祉の各機関向けに行う普及啓発活動も案内している。
「沖縄美ら海水族館の歩き方」の掲載内容の一部
「地球の歩き方」とコラボした経緯について、松堂さんは「『地球の歩き方』が日頃から、その土地の歴史や文化的背景まで丁寧に伝えている点に魅力を感じていました。水族館展示の背景にある調査研究についても、きっと分かりやすく紹介してもらえると思いました」と振り返る。
ガラパゴスやオーストラリアでも研究活動
同水族館では、約780種、約1万3000点の海の生物を飼育しており、全てが沖縄近海に生息する生き物だ。
研究面では、研究職員のみならず、飼育職員も日頃の飼育業務を通して得た研究成果を論文にまとめている。同財団によると、2024年度は30論文と9書籍を発表した。動物園や水族館での個体繁殖で功績のあった国内団体に贈られる古賀賞を、「ネムリブカの水槽内2世代繁殖」(1987年)、「ウミガメ繁殖研究活動」(2023年)で受賞。複数回の受賞実績のある施設は国内にも数えるほどしかないという。
国際的にも幅広く研究活動を行っている。2017年から南米エクアドルのガラパゴス諸島でシンベエザメの共同研究調査を実施。2024年に世界初のブラックマンタ飼育下出産に成功したことを受け、ことし6月からオーストラリアの大学と共同で野生のマンタの繁殖生態に関する調査を開始した。
ガラパゴス諸島でのジンベエザメの共同研究の様子(沖縄美ら海水族館提供)
最新のウミガメ研究で分かったこと
2025年に入ってから、エラブウミヘビの寄生虫、絶滅危惧種タイマイの孵化(ふか)率、ジンベエザメの遊泳行動、クロウミガメにおける人工物摂食状況についてそれぞれ論文を発表している。
クロウミガメの人工物摂食状況については、沖縄美ら島財団の職員6人の連名での論文が、ことし5月発行のウミガメの専門総合情報誌「うみがめニュースレター」に掲載された。クロウミガメがプラスチックや発泡スチロール片などの人工物を食べてしまう実態を調査したもので、沖縄島近海で1999年から2023年に発見された5個体を対象とした。
その結果、5個体中4個体(80%)のクロウミガメ個体が人工物を食べていることが分かり、同じ海域に生息する他の種類のウミガメ(アオウミガメ14.9%、アカウミガメ23.7%、タイマイ28.6%)よりもその割合が圧倒的に高いことを示した。
松堂さんは「『沖縄の美ら海を、次の世代へ』という目的のためにも、希少生物の保全や繁殖学的研究、生物学的研究は欠かせません。持続可能な生物保護の実現に向けて、水族館の役割を社会に理解してもらうことも、私たちの重要なミッションだと考えています」と語った。
「沖縄美ら海水族館の歩き方」を手にする沖縄美ら島財団の松堂大志さん=5月、本部町の沖縄美ら島財団(提供)">
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ガラパゴス諸島でのジンベエザメの共同研究の様子(沖縄美ら海水族館提供)">
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沖縄美ら海水族館がこのほど、国内外の観光情報を扱うガイドブック「地球の歩き方」とコラボした特別冊子「沖縄美ら海水族館の歩き方」を発行した。ことし、ジンベエザメ「ジンタ」の飼育30年、ミナミバンドウイルカの「オキちゃん」と「ムク」飼育50年の節目を迎え、同水族館が海洋生物の保護や保全を目的に行う調査研究の活動を広く知ってもらおうと制作した。
同水族館を管理運営する沖縄美ら島財団の松堂大志さんは「これまでなかなか伝えきれていなかった調査・研究の一部を、この特別冊子で分かりやすく紹介しています」と語る。さまざまな海の生物を長く飼育しているからこそたどり着けた研究の成果を広く周知する。
「沖縄美ら海水族館の歩き方」の表紙
限定配布 デジタル版はいつでもどこでも
「沖縄美ら海水族館の歩き方」は、同水族館のウェブサイトからデジタルデータをダウンロードして入手できる。印刷冊子は、イベントでの配布やキャンペーンの賞品として入手可能で、配布情報は随時、沖縄美ら島財団の公式インスタグラムで案内する。また、冊子は名護市教育委員会を通じて、市内の小中学校19校と名護市中央図書館に寄贈。今後は本部町内の小中学校への配布も予定しており、要望に応じて提供を検討する。
冊子は全24ページ。調査・研究成果の他にも、飼育員が担当者目線で各エリアや生物をガイドしながら館内を紹介している。スタッフしか入れない業務エリアや、教育、医療、福祉の各機関向けに行う普及啓発活動も案内している。
「沖縄美ら海水族館の歩き方」の掲載内容の一部
「地球の歩き方」とコラボした経緯について、松堂さんは「『地球の歩き方』が日頃から、その土地の歴史や文化的背景まで丁寧に伝えている点に魅力を感じていました。水族館展示の背景にある調査研究についても、きっと分かりやすく紹介してもらえると思いました」と振り返る。
ガラパゴスやオーストラリアでも研究活動
同水族館では、約780種、約1万3000点の海の生物を飼育しており、全てが沖縄近海に生息する生き物だ。
そのこと自体が沖縄の生物多様性の高さを示しており、同水族館が沖縄の海の生き物の保護や保全に重要な役割を果たしていると言える。
研究面では、研究職員のみならず、飼育職員も日頃の飼育業務を通して得た研究成果を論文にまとめている。同財団によると、2024年度は30論文と9書籍を発表した。動物園や水族館での個体繁殖で功績のあった国内団体に贈られる古賀賞を、「ネムリブカの水槽内2世代繁殖」(1987年)、「ウミガメ繁殖研究活動」(2023年)で受賞。複数回の受賞実績のある施設は国内にも数えるほどしかないという。
国際的にも幅広く研究活動を行っている。2017年から南米エクアドルのガラパゴス諸島でシンベエザメの共同研究調査を実施。2024年に世界初のブラックマンタ飼育下出産に成功したことを受け、ことし6月からオーストラリアの大学と共同で野生のマンタの繁殖生態に関する調査を開始した。
ガラパゴス諸島でのジンベエザメの共同研究の様子(沖縄美ら海水族館提供)
最新のウミガメ研究で分かったこと
2025年に入ってから、エラブウミヘビの寄生虫、絶滅危惧種タイマイの孵化(ふか)率、ジンベエザメの遊泳行動、クロウミガメにおける人工物摂食状況についてそれぞれ論文を発表している。
クロウミガメの人工物摂食状況については、沖縄美ら島財団の職員6人の連名での論文が、ことし5月発行のウミガメの専門総合情報誌「うみがめニュースレター」に掲載された。クロウミガメがプラスチックや発泡スチロール片などの人工物を食べてしまう実態を調査したもので、沖縄島近海で1999年から2023年に発見された5個体を対象とした。
その結果、5個体中4個体(80%)のクロウミガメ個体が人工物を食べていることが分かり、同じ海域に生息する他の種類のウミガメ(アオウミガメ14.9%、アカウミガメ23.7%、タイマイ28.6%)よりもその割合が圧倒的に高いことを示した。
松堂さんは「『沖縄の美ら海を、次の世代へ』という目的のためにも、希少生物の保全や繁殖学的研究、生物学的研究は欠かせません。持続可能な生物保護の実現に向けて、水族館の役割を社会に理解してもらうことも、私たちの重要なミッションだと考えています」と語った。
「沖縄美ら海水族館の歩き方」を手にする沖縄美ら島財団の松堂大志さん=5月、本部町の沖縄美ら島財団(提供)">



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