イスラエル軍が13日、イラン各地の核関連施設や軍事施設を空爆し、軍のトップや核科学者らを殺害した。
イランは報復としてイスラエルの商都テルアビブを中心に数百発のミサイルを発射して攻撃した。
子どもや民間人を含む多くの死傷者が出ている。
「限定戦争」にとどまらず、「地域大戦」にエスカレートする恐れが高まっている。
両国は対話の道を模索すべきだ。国際社会は一丸となって事態の沈静化を急ぐ必要がある。
イスラエルが攻撃した理由の一つに、イランと米国との核開発を巡る交渉が指摘されている。
ネタニヤフ首相は、トランプ米大統領がイランに妥協するかもしれないとの不安を抱き、先制攻撃し、協議をつぶす狙いがあったとみられている。
核施設破壊は暴挙としか言いようがない。核物質飛散の危険も伴う。日本の被爆者団体をはじめ、非難と抗議の声が上がっている。
原子力の「平和利用」を主張してきたイランが、核兵器保有へ一層傾斜するとの観測も出ている。
そうなれば、米国と中東諸国が続けてきた外交に冷や水を浴びせる行為にほかならない。
緊張と紛争の絶えない中東地域で、かえって核ドミノを助長するのではないか、と危惧する。
■ ■
イスラエルは「脅威を排除した」と正当化する。
ただ、今回の攻撃は「自衛権の行使」といえるだろうか。他国への武力行使を禁じる国際法や国連憲章に違反していると、各国から疑問や批判が出ている。
報復攻撃に踏み切ったイランにも抑制を求めたい。長引けば中東全体を戦禍に巻き込む懸念がある。
米国は関与を否定している。トランプ氏は、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、2人は共に「交戦を終わらせるべきだ」との考えを示した。
一方で、両国は共に大きな課題を抱える。
ロシアはウクライナとの戦争で、世界を分断する当事者になっている。米国は経済や安全保障で他国との摩擦を生み、国内では不法移民摘発を巡る大規模な抗議デモの対応に追われる。
ロシアと米国は互いの思惑を排除し、大国の役割を果たしてもらいたい。
■ ■
20カ月にわたるイスラエルとの戦闘で、パレスチナ自治区ガザでは国連が「壊滅的飢餓」と警告する人道危機が進行する。
イスラエルとイランのミサイル応酬が激しく報じられるほど、ガザで続く飢餓による「静かな死」は見えにくくなる。
ロシアのウクライナ侵攻も同様である。
視線がイランへ注がれる中、ガザやウクライナ情勢への関心が薄れ、停戦の動きが緩んではいけない。
国際社会は今こそ、国際法に基づく平和的な手段で暴力の連鎖を断ち切らなければならない。