言葉にするには複雑過ぎる感情が、11歳の少女の身体からみずみずしくほとばしる。
 多感な時期の少女フキは、想像を膨らませ過ぎた作文を書いては、母や教師を悩ませる。
父親の病気を機に、母親の精神状態も追い込まれていく。頼るすべのないフキは、彼女の中に巣くった孤独に少しずつ浸食される。
 大人への入り口で見舞われる葛藤や孤独は成長もさせてくれるが、押しつぶしにもかかる。同じ年頃だった時の自分と重ねたり、子どもたちはどうだったろうと思い巡らせたりしながら、フキの成長と幸せをひたすら祈っていた。
 2025年のカンヌ国際映画祭では、上映後に温かなスタンディングオベーションが続いたという。11歳の新星、鈴木唯は淡々と、それでいて豊かな表現者として私たちを魅了する。(スターシアターズ・榮慶子)
◇シネマパレット、プラザハウスで上映中
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