沖縄科学技術大学院大学(OIST)で、職員による約2億円もの不正受領が明らかになった。県民の信頼を裏切る行為である。

 OISTが設置した第三者委員会の調査によると、施設管理部門の課長級の職員が、2024年12月までの約10年間、委託会社から年間約2千万円の金銭を不正に受け取っていた。
 この会社は、職員から「裏金」づくりへ協力を依頼され、OISTが支払った委託業務費の一部をキックバックするよう求められていたという。
 昨年12月に関連会社の税務調査が行われたことで、問題が発覚した。職員は同25日付で懲戒解雇された。
 会社が資金提供をやめたいと言うと「上が了解しない」「個人の判断では決められない」などと組織的な関与をうかがわせ、信じ込ませていたというから悪質だ。
 職員は金銭を借金返済や遊興費に使っていた。
 額の大きさに驚くとともに、10年もの長い間、不正を見抜けなかったOIST側の管理体制に疑問を持たざるを得ない。
 第三者委は、職員の業務が長年固定化されていたことが発覚が遅れた原因と指摘しながら、監督者である歴代の副学長らに「落ち度があったとまでは言えない」としている。
 しかし、「癒着」を生まない職員体制づくりや業務発注はできたはずで、学長や副学長の責任を不問にはできない。
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 第三者委は、不正の影響として「この会社を有利に扱ったり、業務提供に際して便宜を図った事実は確認されなかった」と結論付けた。
 2億円もの金をキックバックした事実から、にわかには信じ難い。キックバックによる損失はどこがかぶったのか。
本当に有利な扱いはなかったのか。第三者委の報告からは真因が見えない。
 OISTは「沖縄の自立的発展と世界の科学技術の向上に寄与する」ことを目的に総工費600億円をかけて、11年に設立された。
 これまで運営費や施設整備費に内閣府の沖縄関係予算がつぎ込まれてきた。25年度は約200億円が投じられる。沖縄関係予算の1割近くを占める。
 大学の先進的な取り組みや成果は理解するが、沖縄振興につながっているとの県民の実感は薄く、沖縄関係予算から事業費を捻出することには疑問が投げかけられている。
 こうした中での不祥事は「沖縄への貢献」という信頼をも揺るがす。
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 OIST側は第三者委の提言を基に、契約に関わる職員の定期的な人事ローテーションや、外部からの通報窓口の周知・利用促進などの再発防止策を講じるという。
 県民に開かれ、信頼される組織づくりのため、改善に取り組んでほしい。
 OISTは刑事告発も検討するという。
 県民の信頼を回復するためにも、徹底した捜査で真相を解明してほしい。
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